■PPIの結果はインフレ上昇圧力継続を示唆
TUIK(トルコ統計局)は、今週(1月4日~)、トルコの12月のCPI(消費者物価指数)を発表しました。12月のCPIは、前年同期比で14.60%となりました。
トルコ中銀の直近のインフレ期待アンケートでは14.18%でしたので、その値を若干上回る結果ですが、足元の原油価格の上昇を考慮すると特段、違和感がない水準です。
【参考記事】
●利上げ期待で上昇のトルコリラ。政策金利据え置きなら、対円で13円前後まで下落か(2020年12月23日、エミン・ユルマズ)
(出所:IG証券)
気になるのは、PPI(生産者物価指数)が25.15%になったことです。これはインフレ上昇圧力が、しばらく続くことを示唆しています。
インフレデータの詳細を見ますと、2020年にもっとも価格が上昇したカテゴリーのトップ3は、次のとおりです。1位は「その他サービス」28.12%の上昇、2位は「運輸」21.2%の上昇、3位は「食料品とノンアルコール飲料」20.61%の上昇となりました。
特に、食料品の価格上昇が冬に入ってから目立っていて、12月に野菜の価格が急騰しています。12月にナスは47.2%、キュウリは25.6%、キャベツは18.9%上昇しました。
■ロックダウンと暖冬で、新型コロナ感染拡大はやや鈍化
トルコのコロナ感染者数は、1月4日(月)時点で225万人を超え、死者数も2万1685人となりました。
トルコ政府が12月に打ち出した夜間と週末の部分的ロックダウン(都市封鎖)の効果と、トルコが現在、暖冬となっているおかげで、12月後半から感染拡大のペースが若干鈍化していますが、引き続き、世界で7番目に多い感染者数となっています。
【参考記事】
●長引けばトルコリラ/円は13円割れか…! コロナ再拡大でトルコがロックダウン再開(2020年12月2日、エミン・ユルマズ)
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
そして、新たな懸念も浮上しています。長い期間雨が降っていないため、イスタンブールなどの大都市に水を提供しているダムの水位が著しく下がっていて、1月から2月にかけて大規模な断水が行われる可能性が高まっているとのことです。
■利上げと国債CDS大幅下落でトルコリラの動きは安定
年明けのトルコリラですが、対米ドル・対円で大きく動かず、米ドル/トルコリラは7.40リラ水準、トルコリラ/円は14.00円前後で推移しています。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
トルコ中銀が、2020年12月24日(木)に行った政策金利の引き上げがじわじわ効いていて、トルコリラの動きが安定してきました。
(出所:TCMB(トルコ中銀)のデータよりザイFX!編集部が作成)
11月に入ってから世界的なリスクオンでトルコ国債のCDS(クレジットデフォルトスワップ)が5.6%から、足元で3%まで大きく下落したこともトルコリラの上昇に大きく貢献しました。
政策金利の引き上げは、まだインフレ抑制につながっていませんが、為替が安定したことで12月に消費者の信頼度が大幅に改善しました。
ブルームバーグHTが行った調査によると、トルコの消費者物価指数は12月に9.62%上昇し、67.44となりました。トルコ中銀による引き締め姿勢を市場が評価し、米ドル/トルコリラが下落に転じたことで消費が刺激された模様です。
考えてみれば、トルコリラが対米ドルでずっと下がっていたので、国民は消費をせず米ドル預金に走っていましたが、利上げ後にトルコリラが上昇に転じたことで、消費者の一部は米ドル預金を崩して、今まで我慢していた買い物をし始めたというのはわかりやすい構図です。
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