■エルドアン発言を市場は「利上げ期待薄」と解釈
トルコ統計局は1月14日(木)に、昨年(2020年)12月の住宅販売データを発表しました。
12月の住宅販売は前年同月比で47.6%減少し、10万5981棟となりました。2020年通期では11.2%増加し、149万棟に達していますが、新規住宅販売は2019年比で8.2%減少しています。
これらのデータから、トルコの住宅・建設セクターはかなり苦戦しているのがわかります。一方で、1月13日(水)に発表された11月の鉱工業生産指数は前月比で1.3%上昇し、年率ベースで11%上昇しました。
エルドアン大統領が1月15日(金)に行った演説で、「金利を上げてもインフレ抑制に効果がない」と発言したことを受け、トルコリラは約2%下がりました。
(出所:IG証券)
エルドアン大統領の発言を、「2021年前半の利上げは期待薄」と市場が解釈したからです。
【参考記事】
●ロックダウン緩和期待高まるトルコ。2021年前半の利上げ幅は1.00~1.50%が限界か(1月13日、エミン・ユルマズ)
■利上げ反対だけど、トルコリラ安も望まないというジレンマ
確かに、エルドアン大統領は、基本方針として利上げに反対です。その理由は、インフレ抑制に効果がないと思っていることよりも、彼の支持基盤がトルコの建設・不動産セクターだからです。
12月の住宅販売データからもわかるように、住宅・建設セクターは今年(2021年)に入ってから、かなり不調です。
エルドアン政権発足後、トルコの経済成長はインフラと不動産投資によって大いに支えられてきました。住宅が売れるためには、住宅ローンが低水準に置いておかれる必要があります。高金利は、住宅セクターにとって敵です。
一方で、エルドアン大統領は、通貨安(トルコリラ安)も望みません。ここに、トルコの経済運営のジレンマがあります。
エルドアン大統領の支持基盤がトルコの建設・不動産セクターのため、基本方針として利上げには反対。一方で、エルドアン大統領は通貨安も望まないので、ここにトルコの経済運営のジレンマがあるというのがエミンさんの見解 (C)Anadolu Agency/Getty Images
■実はアーバル総裁就任後、政策金利は6.75%も上昇
エルドアン大統領は、通貨安が進んでしまうと利上げを黙認せざるを得なくなります。彼は国内世論向けには反金利姿勢を継続しながらも、トルコ中銀の引き上げを止めないことはよくあります。
【参考記事】
●利上げならトルコリラ/円は13.50円超え!エルドアン大統領も限定的な利上げに賛成か(2020年11月11日、エミン・ユルマズ)
実際に、アーバル総裁が就任してから、トルコ中銀は政策金利を合計で6.75%も引き上げました。
(出所:各種データを基にザイFX!編集部が作成)
アーバル総裁を任命したのもエルドアン大統領だし、アーバル総裁がエルドアン大統領の許可なしで利上げを行ったと考えることはできません。よって、今回の発言も国内世論向けの政治的な発言である可能性が高いと考えます。
■1月政策会合での利上げは見送りと予想
今週(1月18日~)のトルコリラですが、エルドアン大統領の発言を嫌気した売られた後はいったん落ち着いて、米ドル/トルコリラは足元で7.47リラ水準で推移しています。一方で、トルコリラ/円は、まだ14円を割ったままです。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
トルコ中銀は1月21日(木)に、今年(2021年)最初の政策会合を行います。市場コンセンサスは据え置きですが、個人的にも据え置きの可能性が高いと考えます。
昨年(2020年)の利上げが成功し、為替がある程度安定したので、トルコ中銀としては、新たな利上げの前に、その効果を見極めたいはずです。
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