■不思議なことが起きている為替市場
この1週間、外国為替市場では、本当に不思議なことが起きています。今回は、その点について考えてみたいと思います。
まず、米国の長期金利(10年物国債利回り)が、1.7%台から1.5%台にまで低下したことに伴って、米ドル安が進みました。金利低下による米ドル安の動きというのは、まあ、妥当な動きだと思います。
しかし、その後、米国の長期金利が反転して上昇した局面でも、米ドルは戻りませんでした。ちなみに、その後、米国の長期金利は低下して、4月22日(木)現在、東京時間での水準は1.53%台となっていますが、今度は、そのことによって米ドル安が進むような展開とはなっていません。
(出所:TradingView)
■一時的に、ユーロ/円の急上昇や英ポンドの買い加速も
また、週半ばには、東京時間にユーロ/円が急上昇する局面がありましたが、それは何も要因がないところでの上昇でした。
そして、その後は、反動で下落し、129円台に入ってきています。
(出所:TradingView)
さらに、英国の投資ファンドによる、東芝の買収案件が振り出しに戻ってしまったことで、買収資金手当てのための英ポンド売り・円買いが発生しなくなったことを材料に、英ポンドを買い戻す動きが一時的に加速しましたが、結局、また元に戻っています。
【参考記事】
●英ポンド/円を英投資ファンドの東芝買収案件で売るのは、やや無理がある。理由は?(4月9日、今井雅人)
●英投資ファンドが東芝に2兆円超の買収提案。ポンド調整入り。ユーロ/ポンド0.90ポンドへ(4月8日、西原宏一)
(出所:TradingView)
■カナダの利上げ示唆は、米ドル高要因のはずだが…
昨日(4月21日)は、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])が、来年(2022年)後半にも利上げをするかもしれない、ということを匂わせました。
【参考記事】
●テーパリング開始決定で、カナダドル急騰! 米FRBも、早ければ夏ごろに示唆する可能性(4月22日、志摩力男)
●テーパリングに着手したカナダ。カナダドルは全面高! 次は、米国やオセアニア?(4月22日、西原宏一)
それが、米ドル安を招いた、という解説がありましたが、これも、まったく解せません。
というのは、過去のカナダの金融政策を見てみると、カナダとの経済関係がもっとも緊密である、米国の金融政策に連動することが非常に多かったので、カナダの利上げは米国の利上げを想起させるものであり、むしろ、米ドル高要因であるはずです。
※2008年12月以降の米国の政策金利は、誘導目標レンジの上限を掲載
※BOC・FRBのデータをもとに作成
しかし、実際は、米ドル安という反応になっています。
その他にも、不可思議な動きが多々ありましたが、全部を挙げるとキリがありませんので、ここでは、代表的なものだけをご紹介しました。
■しばらくは、フラフラした相場が続くか
このように、この1週間は、本当にわかりにくい展開が続いたわけですが、どうしてこんなことになっているかと言えば、おそらく、市場関係者の多くが迷っていて、方向感を失っているせいではないかと思います。
こういうときは得てして、しばらく理屈なく、相場がフラフラする展開が続きがちです。今回も、しばらくはそういう動きとなってくるのではないでしょうか。
■米ドルが大崩れすることはなさそう
新型コロナウイルスに関しては、世界的に見ても、収まるどころか、変異株によって事態が深刻化している国が、たくさんあります。そんな中で、やはり、ワクチン接種が進んでいる英国、米国の新規感染者数が抑えられていることは、注目に値します。
こういう状況では、英国、米国の景気回復が、他の先進国より早くなるという、従来からの見方は間違っていないと確信しています。
【参考記事】
●なぜ、米長期金利上昇と株価上昇が同時に起こっているのか? 米ドル高もまだ続く!(4月1日、今井雅人)
これだけ、はっきりしているのに、英ポンド高、米ドル高の展開になっていかないのが、私には不思議でなりませんが、足元の外国為替市場は、そういうまともな理屈が通用しなくなっている、ということなのかもしれません。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
各国のファンタメンタルズの差が、適切に為替レートに反映されるようになるまでには、まだしばらく時間がかかるかもしれないと、今は感じています。
ただ、米ドル/円を含め、米ドルは大崩れしないだろう、ということは言っておきたいと思います。
【参考記事】
●為替市場には、いずれドル高が戻ってくる! アルケゴスショックの影響は、収まってきた(4月16日、今井雅人)
●108円近辺まで下落してきた米ドル/円。さらなる下げは限定的と考えるそのワケは?(4月20日、バカラ村)
(出所:TradingView)
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