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今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

為替市場には、いずれドル高が戻ってくる!
アルケゴスショックの影響は、収まってきた

2021年04月16日(金)12:08公開 (2021年04月16日(金)12:08更新)
今井雅人

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■トレンド逆流で、英ポンドや米ドルが下落

ここ最近の動きは、それまでのトレンドを逆流する展開となっています。英ポンドが下落し、米ドルも下落する、という展開です。

ユーロ/英ポンド 日足
ユーロ/英ポンド 日足チャート

(出所:TradingView

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足チャート

(出所:TradingView

 どうしてこういうことが起きたのか、少し考えてみたいと思います。

■アルケゴスがもたらした負の連鎖

 端的に言えば、ヘッジファンドのアルケゴス・キャピタル・マネージメント(以下、アルケゴス)が破綻したことで、さまざまな市場に影響が出ました。いわゆる、負の連鎖というものです。

 流れとしては、大体、次のような感じだと思います。

1.アルケゴスは、FX(外国為替証拠金取引)と同じようなしくみを使って、レバレッジを大きく効かせた取引を行っていました。そのアルケゴスが大きな損失を出したので、取引や資金のやり取りなどを管理している、いわゆる、プライムブローカーと呼ばれる取引金融機関が、アルケゴスに対して担保の追加請求(追証)を要求したのですが、アルケゴスはそれに応じることができませんでした

2.そのため、取引金融機関は担保株の強制売却に踏み切りました。FXの取引で、強制ロスカットさせられるような感じです。

3.担保株が強制的に売られたために、一部の国際的な金融機関に多額の損失が出ました。そうなると、多額の損失を被った金融機関は、その他に持っている自分のリスク資産を売却します。また、顧客向けのクレジット(信用枠)を、縮小する動きも出てきます。

4.一方、その他の金融機関からは、損失を被った金融機関との取引を控える動きも出てきます。

 このような連鎖によって、ポジションを縮小する動きが金融市場に広がることは、よくありますので、恐らく、今回も同様のことが起きたと思います。

【参考記事】
英ポンドを対米ドル・対ユーロで戻り売り! トルコ中銀、10%近い利下げへ舵を切る!?(4月12日、西原宏一&大橋ひろこ)
「リスクオフの円高は終了」説を再確認。ドル/円は大きな押し目なく、112円台乗せか(4月5日、西原宏一&大橋ひろこ)
米ドル/円、アルケゴスショックへの反応も限定的。短期112円、中期120円へ上昇継続!(4月1日、西原宏一)

■なぜ、英ポンドがもっとも大きく動いたのか?

 株式市場は、もともと景気回復がしっかりしているので、影響は一時的に終わって、昨日(4月15日)もNYダウやS&P500は史上最高値を更新しています。

NYダウ 日足
NYダウ 日足チャート

(出所:TradingView

 しかし、意外に影響が大きかったのは、外国為替市場でした。

 もっとも大きくポジション調整が起きていたのが、英ポンド絡みです。具体的に言うと、ユーロ/英ポンドと英ポンド/円です。

 特に、ユーロ/英ポンドは、ブレグジット(英国のEU離脱)によって、特別、大きなマイナスの影響がなかったこと、ワクチン接種が他の国より断トツで早かったことなどを材料に、ユーロ売り・英ポンド買いが年初からずっと積み上がり、下落を続けてきました。

【参考記事】
ブレグジット=英国のEU離脱とは? 欧州連合離脱の経緯、離脱までの過程を解説

 アルケゴスの問題が、なぜ英ポンドに? と思うかもしれませんが、単に、それまで積み上がったポジションの解消が起きたということですので、ユーロ/英ポンドの激しい買い戻し(ユーロ買い・英ポンド売り)が起きました。

ユーロ/英ポンド 日足
ユーロ/英ポンド 日足チャート

(出所:TradingView

 また、英ポンド/円も、投機筋などの買いポジションが、かなりたまっていたので、こちらでも逆流が起きています。

英ポンド/円 日足
英ポンド/円 日足チャート

(出所:TradingView

それに付随して、米ドル/円のロング(=買い)ポジションの解消売りや、ユーロ/米ドルの買い戻しなども、同時に発生しています。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足チャート

(出所:TradingView

 こうした流れによって、逆流が起きたということだと思います。

■ポジション解消は収まる。いずれ米ドル高に戻りそう

 ところで、この数日間の動きを見ていると、ようやく、このアルケゴスショックの影響によるポジションの解消は、収まってきたように見えます。

 そうなると、市場は冷静さを取り戻します。

 米国の最近の経済指標を見ていますと、昨日(4月15日)発表された、米3月小売売上高などをはじめ、非常に好調な結果が続いています。

 こういう点を考えると、いずれ外国為替市場では米ドル高が戻ってくる、と私は考えています。

【参考記事】
英ポンド/円を英投資ファンドの東芝買収案件で売るのは、やや無理がある。理由は?(4月9日、今井雅人)
なぜ、米長期金利上昇と株価上昇が同時に起こっているのか? 米ドル高もまだ続く!(4月1日、今井雅人)
米ドル高基調は、少なくとも夏場まで続く。ドル/円は108円台で支えられ、上昇復帰か(4月9日、陳満咲杜)

ドルインデックス 週足
ドルインデックス 週足チャート

(出所:TradingView


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