■トルコの景気減速の最大の理由は大型ロックダウン…
TUIK(トルコ統計局)は、5月21日(金)に5月の消費者信頼感指数を公表しました。5月の消費者信頼感指数は77.3となり、2019年5月以来の低水準でした。前月比で3.6%減となっていて、5月にトルコ経済が大きく減速したのがわかります。
(出所:TUIK)
5月18日(火)に公表された、2021年1ー3月期の失業率が12.9%でしたが、4-6月期は雇用状態がさらに悪化することが避けられなくなっています。
(出所:TUIK)
トルコの景気減速の最大の理由は、新型コロナウイルスの新規感染者の急増による大型ロックダウンだと考えます。
トルコの感染者数は500万人を超え世界で5番目に感染者が多い国となりました。
(出所:Worldometerのデータを基にメルマガ事業部にて作成)
死者数も4万6000人を超えています。とくに3月下旬から4月中旬の間にトルコが新型コロナウイルスの第4波に見舞われ、一時は1日の新規感染者が6万人を超える緊急事態となりました。
【参考記事】
●失業率悪化のトルコ…。コロナ感染者数は再増加。ラマダン入りで、リラのボラ低下か(4月14日、エミン・ユルマズ)
■国民の約20%がワクチン接種。それが逆にリスクに?
現在は状況が落ち着いていて、1日の新規感染者が1万人を下回っています。新型コロナウイルス感染の波については、さまざまな仮説がありますが、おおよそ4カ月単位で新しい波がくるといわれています。
第3波は年末年始で、第4波は4月中旬がピークでした。トルコの場合、すでに中国のシノバック社製のワクチンを購入し、国民の約20%のワクチン接種が終了しています。
(出所:トルコ保健省)
しかし、シノバック社製のワクチンについては、効果がファイザー社製のワクチンなどに比べて低く、ワクチン接種したからといって安心すると、逆に感染が拡大してしまうというリスクが指摘されています。
おそらくトルコで起きたことも、この原理で説明できると思います。ワクチン接種したものの効果が低く、ワクチンに安心した国民が感染を広げてしまい、結局大型のロックダウンをせざる得なくなりました。その結果がトルコ経済のマクロ指標に表れています。
問題は今後の動きですが、何も変わらなければ、8月に第5波が到来してしまうでしょう。一方で、トルコ政府はファイザー社製のワクチン確保に動いていて、ワクチンを開発した独バイオンテック社のシャヒン博士に直接働きかけているようです。
シャヒン博士はトルコ系移民ということもあり、トルコ政府としてアプローチしやすい人物です。
■トルコリラは8月まで買われやすい地合いを想定
今週(5月24日~)のトルコリラですが、対米ドル・対円で下げに転じていて、対米ドルでは8.40リラを越え、対円では13円を割ってしまいました。
悪化するトルコ経済のマクロ指標に反応してトルコリラも売られていますが、ファンダメンタルの観点から見ると、売られすぎの水準にあります。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
大きな地政学リスクとして意識されていたイスラエルとパレスチナの紛争、ロシアとウクライナの紛争も、今のところ大きな戦争に発展していません。
新型コロナウイルスの第4波が落ち着いたので、トルコリラにとって8月まで買われやすい地合いになると考えます。
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