■トルコCPIとPPIの乖離幅拡大は何を意味するのか?
4月5日(月)にTUIK(トルコ統計局)は、3月のCPI(消費者物価指数)を公表しました。
3月のCPIはプラス16.19%となり、2019年の7月以来の高水準に達しました。コアCPIも16.88%となり、2年ぶりの高水準です。
データの詳細を見ると、価格がもっとも上がったのは運輸セクターで、24.85%増になりました。家電とその他サービスも、それぞれ23.64%と21.49%へと大きく上昇しています。逆に値上がりが少なかったのは、7.43%増で衣料、8.01%増で通信となりました。
今回のデータでもっとも気になるのは、CPIとPPI(生産者物価指数)の乖離が大きくなっていることです。PPIは。3月に31.2%増となりました。つまり、CPIとPPIの乖離が15%を越えています。
(出所:各種データよりザイFX!編集部が作成)
CPIとPPIの乖離が大きくなったのは、2018年のトルコリラショックの後で、最大で26%まで拡大していました。同じ現象が再び起きている背景に、昨年(2020年)11月の米大統領選挙以降のコモディティ(商品)価格の上昇とトルコリラの下落があります。
【参考記事】
●コモディティ価格上昇がトルコ経済の重しに。ワクチン相場は息切れ。リラ上昇も一服か(2月24日、エミン・ユルマズ)
●トルコCPI上昇と世界的なインフレ期待でリラ下落。3月政策会合での利上げは必須!(3月10日、エミン・ユルマズ)
PPIの上昇は、CPIへの上昇圧力もしばらく続くことを意味します。よって、トルコ中銀もこんな状況で安易に利下げすることはできません。緊縮姿勢を続けないと、トルコリラの下落に歯止めがかからなくなる可能性が高いです。
【参考記事】
●トルコリラが15%超の暴落! なぜ、トルコ中銀総裁は突然更迭された?(3月23日、エミン・ユルマズ)
(出所:TradingView)
■トルコをはじめ、新興国はインフレ期待の高まりが問題に
世界の金融機関においても、トルコのインフレ率上昇が続くとの見方が多く、たとえばJPモルガン・チェースは、2021年末のCPI予想を11.2%から13.4%に引き上げました。インフレ期待の高まりはトルコに限った話ではなく、他の新興国も似たような問題に直面しています。
ブラジル中銀が、3月に政策金利を6年ぶりに0.75%も引き上げた背景にも同じ問題があります。
パンデミックでサプライチェーンが乱れていて、これがコモディティ価格の上昇をもたらしました。生産者は原材料確保に苦戦し、コストが増加しているので、これが最終製品の値上げにつながっています。
■米長期金利が2%超えなら、リラ安は一段と進む可能性
今週(4月5日~)のトルコリラですが、対米ドル・対円で不安定な動きが続いています。対米ドルでは依然として8.00リラを下回りませんし、対円も14円を越えません。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
トルコ中銀が発表しているトルコリラの実質為替レートは、2020年12月から2021年2月まで上昇していましたが、3月に65.71となり、下げに転じました。
(出所:トルコ中銀のデータを基にザイFX!編集部が作成)
米長期金利の上昇によってドルインデックスが大きく反発しているのが、新興国通貨に悪影響を与え続けています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
米長期金利が2%を超えるようなことになれば、トルコリラ安は一段と進む可能性があるので、米長期金利とドルインデックスに動きに注目すべきです。
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