■6月10日のECB理事会、テーパリングは「時期尚早」
レンジ相場が続きますね。
木曜日(6月3日)にはFRB(米連邦準備制度理事会)のテーパリング期待で110円台に乗せたものの、米雇用統計が予想に届かず反落。
気迷い相場が続いています。
(出所:TradingView)
目先は早期テーパリング期待が後退したようで、結局、1週間前と同じ109円台に戻ってきました。
今週6月10日(木)はECB(欧州中央銀行)理事会ですが、ECB高官からは早期テーパリング期待を打ち消すような発言が続いていますから、これもビッグイベントとはならなさそうでしょうか。
ECB理事会の焦点はPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)の修正ですが、ラガルドECB総裁は「時期尚早」と発言しており、大きな政策変更はなさそう。
とはいえ、予想に反してテーパリングへと踏み出したRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])の記憶も新しいだけに、ECBも要注意。
スタンス変更の兆候がないか、声明文や記者会見が注目されるでしょう。
【参考記事】
●テーパリングへと踏み出したNZドルは当面強気! 米国のテーパリング議論開始は6月か(5月31日、西原宏一&大橋ひろこ)
●NZ中銀が、テーパリングに一歩前進。ニュージーランドドル/円は85円へ上昇再開(5月27日、西原宏一)
カレンダー的にも6月は欧米の半期末ですし、水星も逆行中。
水星の逆行中は、乱高下するもののトレンドが出にくいと言われていますから、はっきりした方向性が出ないのかもしれませんね。
水星が順行に戻るのは6月23日(水)です。
【参考記事】
●「FX友の会 in 東京 2012」レポート(3) バンカメは占星術で相場を張っている!?
■思ったよりも弱いニュージーランドドル
思ったよりも弱いのがニュージーランドドル。
いち早くテーパリングへ舵を切って買われたカナダドルのように上がるかと思ったのですが、想定ほど上がらない。
オセアニアの友人に聞くと「米国から流れこんでくる可能性があるインフレを嫌って、RBNZはホ-キッシュ(タカ派)になっている」とのこと。そのことを友人は通貨にポジティブなものとは受け取っていないそうです。
一方、モルガン・スタンレーは「グレート・ホ-キッシュ・シフト」と評しており、見方が割れています。
(出所:TradingView)
【参考記事】
●次にテーパリングに動くのは米国なのか? 材木相場続伸で、カナダドル/円は95円目標(5月13日、西原宏一)
●テーパリング着手で上昇のカナダドルは、材木相場の急騰で、さらに買い妙味アリ?(5月6日、西原宏一)
●テーパリングに着手したカナダ。カナダドルは全面高! 次は、米国やオセアニア?(4月22日、西原宏一)
主要国の10年債利回りを見ると、上昇しているのはニュージーランドくらい。
金利面からは買われてもいいはずですが……。
足もとでは1.8%。2月末には2%台まで上がっていたことを思えば「駆け上がっている」とまでは言えない。
金融政策を転換したニュージーランドドルが買われるのかどうか、今週の様子を見たいと思います。
(出所:TradingView)
■PBCは中国人民元安誘導へ。米ドル高進行か
気になったのが中国人民元の動き。
ウォールストリート・ジャーナルは、PBC(中国人民銀行[中国の中央銀行])がひそかに中国人民元売りの介入を行っているのでは…との記事を出していました。
こっそり介入するのは、為替操作国認定による経済制裁を避けるためです。
PBCは実際、外貨の預金準備率を引き上げるなど中国人民元高抑制の措置を打ち出しています。
中国人民元安へと転換するのなら、それは米ドル高ということにもなりますね。
ドルインデックスのチャートもボトムアウトした形に見える。
ユーロ/米ドルや米ドル/スイスフランも同様に、米ドル高を示唆しています。
夏場なのか、早まるのかはともかく、いずれ米金利の上昇から米ドル高が進むというシナリオに変更はありません。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
■最近は「株安でユーロ/豪ドル買い」のほうが効きやすい
今週(6月7日~)はECB理事会のほかに、6月10日(木)に米CPIも発表されます。
前回は予想を大幅に上回るサプライズだったこともあり、注目です。
ただ、サプライズが起きても、ECBと反対方向のサプライズになって、水星逆行中らしい往って来いの動きなんてこともありそうで……。
【参考記事】
●失業手当の充実が、悪い雇用統計の原因か。より実態を反映しているのは強い米CPI(5月13日、今井雅人)
●FRBのインフレ容認は米ドル安容認と同義。来月の米CPIが強ければ、米ドルはどう動く?(5月19日、志摩力男)
●強い米CPIで、FRBは難しい舵取りに。金融市場のボラ高まれば、トレードの好機か(5月18日、バカラ村)
このところ米経済指標に反応はするのですが、トレンドとならないのが難しいところですね。
先日発表された日本の対外純資産は3年ぶりのマイナス。
日本は「世界最大の対外純資産国」を維持しましたが、2位ドイツとの差は縮小しています。
災害時などに「レパトリの円買い」が出る背景にあるのは、世界最大の対外純資産ですが、ドイツの対外純資産を見ると「レパトリのユーロ買い」の連想が強まるという見方もできますね。
円、ユーロともに超低金利で、リスクオンで売られやすく、リスクオフで買われやすい「ファンディングカレンシー(調達通貨)」です。
以前なら「株安で豪ドル売り・円買い」(豪ドル/円売り)がワークしていましたが、最近は「株安でユーロ買い・豪ドル売り」(ユーロ/豪ドル買い)のほうが効きやすい。
対外純資産の側面からも、それが証明されていますね。
(出所:TradingView)
■ユーロ/米ドルは戻り売り。米ドル/円はレンジプレイ
週末にSNSを騒がせたのがエルサルバドル。
大統領がビットコインを法定通貨にする法案を議会に提出したそうです。
エルサルバドルは殺人発生率が世界最悪とされる犯罪大国で、自国通貨コロンを放棄した今は、米ドルが法定通貨。
これがビットコインにとってポジティブなニュースかどうかは微妙です。
エルサルバドルの街なかでビットコインが流通するわけでもないでしょうし、影響はなさそうですね。
今週の戦略はどう考えますか?
米ドル高の兆候が見えることから、ユーロ/米ドルの戻り売りで考えています。
米ドル/円については、オプションの影響から110円台が徐々に重くなってきた。目先は108円~110円のレンジでしょうか。
いずれ上抜けるでしょうから、米ドル/円はコアの買いポジションを残しながら、「下で買って・上で売る」といったレンジプレイですね。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は登録後10日間無料解約可能なので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)