■トルコのインフレは秋に向けて加速するか
TUIK(トルコ統計局)は、6月のCPI(消費者物価指数)を発表しました。6月のCPIは前年比でプラス17.53%、前月比でプラス1.94%となりました。
インフレ上昇の勢いが続いている一方で、もっとも興味深かったのはPPI(生産者物価指数)の値でした。PPIは6月に前年比でプラス42.89%を記録しました。
CPIとPPIがここまで乖離したことはかつてないし、コモディティ(商品)価格の上昇がいかに生産者のコストを増加させているかわかる数字です。生産者のコストはいずれ商品の販売価格に反映されるので、トルコのインフレは秋に向かってさらに加速していくことが想定できます。
(出所:各種データよりザイFX!編集部が作成)
■原油などの商品価格の上昇が、トルコ経済に悪影響
原油を中心にコモディティ価格の上昇がトルコ経済に悪影響を与え続けていますが、その影響はインフレの数字だけではなく貿易収支にも現れています。
トルコ貿易省の発表によると、6月の貿易収支は29億ドルの赤字でした。赤字額は前月比で1%増です。新型コロナウイルスのワクチン接種進行によるEU(欧州連合)経済の正常化でトルコの輸出も伸びていますが、それ以上に輸入コストが増えているということです。
【参考記事】
●エルドアン・バイデン首脳会談は不発…。もし利下げすれば、リラ急落を招く恐れも(6月16日、エミン・ユルマズ)
特に原油や天然ガス価格の上昇が、トルコ経済をいかに圧迫しているのかがわかります。
(出所:TradingView)
一方で、原油価格が1バレル=75ドルを超えてから、米国のバイデン大統領が名指しで産油国を批判し、米政府もこれ以上の原油高を望まないとはっきり態度を示しています。
一部のメディアが報じているように、原油価格が100ドルを超える可能性は極めて低いと思いますが、しばらく70ドル以上で推移する可能性は高いと考えます。これはトルコや南アフリカのような原油を持たない新興国の通貨にとって売り圧力となります。一方、メキシコペソにとっては追い風になると考えます。
(出所:TradingView)
■トルコリラの実質実効為替レートは史上最安値を更新
今週(7月5日~)のトルコリラは、対米ドル・対円で大きく動かず、先週(6月28日~)と同じで、対米ドルで8.70リラ水準、対円で12.70円前後の狭いレンジを保っています。市場は米国の連休に加え、FOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録待ちでほとんど動いていませんでした。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
以前、当コラムで実質実効為替レートについて書きました。
【参考記事】
●米長期金利2%超えならトルコリラ一段安か。CPIとPPIの乖離幅拡大は、何を意味する?(4月7日、エミン・ユルマズ)
●投資家センチメント改善でトルコリラ上昇。実質実効為替レートでは、下げ過ぎだった(2月3日、エミン・ユルマズ)
その実質実効為替レートは6月に59.77となり、史上最安値を更新しました。
(出所:トルコ中銀のデータを基にザイFX!編集部が作成)
2020年1月に実質実効為替レートは75でしたが、その後、急速に下がり、2020年11月に60.45を記録しました。米大統領選挙後に開始したワクチン相場のおかげで、2021年2月に69まで改善しましたが、その後、再び下落に転じ、史上最安値を更新した格好です。
トルコリラがここまで弱い最大の理由はエルドアン政権であり、バイデン政権が誕生してからエルドアン政権の立場がますます弱くなりました。
【参考記事】
●エルドアン・バイデン首脳会談は不発…。もし利下げすれば、リラ急落を招く恐れも(エミン・ユルマズ)
次の総選挙は2023年ですが、トルコ経済に2023年まで待つ余裕があると思えないので、来年(2022年)早々に解散総選挙になると予想しています。
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