CPIは過去2年でもっとも高い。PPI上昇は秋以降のインフレ圧力の強まりを示唆
TUIK(トルコ統計局)は、今週(8月2日~)、7月のCPI(消費者物価指数)を公表しました。7月のCPIはプラス18.95%となり、直近26カ月でもっとも高い水準に達しました。7月のCPIとしても2003年のプラス23.59%の次に高い水準です。
(出所:TUIK)
コアCPIも7月に、プラス17.22%に達しています。データの中身を見ると、もっとも気になるのはPPI(生産者物価指数)の上昇でした。PPIはプラス44.92%となり、CPIとPPIの乖離が大きくなっています。PPIの上昇はインフレ圧力が秋以降に強まることを示唆しています。
項目別で見ると、物価上昇がもっとも大きかったのは住宅、次に食料品と飲食、そして、ホテルなどのサービス業でした。一方、物価上昇がもっとも少なかったのは、アルコール飲料とたばこと通信になりました。食料品のインフレ率は前年比でプラス24.92%となり、国民生活を圧迫しています。
CPIの上昇を受け、トルコの実質金利は0.05%に下がり、ゼロに近づきました。
今週(8月2日~)発表された、もうひとつの重要な指標である7月の消費者信頼感指数は、前月比で2.7%減少し、79.5となりました。消費者信頼感指数が後退した背景にもインフレ率の上昇があると考えます。
特にコモディティ(商品)価格の上昇が、世界的にインフレ圧力を強め、消費者の購買力を奪っています。
トルコリラは観光シーズン終了の9月中旬までは底堅い。その後は、本格的な利上げの有無が鍵に
今週(8月2日~)のトルコリラは堅調に推移していて、米ドル/トルコリラは、8.30リラから8.40リラ水準、トルコリラ/円は、13.00円前後で推移しています。
トルコ中銀は政策金利をインフレ率より上の水準に保つと約束しています。すぐに利上げに動く可能性は低いと考えますが、インフレ圧力が弱まると思えないので、10月~11月に利上げせざるを得なくなると予想しています。
トルコは新型コロナウイルスのワクチン接種を急速に進めていて、少なくともワクチンの接種を1回受けた国民が全体の約半分に達しています。
【参考記事】
●トルコの新型コロナ第5波は8月に到来!? それまでトルコリラは買われやすい地合いか(5月26日、エミン・ユルマズ)
(出所:トルコ保健省)
ワクチン接種の進行を受け、観光業にも活気が戻りました。観光シーズンが好調で、民間セクターの米ドル需要も後退しています。トルコリラが対米ドルで上昇に転じた背景には、これがあると考えます。トルコの対外純資産も今年(2021年)5月に、昨年(2020年)末比で4120億ドルのマイナスから3270億ドルのマイナスに大きく改善しました。
トルコリラが対米ドルで堅調に推移している限り、トルコ中銀は利上げを避けようとしますが、観光シーズンが終われば再び米ドル不足に陥る可能性が高いので、利上げがマストです。
【参考記事】
●トルコ民間セクターのドル需要の高まりがリラ売り圧力に。観光業復活が鍵になるか(6月30日、エミン・ユルマズ)
トルコリラについては、観光シーズンが終わる9月中旬まで対米ドル・対円で底堅く推移すると考えますが、10月以降は本格的な利上げがない限り、再び下げに転じると予想しています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
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