今週、7月第3週(13~17日)は円高の勢いが一服しているようだ。
米ドル/円は直近安値91.73円から切り返し、ユーロ/円、豪ドル/円、英ポンド/円などのクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も前の週につけた安値を更新せずに、小康状況を保っている。
■市場心理の改善で、簡単には円高局面入りしない?
前回のコラムで指摘したように、円高トレンドが強まったとしても、基本的には、2008年秋に見られたような急激な値動きにはならないだろう(「円キャリー・トレードが縮小した今は2008年のような急激な円高はない!」参照)。
徐々に円高トレンドが強まりそうな足元の市況ではあるが、一方で、反対の要素もマーケットに浮上してきている。それはズバリ、市場関係者の間に、景気見通しの楽観論が再び台頭していることだ。
米国の金融大手ゴールドマン・サックスが史上最高益を出していることに象徴されるように、米国「投資資本主義」の再生が実に著しく、中国の上半期のGDP(国内総生産)の高い伸び率と相まって、明らかに市場心理は改善しているのだ。
■米ドルの軟調推移は、米国株式市場の反転のため
もっとも、直接的に市場心理の改善が現われているのは、株式市場のパフォーマンスだ。
前回は米国株式市場におけるダウ指数とS&P500指数の「三尊型(※)」のフォーメーションを指摘したが、今はこれを否定するぐらいに上昇が目立っている(「円キャリー・トレードが縮小した今は2008年のような急激な円高はない!」参照)。
(※編集部注:「三尊型」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。仏像が3体並んでいるように見えるためで、人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼ぶこともある)
ダウ指数(緑)とS&P500指数(赤) 日足

7月第2週(6~10日)とは一変して、今週、7月第3週は米ドル全体のパフォーマンスが低下し、ユーロ、英ポンド、豪ドルといったメジャー通貨に対して、米ドルは軟調に推移した。
その影響はクロス円相場にも波及し、円高を一服させ、結果として米ドル/円の底打ちにつながったと言えるだろう。
「三尊型」などのフォーメーションやパターン形成によって、その後の値動きが、その指示した方向やターゲットに必ず動くというわけではない。今回のダウ指数とS&P500指数が示した「三尊型」のように、フォーメーション自体が否定される現象もしばしば発生する。
そうであるならば、最近の米ドル/円におけるパターンを再点検し、フォーメーション自体が否定されるような可能性があるのかどうか、チェックしなければならない。
■「三尊型」のターゲットはすでに達成された!?
まず、下に示したチャートを分析すると、米ドル/円は92円割れとなったところで、今回のターゲットを達成した可能性が出てきた。
(出所:米国FXCM)
米ドル/円は、3月と4月の安値を結んだ「ネックライン」をいったん上回った。
そのターゲットの計算値、つまり「三尊型」のヘッドからネックラインまでの垂直距離である約7円を、再び同ラインを割り込んだ時点の98.13円レベルから測り直したところ、7月第2週の安値である91.77円に近い、91.13円という数値が得られた。
また、「4月の高値である101.44円 ~ 5月の安値である93.76円 ~ 6月の高値である98.88円」といった波動を「N波動」と見なす場合、ターゲットは「98.88−(101.44—93.76)」で91.20円となり、やはり、7月第2週の安値である91.77円に近い。
米ドル/円は、3月と4月の安値を結んだ「ネックライン」をいったん上回った。
そのターゲットの計算値、つまり「三尊型」のヘッドからネックラインまでの垂直距離である約7円を、再び同ラインを割り込んだ時点の98.13円レベルから測り直したところ、7月第2週の安値である91.77円に近い、91.13円という数値が得られた。
また、「4月の高値である101.44円 ~ 5月の安値である93.76円 ~ 6月の高値である98.88円」といった波動を「N波動」と見なす場合、ターゲットは「98.88−(101.44—93.76)」で91.20円となり、やはり、7月第2週の安値である91.77円に近い。
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