豪ドル/円を筆頭としたリスクアセットは、セリングクライマックスを迎えた
みなさん、こんにちは。
8月23日(月)の「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」でご紹介させていただいたように、アフガニスタンのカブール陥落があった8月15日(日)の週で、豪ドルを筆頭としたリスクアセットはセリングクライマックスを迎えました。
【参考記事】
●豪ドルは、先週がセリングクライマックスか。ジャクソンホール会議のパウエル講演を控え、ドルストレート回避なら、豪ドル/円の買いで(8月23日、西原宏一&大橋ひろこ)
以下は、豪ドル/円の日足チャートです。
(出所:TradingView)
豪ドル/円は、8月20日(金)に77.90円の安値をつけて以降、ほとんど陽線を形成し、一方的に上昇。しかし、200日移動平均線が位置している82.11円がレジスタンスとして意識され、82.03円を高値に反落しています。
そして以下は、直近安値をつけて節目となった8月20日(金)から、豪ドル/円が高値に到達した9月3日(金)までの、主要通貨の対円での騰落率になります。
(※筆者作成)
リスクアセットの代表通貨である豪ドルは、対円で4.53%急騰しています。
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カブール陥落がゲームチェンジとなり、中期の豪ドル/円上昇トレンドは変わらずか
そして、今週(9月6日~)、7日(火)に開催されたRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])理事会では、下記のように金融政策は強弱交錯し、マーケットとしては、ニュートラルとも取れる発表に。
ザイFX!トレード戦略指令!
2021年9月7日(火) 13:54の配信メール
RBAは週50億豪ドル相当の債券買い入れを週40億豪ドルに予定通り縮小。
ただ、11月末までとしていたテーパリング期間は来年2月半ばまで延長されました。テーパリングで豪ドル/米ドルは0.7468ドルまで買われましたが、縮小されたテーパリングの期間が延長されたということで「いって来い」の展開となり、現在、0.7441レベルで推移。
結果、マーケットは利益確定に走り、豪ドル/円は一時、80.97円まで反落しました。
これで、8月20日(金)からの豪ドル/円の一方的な上昇トレンドというイージーマーケットはいったん終了。
豪ドル/円以外のクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も、ほぼ豪ドル/円に沿った流れで調整局面入り。
しかし、カブール陥落がゲームチェンジとなったこともあり、中期の豪ドル/円の上昇トレンドは変わらないと考えています。
【参考記事】
●ニクソンショックから50年後に起こったカブール陥落。米軍のアフガニスタン撤退完了はゲームチェンジとなるのか(9月2日、西原宏一)
菅首相が9月末で首相退任へ…。日経平均は2週間で約3000円急騰
カブール陥落が逆にリスクオンのきっかけとなり、マーケット参加者の注目を集めましたが、先週(8月30日~)末、日本でも大きなニュースが飛び込んできました。
それは、9月3日(金)に報じられた「菅首相自民党総裁選に出馬せず」というビッグニュースです。
これは、菅首相が9月末の自民党総裁任期いっぱいで首相を退任するという意味になります。
菅首相の退任報道は、8月23日(月)の「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」でも触れたとおり、日本株にポジティブ。
日本では菅政権の求心力低下が懸念されていますが、市場の注目はアフガン情勢や8月27日(金)のジャクソンホール会議。市場への影響は小さいでしょう。
ひとつ注意するとすれば、「菅首相の退陣は日経平均買い」と考えている海外勢も少なくない、ということでしょうか。
(※8月23日公開の「FX&コモディティ(商品) 今週の作戦会議」より抜粋)
この菅首相退任報道は世界中を駆け巡り、日経平均は急騰しました。
以下は日経平均の日足チャートです。
(出所:TradingView)
カブール陥落の報道をきっかけに、日経平均は一時、2万7316円まで急落。この安値をつけたのが、前述の豪ドル/円がセリングクライマックスを演出したタイミングと同じ。
よって、翌週(8月16日~)から、日経平均も豪ドル/円同様、反発開始。
「菅首相月末に退任」という報道も相まって、一気に3万円台を回復。高値は3万241円。
つまり、8月20日(金)の安値をつけた後、2週間弱で3000円近く暴騰。
この間、リスクアセットの豪ドル/円は、日経平均ほどの値幅は出ていませんが、4円超急騰しました。
(出所:TradingView)
米ドル/円は米10年債利回りが上昇すれば、素直についていく展開
一方、マーケットに放置される形となったのが、米ドル/円。
カブール陥落でも109.00円を明確に割り込めませんし、日経平均が約3000円暴騰しても、111.00円を越えられず……。
結果、リスクオフでも米ドル/円は急落せず、リスクオンでも米ドル/円は上昇しないということになります。
(出所:TradingView)
では、米ドル/円は固定相場になったのかというと、そういうわけではなく、連動しているのは米金利。以下は、米ドル/円と米10年債利回りの相関チャートです。
(出所:TradingView)
3月に米10年債利回りが1.00%を越えて、1.74%台まで駆け上がった時は、米ドル/円も102円台から110円台まで急騰。これは、米ドル/円が米10年債利回りの急騰に正の相関を示して上昇しているということです。
一方、米10年債利回りが1.77%台から1.1260%台へと急落しても、米ドル/円が下げ渋っているのがわかります。
つまり、米ドル/円は、米10年債利回りの下落局面では下げ渋りますが、米10年債利回りが上昇すれば素直についてくるのがわかります。
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年末に向けて米長期金利上昇すれば、米ドル/円も115円を目指す展開に
その米10年国債利回りは、過去のコラムでご紹介させていただいているように1.1260%でダブルボトムを形成し、底堅く推移しています。
【参考記事】
●米10年債利回りはダブルボトム形成し反発。1.43%突破し急騰すれば、米ドル/円の上値余地は112円よりさらに拡大へ(8月12日、西原宏一)
米国のテーパリング(※)に関しては、セントルイス連銀のブラード総裁のように、タカ派が増えてきています。
(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
米FRB、大規模な景気支援策の縮小進めるべき─ブラード氏=FT
出所:ロイター
FRB(米連邦準備制度理事会)内でも意見は割れているようですが、タカ派の理事も増えており、米金利のダウンサイドリスクは限定的ではないかと想定しています。
結果、米10年債利回りは、底固めに一定の時間を要するのでしょうが、年末年始に向けて上昇するという見方は変わらず。
そして、米ドル/円もダウンサイドリスクは限定的で、米10年債利回りの上昇とともに、115円に向けて再び上昇すると想定しています。
(出所:TradingView)
9月7日(火)に開催されたRBA理事会をきっかけに、8月20日(金)からの豪ドル/円の一方的な上昇は終了し、調整局面入り。ただ、中期の豪ドル/円の上昇トレンドは変わりませんので、今回の調整を利用して再び押し目を待ちたいところ。
日経平均が約3000円急騰しても、動意をみせない米ドル/円ですが、米10年債利回りが底固めをしており、年末に向けて、米10年債利回りが反発すれば、3月のように米ドル/円も急騰し始める可能性が高まります。米ドル/円の行方にも注目です。
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