トルコで最近頻繁に解散総選挙が議論されている背景とは?
トルコで最近頻繁に議論されているのは、解散総選挙の可能性です。その背景にあるのは、インフレ上昇とパンデミックによる景気低迷によって高まっている国民の不満です。
また、アフガニスタンから米軍の撤退に伴って新たな難民危機が発生しているのも懸念材料で、エルドアン政権を窮地に追い込んでいます。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】アフガニスタンは中東ではない。タリバン制圧によるトルコへの影響は?新興国には、テーパリングで米ドル高は困る(8月25日、エミン・ユルマズ)
エルドアン大統領の健康不安の噂が広がり、政府の求心力が低下
これらに加え、エルドアン大統領の健康状態があまりよくないとのウワサが広がり、政府の求心力が低下しています。
エルドアン大統領は、政治集会の舞台でまっすぐ歩けず関係者の助けを借りたり、犠牲祭のテレビ中継の際に言葉に詰まって気絶しそうになったりと、たしかに健康状態について懸念すべきかもしれません。
【参考記事】
●FX会社が警戒するトルコの「犠牲祭」とは?日本発のトルコリラショック再開はある!?
与党内でエルドアン大統領の健康状態を懸念する声が高まっていて、すでにポスト・エルドアンに向けての動きもあるといいます。エルドアン大統領の健康状態は国家機密扱いとなっているので、本当に健康状態が懸念するほど悪いのか、どんな病に悩まされているのかを知ることができません。
エルドアン大統領の健康状態があまりよくないとの噂が広がっていて、政府の求心力が低下しているという。すでにポスト・エルドアンに向けた動きもあるそうだ (C)Anadolu Agency/Getty Images
エルドアン大統領は解散総選挙に踏み切るか。2022年春か夏との見方も
直近の世論調査で、政府の支持率は大きく低下していて、エルドアン大統領が率いるAKP(公正発展党)と連立パートナーであるMHP(民族主義行動党)の支持率を足しても過半数を大きく割っています。この状態で総選挙になれば、政権交代が起きるのは確実とみられています。
次の総選挙は2023年ですが、パンデミックの長期化によって支持率がもっと低下する恐れがあるので、エルドアン大統領は解散総選挙に踏み切る可能性が高いと考えます。
その時期についてはさまざまな憶測がありますが、2022年の春もしくは夏という見方が多数です。
トルコリラは下落。政局の混乱はトルコリラ投資家にとってテールリスクになる
今週(9月13日~)のトルコリラは、対米ドル・対円で下落に転じていて、米ドル/トルコリラは8.40リラ台で推移、トルコリラ/円は13円を割ってしまいました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
これは、解散総選挙となれば政府はその前に財政出動による経済対策を行い、トルコ中銀にも金融緩和するよう圧力をかける可能性が高いからです。
財政出動は景気の活性化に役立つ可能性はありますが、インフレを加速させトルコリラの下落をもたらす可能性があります。
また、トルコの政策金利が実質マイナスになっているので、トルコ中銀による金融緩和はトルコリラを大きく下落させるリスクもあります。
【参考記事】
●CPIが政策金利を上回り、トルコは実質マイナス金利に。トルコ中銀の引き締めスタンス継続は、リラの安心材料(9月8日、エミン・ユルマズ)
個人的には、トルコ政府に大きな経済対策を打てる余力はなく、トルコ中銀もインフレが低下しない限り、政策金利の引き下げに動く可能性は低いと思っているので、過度な懸念はしていませんが、政局の混乱はトルコリラ投資家にとってテールリスク(※)であることは間違いないです。
(※編集部注:「テールリスク」とは、 発生する確率は低いが、発生してしまうと相場が暴落するなど、非常に大きな損失を被ることになるリスクのこと)
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