エルドアン大統領、突然トルコ中銀メンバーを3人解任。トルコリラは急落
エルドアン大統領は10月14日(木)にトルコ中銀の金融政策委員会のメンバー3人を突然解任しました。3人のうち2人は副総裁でした。
エルドアン大統領はカブジュオール中銀総裁と会談を行った後に3人の解雇令を出しましたが、この動きを受け、トルコリラは急落し、対米ドルで史上最安値を更新しました。また、対円でも2020年11月以来の水準に下落しました。
(出所:TradingView)
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現地メディアによると、今回の解任劇の背景に、利下げに反対している政策委員会メンバーの完全排除があるようです。3人のうち前回の利下げ時に反対票を投じたのは1人だけですが、他の2人も利下げに懐疑的な姿勢で知られています。
トルコ中銀は今週(10月18日~)21日(木)に政策会合を行いますが、市場は突然の人事再編を利下げが行われるだろうと解釈し、利下げの織り込みに動きました。
トルコの小売売上高は微増。原油をはじめ物価上昇が重しに
TUIK(トルコ統計局)が10月12日(火)に発表したデータによると、8月の小売売上高は前年比で15%増となったものの、前月比で0.3%増にとどまりました。小売売上高は6月に前月比で15.1%増、7月に1.2%増となったことを考えると消費が落ち込んできていることがわかります。
(出所:TUIK)
その背景にあるのはやはり物価上昇です。今週(10月18日~)ガソリン価格が値上げされると知った国民がガソリンスタンドに押し寄せたため大都市のガソリンスタンドで車の行列ができました。
(出所:TradingView)
原油高に目が行きそうですが、原油に限らず8月末に大きく下げていたコモディティの一部が足元で強く反発しています。例えば、木材価格は8月後半の底値から約70%も反発しました。また、銅価格も同じく8月後半から20%以上反発しています。
コモディティ高が加速している環境での、トルコリラ売り圧力に留意
今週(10月18日~)のトルコリラは、対米ドル、対円での下落トレンドが加速し、米ドル/トルコリラは9.30リラを越え、トルコリラ/円は12.30円を割り込みました。
(出所:TradingView)
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市場が懸念しているとおり、10月21日(木)に利下げが行われた場合に、トルコリラは一段と下落幅を広げ、対円で12.00円を割り込む可能性は十分あります。一方で、政策金利据え置きの場合に利下げを織り込んで下がった分の戻りが予想されるので、12.50円を越える展開になると予想しています。
しかし、いずれにせよコモディティ高が加速している環境で、トルコリラの下押し圧力は強くなっていることを留意すべきです。
エルドアン大統領が、このタイミングで利下げを望む理由とは?
エルドアン大統領がこのタイミングで利下げを強く望んでいる理由は、来年(2022年)春の解散総選挙かもしれません。
エルドアン大統領がこのタイミングで利下げを強く望む理由は、来年春の解散総選挙ではないかという (C)Anadolu Agency/Getty Images
利下げで不動産市場を筆頭にトルコ経済を活気づけ選挙で有利に戦いたい公算でしょうが、トルコ国民にインフレと戦う余裕が残っていませんので逆効果になる可能性が大きいと考えます。
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