為替市場では、米ドル安のトレンドは維持されながらも、主要通貨のユーロと円に対して、米ドルはいくぶん巻き返しを図っている。
米ドル/円は前回のコラムで指摘したとおりのリバウンドとなったが、ユーロ/米ドルの反落は想定よりも大幅かつ急激なものであった(「米ドル以外、すべてがブル(強気)相場。ドルキャリー・トレードの大流行が始まる!」を参照)。
その背景には、アイルランドやポルトガルの国債をめぐる問題をはじめ、ユーロのソブリンリスク(国家に対する信用リスク)の再燃がある。
ただし、今年前半にギリシャ危機が騒がれた際、その終盤に行われたEU(欧州連合)による緊急支援と、中国によるギリシャ支援ならびにユーロ資産の買い入れが奏功したことを忘れてはならない。
同様に、ECB(欧州中央銀行)による支援表明や中国によるポルトガルを支援するとの表明が今回も効いてくると思われ、マーケットが前回のようなパニックにはならないという点には注意すべきだ。
■来年に向けて、ユーロはブル基調を保てそう
また、ギリシャ危機は、いわゆる「国際金融マフィア」に大げさにあおられた面が大きかった。そのような認識と過剰に反応したことに対する反省から、マーケットは学習機能を発揮させ、冷静に受け止めるはずだ。
その上、米国の追加の量的緩和への危惧から、事前に米ドル売りを急いでいた投機筋は多かった。その多くが追加緩和の発表と実施を受けて、利食いに動いた側面は強い。
要するに、米ドルは「噂の売り、事実の買い戻し」となったから、その前のギリシャ危機における本格的なユーロ売りとは本質的に違うと思う。
もっとも、円ほどではないにしても、ユーロの高安は基本的に、米ドルの高安によって決められる側面が強い。
ドルインデックスの約6割のシェアを占めるユーロは、米ドルの対極としての役割が大きい。したがって、再び量的緩和に踏み切るだろうという投資家の米ドルへの不信がある限り、難があってもユーロは買われる運命にある。
来年に向け、大きなトレンドとして、ユーロはブル(強気)基調を保てると思う。
■ユーロ/ドルの調整が一服すればユーロ/円は底打ちへ
さて、ここに来て、ユーロ/円や英ポンド/円などクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場にも変化の兆しが見え始めている。
一時的だとしても、米ドル/円が底打ちし、リバウンドしている足元の相場は円高傾向をやわらげている。
ユーロ/米ドルの急落があったにもかかわらず、ユーロ/円は50日移動平均線や100日移動平均線よりも上で、2カ月近く推移しているように見える。これは昨年10月以来のことだ。
英ポンド/円は、昨年8月高値から形成された大型下落チャネルの上限をトライしようとしている。
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