■トルコの4月経常収支は改善。EU向け輸出増が追い風に
今週(6月14日~)発表されたデータによると、トルコ政府の予算が、5月に134億リラの赤字となりました。一方で、トルコ財務省の発表によると、1-5月期の予算は75億リラの赤字となり、そこまで悪くない結果です。
トルコリラの投資家にとって予算の赤字より大事なのは経常収支ですが、トルコ中銀が公表した4月のデータによると、経常収支は17.1億ドルの赤字となり、市場予想であった22億ドルの赤字を下回りました。
3月の33億ドルの経常赤字と比べても、原油価格が上昇しているのに経常収支が大きく改善したのがわかります。
経常収支が改善した主な理由は、EU(欧州連合)向け輸出の増加ですが、トルコの製造業が好調であることと、その背景を当コラムでも解説しました。
【参考記事】
●エルドアン・バイデン首脳会談に注目!米国と関係改善なら、リラに大いにプラス(6月9日、エミン・ユルマズ)
●トルコ製造業が大幅回復。 その理由とは?5月後半から、トルコリラは動き出すと予想(5月12日、エミン・ユルマズ)
■エルドアン大統領とバイデン大統領が会談。進展はなし…
今週(6月14日~)の注目イベントは、6月14日(月)に行われたNATO(北大西洋条約機構)サミットでした。
NATOサミットで、エルドアン大統領とバイデン大統領は首脳会談を行いました。首脳会談前に、米国とトルコの関係改善への期待からトルコリラが反発しましたが、会談後にまた下げだしています。
首脳会談は約50分の短いもので、両国間で問題となっているS-400地対空ミサイルの扱いや、F-35のデリバリーについて具体的な進展はありませんでした。
会談前に期待を膨らませたのはトルコのエルドアン寄りのメディアですが、そもそも今回の首脳会談は社交辞令にすぎません。エルドアン政権はトランプ政権と良好な関係を築き、エルドアン寄りのメディアは米大統領選挙の前にトランプ支持の報道ばかりしていました。
エルドアン政権はトランプ政権と良好な関係を築き、米大統領選挙の前にトランプ支持の報道ばかりしてきた (C)Anadolu Agency/Getty Images
つまり、エルドアン政権はトランプ再選に大いに賭けていたのは明らかです。バイデン大統領は選挙キャンペーン中にもエルドアン政権を批判していましたし、就任後も数カ月、トルコ側からの電話会談の要請を断ってきました。
バイデン大統領は、選挙キャンペーン中もエルドアン政権を批判。就任後も数カ月、トルコ側からの電話会談の要請を断ってきたという (C)Scott Olson/Getty Images News
今回の首脳会談は、もちろんまったく意味がないわけではありません。両政府の関係構築における第一歩であり、今後のさらなる接近に期待したいとことです。
米国とトルコの関係改善はそんなに簡単ではないですが、トルコ政府はウクライナとロシアの対立でウクライナを積極的に支援したり、東地中海での単独資源調査を停止したりと、最近では米国とEUに歩み寄る姿勢を見せています。
■トルコ中銀の利下げ、現状では踏み切る可能性は低そう
今週(6月14日~)のトルコリラですが、首脳会談への期待で反発していたトルコリラは再び大きく下がって、米ドル/トルコリラは8.50リラを越え、13円を超えていたトルコリラ/円も13円を割ってしまいました。
トルコ中銀の政策会合で利下げをするのではないかとの懸念も投資家の心理を悪化させていますが、個人的には利下げに踏み切る可能性が低いと考えます。
米国との交渉でなんらかの進展があれば、トルコ中銀も利下げしやすかったと思いますが、外交問題が何ひとつ解決されていない状況で利下げをすると、通貨(トルコリラ)の急落を招く恐れがあります。
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