サプライズ利上げの英国は重大事態宣言へ
先週(12月13日~)の中銀ウィークで、サプライズとなったのは英国。
BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])は、コロナ禍以降ではG7(先進7カ国)最初となる利上げへ動きました。
【参考記事】
●豪ドル/円やカナダドル/円の、リスクオンを期待した押し目買いで! オミクロン相場はいったん終了、FOMCは材料出尽くしに要注意(12月13日、西原宏一&大橋ひろこ)
事前のコンセンサスは据え置きでしたが、英国は11月のCPI(消費者物価指数)が5.1%(前年比)と10年ぶりの高さでした。
利上げの可能性はあると思っていましたが、実際に上げてきましたね。
英国の新規感染者数は1日9万人超、オミクロン株の感染者も1日1万人を超えています。
ロンドンでは昨日(12月19日)、不要不急の外出を控えるよう、重大事態宣言が出されました。
オミクロン株の感染が拡大する中での利上げです。
(出所:TradingView)
英国ではアストラゼネカ製のワクチンがメインだったのですが、一部ではその効果が短いために感染が広がっているのでは、とも言われています。
FOMCに「拙速利上げ」のリスク
FOMC(米連邦公開市場委員会)では、テーパリング加速こそコンセンサスどおりでしたが、ドットチャートでは来年3回の利上げ想定となり、タカ派寄りでしたね。
【参考記事】
●豪ドル/米ドルは、0.7500ドルへの反発開始! FOMCで信頼を回復したFRB、マーケットは年末に向けて株高などのリスクオンへ(12月16日、西原宏一)
あるエコノミストは「タカ派中のタカ派」と評しています。
それでも、米国株は崩れなかったので安心かと思いきや、金曜日(12月17日)に下落。
今日(12月20日)の日経平均も、前場終値で490円安と大幅に下落しています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
ウォラーFRB(米連邦準備制度理事会)理事は、FOMC後の講演で「3月の会合で政策金利の変更があり得る」とも発言しています。
「株式市場を崩さないよう、緩やかに利上げする」のではなく、「インフレ阻止を最優先して市場が崩れても急いで利上げする」という方向へと舵を切り始めたようにも見えますね。
SNSでは、共和党支持者の間で「バイデニフレーション(BidenInflation)」との造語も生まれています。
支持率低下が著しいバイデン米大統領ですが、支持しない理由のトップがインフレ、2位が治安の悪化ですから、インフレ退治に躍起になるのも致し方ないのでしょう。
「タカ派FOMCでも金利低下」はリスクオフの兆候
12月のFOMCが舵取りを誤った一歩目だった、ということにならないといいのですが……。
タカ派だったFOMCを受けても、米10年債利回り(米長期金利)は低下。
米10年債利回りだけでなく、米5年債利回りや米3年債利回りも低下しています。
マネーが債券へと逃げている、ということであればリスクオフの兆候ですね。
(出所:TradingView)
あれだけホーキッシュな(タカ派な)FOMCなのに金利が上がらない、というのはFRBからすれば想定外でしょう。
リスクオフ的な動きなのかもしれませんね。
来年(2022年)のサプライズとして、FRBの拙速な利上げを指摘する声も出ています。
インフレ退治が最重要課題だとすれば、ドットチャートが示すよりもペースを上げて、利上げする可能性が高まります。
リスクオフに気をつけたいですね。
すでに利上げを織り込んでいるため、ニュージーランドドル高、カナダドル高は限界か
気になるのはニュージーランドやカナダ。
ともに利上げをすでに織り込んで、ニュージーランドドルやカナダドルが上がりにくくなっています。
特に、ニュージーランドは2%程度までの利上げを織り込んでいます。
この状態で、もしRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])がハト派に転じると、利上げのサポートがなくなり、ニュージーランドドルは崩れてしまう。
ニュージーランドの2年債利回りは、すでに下げ始めています。
目一杯アクセルを吹かせても、ニュージーランドドルはこの位置なので、サプライズ的に利上げサイクルの後ずれや中断といった話が出てくると、崩れやすくなってくるのでしょう。
(出所:TradingView)
日本人は過去最大の円売り。フラッシュ・クラッシュ注意報!
今週(12月20日~)は、欧米勢がクリスマス休暇ですね。
今週はポジション調整の動きが中心となり、欧米勢が帰ってくるのは来週からでしょう。
来週も、月曜(12月27日)、火曜(12月28日)はクリスマスの振替とボクシングデーで英国が休場。
流動性が本格的に回復するのは、12月29日(水)からとなります。
目についたのは日本人のFXポジション。円売りが過去最大に積み上がっているようです。
IMM(国際通貨先物市場)ポジションも5万枚ほどの売り越しですし、年末から年初の米ドル/円は厳しいかもしれません。
2019年1月のようなフラッシュ・クラッシュに要注意ですね。
【参考記事】
●フラッシュクラッシュのロスカット等未収金は過去3番目の規模! 25%がくりっく365から発生(2019年1月29日)
●フラッシュ・クラッシュの真犯人はトルコリラ!? クラッシュ時もスプレッドが優秀なFX会社は?(2019年1月17日)
●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(2019年1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
今週は米ドル/円の売り、あるいはニュージーランドドル/円の売りがいいのではないでしょうか。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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