相場に異変、ドルインデックスは95目前まで下落
為替マーケットに異変が生じた。ドルインデックスは大きく下落し、目先95の節目に迫ろうとする勢いを示している。
(出所:TradingView)
今週(1月31日~)に入って以降、米ドル安は、先週(1月24日~)の上昇幅を削った上で、さらに進行しているから、米ドル高トレンドに対する修正が随分と速いスピードをもって行われている。
しかし、ドルインデックスの反落が速いスピードをもって行われていること自体、ややサプライズはあるものの、異変と言われるほどの状況ではない。
米ドル安の受け皿としてユーロが買われ、また、ユーロ/米ドルのV字反騰もいっしょであるが、ユーロの立場でみると景色が違ってくる。それは、ユーロ/英ポンドの値動きだ。
昨日(2月3日)、英国は追加利上げ、そして、EU(欧州連合)の方は金利据え置きを決定したが、ユーロ/英ポンドは、いったん安値更新(2020年2月以来の安値)してから大きく反騰。そして、日足において、いったん底打ちのサインを鮮明に点灯した。
(出所:TradingView)
確かに、英ポンドの利上げは想定のとおりであった。だからと言って、ユーロ/英ポンドの大反転を説明できるわけではない。
あえて言うなら、ECB(欧州中央銀行)総裁が2022年年内利上げの可能性を否定しなかったことが、ユーロの反騰をもたらした可能性はある。
とはいえ、昨年(2021年)12月の利上げに続き、再度、米ドルより先に利上げを敢行した英ポンドに対する大反転。その要因がどこにあったかは、正直、かなり頭を悩ませる問題だ。
唯一解釈できるのは「ユーロ/英ポンドの売られすぎ」
その異変をどう捉えるかは別にして、目先は、まず事実として受け入れるしかない。
テクニカル上の視点において唯一解釈できるのは、他ならぬ、ユーロ/英ポンドの「売られすぎ」ではないかと思う。
言ってみれば、昨年(2021年)ほぼ一本調子の下落を果たしたユーロ/英ポンドは、大分「行きすぎ」の領域に入ったから、英ポンドの利上げが確定すると、逆に英ポンドのロング筋(ユーロのショート筋)が利益確定に動き、ユーロの反転をもたらしたというわけだ。
先行きの不透明感の強さからユーロのショート筋が手仕舞いか
同じ理屈で言うなら、ユーロ/米ドルも同じ状況にあると推測される。
今週(1月31日~)に入ってからの大幅切り返しは、昨年(2021年)5月高値からほぼ一本調子だった下落に対する反騰であり、ユーロ/米ドルのいったん底打ちを示唆するサインとして受け入れるべきだと思う。
(出所:TradingView)
肝心なのは、ユーロは、米ドル安の受け皿として買われただけでなく、前述のように、対英ポンド、そして対豪ドル、対円ともに大きく切り返してきたということだ。よって、しばらくユーロの底割れは遠のいたかにみえる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 日足)
ユーロの大反騰は、マーケットの異変のサインの1つにすぎないと思うが、これから相場が波乱に見舞われるのを強く示唆しているのではないかとみる。
ドイツ国債利回りが、マイナスからプラスにシフトされたことが注目されるように、ユーロのショート筋が手仕舞いを急いでいるのは、先行きの不透明感が強いからではないかと推測される。
なにしろ、米利上げを控え、債券マーケットの環境が大きく変わろうとしている。
ブルームバーグの統計では、世界でマイナス利回りの債券規模はすでに7兆6700億ドルまで低下しており、2018年以来、最低の水準を記録している。
金余りとか、空前の流動性とかは、もはや死語になりつつある。
利上げに程遠いと思われるEU圏でさえ、ドイツ国債の利回りがプラス圏へ浮上してきたことが示すように、市場関係者の想定より早く動く気配がみられたから、ユーロのショート筋が一斉にポジションの削減に動いた。
要するに、先行きが読めなくなったから、とりあえずポジションを削った方が適切だと、多くの市場関係者は判断したわけだ。
Meta株が1日で26%も暴落、時価総額にして2500億ドルが消滅
昨日(2月3日)の英中銀の利上げ決定自体は想定どおりであったが、投票権を持つ中銀理事9名のうち、4名が50ポイントの利上げを支持していたのはサプライズであった。
そのため、3月米利上げも一気に50ポイントになるのではないかと、市場関係者の疑心暗鬼をもたらし、株式マーケットは一層不安定になった。
米アマゾンの好決算で足元は持ち直しているが、昨日(2月3日)の米株市場は波乱に見舞われた。
一番驚いたのは、Facebook(Metaと改名したばかり)の株価が、1日で26%も暴落し、時価総額にして2500億ドルも失われたことだ。
(出所:TradingView)
それはAdobe、あるいはディズニーの全時価総額とほぼ同額であり、さらにブラックストーン社、あるいはゴールドマンサックス社の時価総額の2倍に相当、さらには、ゼネラルモーターズ社の3倍、BNYメロン銀行の5倍に相当する金額だ。
これは、米株史上最大の時価総額減少(1日)を記録した。
確かにFacebookの決算は悪かったが、それにしてもこのような代表的な大型ハイテク株の急落は、やはり異変のほかあるまい。市場関係者の肝を冷やすのに十分すぎるインパクトがあった。
先行きが読みづらくなってきた以上、まずポジションを削り、その後のことは後で考える、といった反応パターンが、目先、市場関係者の主流になるのではないかと推測される。
だからこそ、積み上げられたユーロのショートポジションが一斉に削られたのだと思う。
ゆえに、ユーロ高になる理由がポジション調整にあると推測される以上、過大評価も避けたいところだ。
ユーロの底割れの可能性は、先週(1月24日~)より大分低下してきたが、これからユーロの大幅高を想定するのも性急であろう。今晩(2月4日)の米雇用統計後、ユーロの続伸があれば、今度は一転して、少なくとも短期スパンにおけるユーロの「買われすぎ」が問題となってくる可能性もある。
とはいえ、ユーロの巻き戻しは、ユーロ/円などユーロクロスにおけるサインの強化を確実にしたのも事実である。
だからこそ、ユーロ/円をはじめ、今晩(2月4日)の米雇用統計後に動きがあれば、順張り(ユーロ買い)の方向に仕掛けるのが正解ではないかとみる。検証などは、また次回、市況はいかに。
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