トルコ住宅価格指数は記録的な上昇幅に。前年同月比77.4%増
トルコ中銀は1月の住宅価格指数を発表しましたが、指数は前年同月比で77.4%増となり記録的な上昇幅です。前月比でも13.1%増と大きく伸びています。
(出所:トルコ中銀)
インフレの影響があるので、実質的には年間で21.2%の伸びですが、今後、インフレがさらに加速するかもしれないという心境が住宅価格を押し上げています。もちろん、トルコでは不動産に限らず、ありとあらゆる現物資産の価格が上昇しているのは確かです。
マクロ指標でもうひとつ注目すべきなのは、トルコの短期対外債務の推移です。1月に1年以内に返済しなければいけない対外債務は1737億ドルとなりました。これは過去最高額ですが、そのほとんどが国内銀行を含む民間セクターの債務です。
短期対外債務における民間セクターのシェアは64.6%で、政府のシェアは19.8%しかありません。その点でトルコ政府の対GDPでの対外債務は大きくないといえます。しかし、民間銀行が破綻してしまった場合に政府が救済しないといけなくなる可能性が高いので安心はできません。
ウクライナとロシアの和平交渉進展で、トルコリラは上昇。対円は足元の円安が主な要因に
今週(3月28日~)のトルコリラは、ウクライナとロシアの和平交渉の進展を受け上昇に転じました。米ドル/トルコリラは14.60リラ水準に下がり、トルコリラ/円は上昇し、8.40円水準で推移しています。
(出所:TradinView)
(出所:TradinView)
対円でのトルコリラの強さは足元の円安が要因で、トルコ中銀は3月17日(木)の金融政策決定会合でも利上げしなかったので、トルコの金融政策への期待が高まっているわけではありません。
エルドアン政権はインフレ対策よりも次回選挙の勝利が重要。7月に最低賃金大幅引き上げなら、インフレはさらに加速か
トルコ政府は、7月に最低賃金の再度の大幅引き上げを検討しています。昨年(2021年)の大幅賃上げはインフレを加速させ、CPI(消費者物価指数)は50%を超えました。
7月の最低賃金引き上げによりインフレが70%台に乗せる可能性があります。しかし、エルドアン政権にとって次の選挙に勝つことがインフレ対策より重要なので、最低賃金引き上げは確実とみています。
エルドアン政権にとって次の選挙に勝つことがインフレ対策より重要。よって、7月の最低賃金引き上げは確実と見ているという (C)Anadolu Agency/Getty Images
インフレの加速はトルコリラの売り圧力を高めますし、トルコの外貨ニーズを増やします。エルドアン政権は欧米諸国を追われているロシアの富豪をトルコに招待し、トルコでビジネスするように促しています。
彼らが大量の外貨を持って来ることを期待しているようです。9.11の米同時多発テロ事件の後、アラブ諸国の富豪の一部が欧米を恐れ、財産をトルコに持ってきたという前例があります。
エルドアン大統領は今回も似たようなことを期待していますが、これが欧米諸国との関係悪化につながる可能性もあります。そんなリスクを犯してまで、外貨を獲得したいということなので、トルコの外貨不足が相当深刻であることがわかります。
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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