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今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

円高方向への転換はないが、今後、円安の
スピードは鈍化する。今の米国にとって、
「米ドル高・円安」は歓迎すべき状況

2022年04月14日(木)13:18公開 (2022年04月14日(木)13:18更新)
今井雅人

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米ドル/円が約20年ぶりの高値である126円台から反落したのは、投機の円売りが少し限界に近づきつつあるから

 昨日(4月13日)、米ドル/円は2015年の高値125.86円を一気に上に抜け、一時126円台と約20年ぶりの高値をつけました。

 しかし、その後反落してきています。

米ドル/円 1時間足
米ドル/円 1時間足チャート

(出所:TradingView

 反落した理由は2つ。1つは、126円台への上昇は、短期筋の仕掛けであったが、投機の円売りは少し限界に近づきつつあるということです。

 ただし、外貨投資や輸入の手当などのいわゆる実需の円売りはまだまだ続くので、円安傾向に変化はないと思いますが、そうしたフローは徐々にしかでてこないので、一気に円安をもたらすことはないと思います。

【参考記事】
米ドル/円は、130円程度までの上昇も視野に入ってきた! 豪ドル/円は中期的には100円、メキシコペソもまだ上昇の余地がありそう(4月7日、今井雅人)

今後は、円安方向への速度は遅くなり、かつ上下動が頻繁に繰り返される動きになると考えています。

当局の行動に対する懸念も、米ドル/円反落の理由の1つ

 もう1つの反落の理由は、当局の行動に対する懸念です。

 昨日も鈴木財務大臣が、「為替の変動が激しいのは、大変に問題がある」と、わざわざ「大変に」という表現を使っています。

今後、市場関係者も当局の動きに徐々に敏感になってくると思います。

 そこで、今後、日本の当局の動きによって、円安傾向に変化が出てくる可能性があるのかを、今回は考えてみたいと思います。

為替政策を管轄とする政府と、金融政策を管轄とする中央銀行の足並みは揃わない。円安を止めるには限界がある

 まず、基本的に押さえておきたいことは、為替政策については、日本では日銀ではなく、政府の管轄だということです。

 これは、米国も同様で、為替政策に関してはFRB(米連邦準備制度理事会)ではなく財務省の所管となっています。

 最近、日本政府から、米国の財務省と為替相場について緊密に協議をしているとの発言が出てきていますが、米国は日本に協力をするでしょうか?

 それを考えるにあたり、1つ押さえておくことがあります。

 現在、FRBは金融の引き締めを行い、日銀は金融緩和を維持していることが円安の原因となっているわけで、円安の流れを止めるには、金融政策の転換がどうしても必要になってくるわけです。

 しかし、中央銀行は、為替レートへのコミットはなく、金融政策の目的は物価の安定です。

 となると、政府と中央銀行の足並みは揃わない。そこにまず限界があるということです。

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米国は自由主義の国。よほどのことがない限り、為替介入を実施することはない

 次に、それを除いて考えた時に、最大でできることは、複数の国が同時に実施する為替介入、いわゆる協調介入というものです。

 もし、日本政府と米国政府が協調して、米ドル売り・円買い介入を実施すれば、一時的には大きな影響が出ることは間違いありません。

 しかし、米国という国は自由主義の国で、国が為替相場を人為的に操作することを好みません

 そのため、よほどのことがない限り、為替介入を実施することはありません

現在の米国にとって米ドル高・円安は、どちらかといえば歓迎すべき状況。日本の米ドル高・円安是正に協力する理由がない

 ご存じのとおり、現在米国は、インフレ抑制のために、金融の引き締めを加速しようとしています。

 一般的にインフレ抑制のためには、通貨は強い方がいい。輸入インフレを抑制する効果があるからです。

 つまり、現在の米国にとって米ドル高・円安はインフレを抑制するためには、どちらかといえば歓迎すべき状況だということです。

 そうした状況の中、日本から米ドル高・円安是正に協力してほしいと言われても、協力する理由がありません

 だから、いくら日本側から米国と協議しているという発言が出てきても、その実効性を信じる市場関係者はまずいないということです。

米国は日本の単独介入ですら、難色を示すのではないか

 そうなると、日本単体で米ドル売り・円買いを実施する、いわゆる単独介入という選択しかなくなるわけです。

 ただ、この場合にも大きな障害があります。

 単独介入を実施する場合、対象国には事前に理解を得なければならないというのが暗黙のルールとなっています。

 つまり、米ドル/円で米ドル売り・円買い介入を実施する場合、米ドルの当該国である米国の理解を得なければならないということになります。

 私個人の意見としては、米国は単独介入ですら、難色を示すのではないかと思います。

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単独介入で中長期的な流れを変えられるかは別問題。円安のスピードは鈍化する前提でトレードに臨む

 ただ、もし今後円安のスピードが加速するようなことがあれば、大義名分が出来るので介入の可能性も出てきますが、そもそもスピードが加速するような事態は余り想定できないと思います。

 ただ、単独介入は一時的な効果がありますが、中長期的な流れを変えられるかという点では別問題であるということは頭に入れておいてください。

 今後は、円高方向に転換することはないとは思いますが、円安のスピードは鈍化するという前提でトレードに臨むことにします。


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