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エミン・ユルマズの「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」

【トルコリラ見通し】エルドアン大統領の
利下げ継続発言で米ドル買い・リラ売り加速。
CPIとPPIの大幅乖離はなぜ起きているのか?

2022年06月08日(水)09:14公開 (2022年06月08日(水)09:14更新)
エミン・ユルマズ

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トルコ5月CPIは1998年10月以来の高水準。PPIとの大幅乖離はCPIの信頼性に関わる

 TUIK(トルコ統計局)は5月のCPI(消費者物価指数)を発表しました。5月のCPIの上昇率は前年同月比で73.50%となり、1998年10月以来の高水準に達しました。PPI(生産者物価指数)の上昇率も前年同月比で132.16%となり、1995年以来の高水準となりました。

トルコCPI
トルコCPI

(出所:TUIK

トルコPPI
トルコPPI

(出所:TUIK

 CPIの内訳を見ると、物価がもっとも上昇した項目は107.62%の交通・運輸、次いで91.63%の食料・ノンアルコール飲料、82.08%の家電・家具となりました。トルコはこれらの結果を受け、アルゼンチンを抜いてG20の中でもっとも高いインフレ率の国となりました。

5月トルコCPIの内訳
5月トルコCPIデータ

(出所:TUIK

個人的にもっとも気になっているのはCPIとPPIの乖離です。なぜならば、CPIとPPIの乖離が58.66ポイントに上っていることはCPIの信頼性を揺るがすことになりかねないからです。CPIとPPIが長期間にわたってこれほど乖離していることはあまり考えられません。

【参考記事】
【トルコリラ見通し】トルコの中央銀行が「これ以上の利下げは難しい」とコメント。原油高で潤う産油国が、トルコに直接投資へ(2021年12月8日、エミン・ユルマズ)
実質実効為替レートは史上最安値を更新。なぜ、トルコリラはここまで弱いのか?(2021年7月7日、エミン・ユルマズ)

 これが事実だとしたら、トルコの生産者が6割のコスト増を吸収し、最終商品の価格に反映させていないという結論になります。短期間では可能だとしても長期間にわたってこれだけのコスト増を企業側で負担するのは現実的ではありません。現実的なシナリオはTUIKが政府の命令でCPIを低く見せていることでしょう。

トルコ政府が命令?エルドアン政権がCPIを低く見せることで得る2つのメリットとは?

 CPIを低く見せることのメリットは何でしょうか?これは、大きく分けて2つあります。

ひとつ目は国民の反発を防ぐことです。選挙まで残り1年となっているので100%を超えるインフレ率を発表して国民を怒らせたくないでしょう。

 二つ目の目的は公務員の賃上げ率を抑えることです。トルコの公務員の給料はインフレ率に合わせて賃上げされるので、インフレ率を低く見せれば賃上げが少なくて済みますし、国家予算への負担が小さくなります。

 一方で公務員の購買力が著しく損なわれ景気悪化を加速させることになりますが、エルドアン政権はそこまで先のことを考えて行動しているようにみえません。

エルドアン政権がCPIを低く見せることのメリットは2つ。ひとつ目は1年後の選挙を見据え国民の反発を防ぐこと。2つ目の目的は公務員の賃上げ率を抑えること  (C)Anadolu Agency/Getty Images

エルドアン政権がCPIを低く見せることで得るメリットは2つ。ひとつ目は1年後の選挙を見据え国民の反発を防げること。2つ目は公務員の賃上げ率を抑えられること  (C)Anadolu Agency/Getty Images

エルドアン大統領の利下げ継続発言でトルコ国内の米ドル買いが加速

 今週(6月6日~)のトルコリラは、円安の進行を受け、対円では大きく動きませんでしたが、対米ドルでは下落トレンドが続いています。トルコリラ安・円安という状況で、米ドル/トルコリラは16.70リラを超えました。

トルコリラ/円 日足
トルコリラ/円 日足

(出所:TradingView

米ドル/トルコリラ 日足
米ドル/トルコリラ 日足

(出所:TradingView

エルドアン大統領は今週(6月6日~)行った演説で、利下げを続けると発言したことがトルコ国内の米ドル買いを加速させました。

 個人的には、CPIと政策金利の差が59.5%となっていますので、ここから1.00~2.00%利下げしたところで為替に大した影響がないと考えています。

 同じ程度の利上げもしかりです。ロシア中銀のように一気に20~30%の利上げでもしない限り効果は期待できません。

エブリシング・バブルの崩壊(エミン・ユルマズ著)
エブリシング・バブルの崩壊
エミン・ユルマズ

<内容紹介>
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著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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