米ドルはドットチャートの大幅引き上げで全面高となったが、パウエルFRB議長の発言で反落し、最後はまた上昇
注目のFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されました。今回はその内容から見ていきましょう。
利上げに関しては、0.75%と市場の予想どおりで驚きはありませんでした。
同時に発表された政策金利見通し(ドットチャート)の中央値は、2022年末で4.4%、23年末で4.6%と前回6月時点(3.4%、3.8%)から大幅に引き上げられました。
(出所:FRB(米連邦準備制度理事会))
その後に開かれた定例記者会見で、パウエルFRB議長は「今後の利上げのペースは経済データ次第」「いつか利上げペースを落とすのが適切になるだろう」と発言しています。
FOMC後の定例記者会見で、パウエルFRB議長は「今後の利上げのペースは経済データ次第」「いつか利上げペースを落とすのが適切になるだろう」と発言 (C)Bloomberg/Getty Images News
ドットチャートが大幅に引き上げられたことで、米ドル全面高となりましたが、パウエル議長の発言で反落し、最後はまた米ドルは上昇して終わっています。
(出所:TradingView)
パウエルFRB議長はある意味、当たり前のことを言っているだけ。少なくとも米ドル安方向に向かう可能性はかなり低くなった
パウエル議長の発言はある意味、当たり前のことを言っているだけです。いつまでも、今のペースで利上げを続けるわけではありませんので、何も驚きはありません。
それまでに米ドルをかなり買っていたために、調整の材料とされてしまいましたが、時間が経つにつれて、市場も冷静になってきたという反応だったと思います。
今回の決定が米ドル高の流れを作るかどうかはまだはっきりしませんが、少なくとも米ドル安方向に向かう可能性はかなり低くなったと言えると思います。
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米ドル/円は中期的に147円どころではなく150円もすでに視野に。介入の可能性が徐々に高まっているのが唯一気になる
ここからも米ドル買いで勝負していけると思います。そこで、米ドル/円、ユーロ/米ドル、それぞれについて見ていきます。
まず、米ドル/円ですが、先日発表された8月の日本の貿易収支が過去最高の赤字となり、今後も実需の米ドル買い・円売りが継続的に出てくることは間違いありません。
また、この原稿を書いている時点では、まだ日銀の金融政策決定会合は終わっていませんが、日銀が金融緩和を継続するのはまず確実ですので、そういう意味においては米ドル/円にはまだまだ上昇の余地があります。
中期的に見れば、147円どころではなく150円もすでに視野に入っていると個人的には考えています。ひょっとすると、そんなところでは止まらない可能性もあると考えています。
(出所:TradingView)
ただ1つだけ心配があります。日本政府の対応です。
先日、山崎元財務官が、インタビューで「財務省は介入の準備が出来ている」「いつ介入してもおかしくない」と発言していました。現在の神田財務官は、山崎氏が財務官の時の部下で、一緒に為替介入を実施した仲間です。山崎氏は財務省の意向を受け止めた上で発言しているはずです。
もちろんある意味の口先介入ですが、介入の可能性は徐々に高まっていることは間違いありません。それが唯一気になります。
ユーロ/米ドルは米国も利上げ、欧州も利上げで綱引きになる可能性もあるが、それも上方向に反転させる力はなさそう
一方、ユーロ/米ドルですが、こちらも最近、ECB(欧州中央銀行)が「ユーロ安は問題である」と発言するようになってきましたが、伝統的にECBは為替介入には極めて否定的です。その点では、介入のリスクを気にする必要がほぼありません。
さらに、ロシアが民間兵士30万人をウクライナに派兵することを明らかにして、ウクライナ情勢は益々混迷の中に入ってきました。ユーロにはさらなる下落圧力がかかってくることも想定できます。
1つだけ考慮しなければいけないのは、ECBも利上げを積極的に行なっている点です。米国も利上げ、欧州も利上げということになると、綱引きになる可能性はあります。ただ、それもユーロ/米ドルを上方向に反転させる程の力はないと思います。
(出所:TradingView)
米ドル高の流れはおそらく米国の利上げのピークが見えるまで続く。日本政府による介入のリスクを頭に入れつつ、米ドル買い戦略を継続
結論として、米ドル/円、ユーロ/米ドル、どちらでも米ドル買い戦略は有効だとは思いますが、唯一、日本政府による介入のリスクだけは頭に入れながら、ポジションをコントロールする必要があるということです。
米ドル高の流れはおそらく、米国の利上げのピークが見えてくるまで続きます。それまでは、米ドル買い戦略を続けていても大丈夫だと考えています。
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