インフレが世界最高水準のトルコはなぜ利下げしたのか。そして、今後も利下げは続くのか?
TCMB(トルコ中銀)は9月22日(木)に行われた金融政策委員会で、政策金利を100bps(1%)引き下げ、13%から12%にしました。世界の主要国がインフレ抑制のため相次ぎ利上げしている中、インフレが世界最高水準のトルコはなぜ利下げしたのでしょうか。
(出所:トルコ中銀のデータを参考にメルマガ部が作成)
残念ながら経済合理的な理由は存在しません。エルドアン政権は選挙前にインフレ抑制ではなく、景気刺激を重要視していて、トルコ中銀に利下げを継続するように圧力をかけています。
実際にトルコ中銀も景気減速の兆候があるという理由で利下げを正当化しています。トルコ中銀はエルドアンに逆らえないことは周知のとおりですが、景気悪化でインフレが弱まるという見方は間違っていません。
もちろんトルコのハイパーインフレはそう簡単に正常なレベルに戻りませんが、インフレ圧力は次第に和らぐと予想しています。
いずれにせよ、トルコの問題は深刻な米ドル不足であり、ここで数パーセントの利上げを行ったところで解決はしません。個人的には利下げは今後も続く可能性があるとみています。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】トルコが据え置き予想の政策金利をサプライズ利下げ! インフレ環境下での利下げは狂気の沙汰だが、今後も利下げが続く可能性は高い(8月24日、エミン・ユルマズ)
トルコを始め主要新興国が深刻な米ドル不足が、世界経済の最大のリスクに
トルコの米ドル不足が深刻になっていることは短期対外債務の状況から伺えます。返済期限まで1年未満になっている短期対外債務残高は7月時点で1820億ドルになっています。
史上最多額だった6月の1825億ドルと比較すると5億ドル減少していますが、6月以降に原材料価格が大きく下がっていることを考慮するともっと減少するべきでした。
銀行業以外の民間セクターの短期債務は年間ベースで12.2%も上昇しています。
他の主要新興国でも深刻な米ドル不足が生じていて、これが現在、世界経済の最大のリスクであると考えています。
利下げ後のトルコリラは、対米ドルで史上最安値を更新
トルコ中銀が利下げした後、トルコリラは対米ドルで史上最安値を超え、米ドル/トルコリラは瞬間的に18リラ台後半水準まで上昇する場面も見れました。
一方で、対円では底堅く推移していて、トルコリラ/円は9月初旬からの狭いレンジから抜け出せていません。
(出所:TradingView)
トルコリラの対米ドルでの下落はトルコの住宅価格を上昇させています。
(出所:TradingView)
トルコ中銀が発表した7月の住宅価格指数は前年同月比で173.8%の上昇となりました。通貨が信認を失うと米ドル化の加速と実物資産への投資が増えます。
ロシアとウクライナの戦争も住宅価格を押し上げています。ロシアが部分的動員令を発表した後にロシアからトルコへの飛行機チケットは瞬時に売り切れとなり、ロシア人はトルコに殺到しています。
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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