米ドル/円はじわじわ上昇し32年ぶりの150円以上に定着。
ミセス・ワタナベの「介入プレー」は明らかに失敗!
為替介入の「脅威」があっても米ドル/円はじわじわ上昇し続け、32年ぶりとなる150円以上の水準に定着している。米ドル/円は「押し目待ちに押し目なし」というか、「介入待ちに介入なし」の市況となっている。
(出所:TradingView)
「介入待ちの介入なし」があったからこそ、米ドル/円のじわじわした上昇につながっている側面もある。
なにしろ、「介入プレー」をやるミセス・ワタナベさん(日本の個人投資家)が財務省・日銀の先回りをして米ドル売りを仕掛けたから、介入がなかなか見られず、米ドルのじわじわとした上昇に連れて米ドル/円のショート(売り)ポジションの踏み上げ(損切りの買い戻し)があったと推測される。
その結果、結局、米ドルの一段の上昇につながったわけで、「介入プレー」の失敗は明らかだ。
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米ドル/円は介入時の値幅の倍返しとなる、151円台半ばが目先のターゲットか
もっとも、9月22日(木)以降、介入らしい痕跡は何回もあった。しかし、値幅が限定的だったため、また当局が「覆面介入」の有無を言わないため、真相はわからない。
疑心暗鬼になった市場関係者が多く、節目に近づいたときの「自己介入」のような値動きだった可能性もある。「自己介入」とは、介入と思われる一時的な売りに追随した行動で、一時の値幅の拡大にはつながったが、いずれもたちまち修正されたため、かえって米ドル高の基調を強化した側面があったとみる。
目先の米ドル/円のターゲットと言えば、やはり9月22日(木)の値幅をこのまま同日高値に上乗せした、いわゆる「倍返し」の計算で得られる151円台半ばの打診が有力視されるだろう。
(出所:TradingView)
もしかしたら、財務省・日銀も、同ターゲットの前後で再度、本格的な介入を行う可能性がある。ただし、これもあくまで憶測なので、「介入プレー」はやはりおすすめできない。
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2011年安値~2015年高値の値幅を当てはめれば、米ドル/円の
高値メドは152円。このまま達成しても不思議ではない
本来は中期スパンの視点であったが、今ではもはや短期スパンの話となりつつある、もう1つ見方もある。
それは、2011年安値から2015年高値までの約50円の上昇幅があったから、2021年安値の102.59円から同じ50円の値幅で測ると、今回は152円台後半というターゲットが得られる。介入待ちで介入なしの状況が続くなら、このまま達成しても別にサプライズはなかろう。
(出所:TradingView)
いずれにせよ、円安自体が確かに行き過ぎの状況にはある。ただし、財務省・日銀の介入があったからこそ状況を複雑にしたわけで、かえって円安の流れが加速していく恐れがある。
もちろん、仮に1日で3兆円を超える金額の介入があっても、結局は虎視眈々と狙っている米ドルのロング筋に打ち負かされるから、日本の当局による単独の介入自体も円安の流れを加速する存在となり、成功するはずもない。
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円安は「新天地」を拓いた! 英ポンド/円の動きを見れば、
円が最弱の通貨であることが改めて確認できる!
円安の本流には、実はもう1つ大事な側面がある。それは、ほかならぬ、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の動向だ。
ユーロ/円が年初来高値を更新し、さらに英ポンド/円も年初来高値を更新したばかりというのは、マーケット参加者に深い印象を与えたに違いない。
なにしろ英ポンドと言えば、ついこの前、フラッシュクラッシュ的な暴落を演じたばかりだ。英ポンドは対米ドルで史上最安値を更新し、今でも歴史的な安値圏にいるが、対円(英ポンド/円)はなんと、2016年2月以来の高値圏へ上昇したので、感覚的な「違和感」を払拭しきれない。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
英ポンドが対米ドルで最弱なのに、対円では約7年ぶりの強さを見せていることは、円が最弱であることを改めて証左する、もっとも強力なサインである。だからこそ、円安は「新天地」を拓いていると言える。
新天地と言えば、やはり対米ドルのみではなく、主要な外貨に対する円安の流れの一段の延長や拡大が見込まれ、新たな円安余地が拓けられることを意味する。もちろん、探れるターゲットに関しては短期スパンの話ではないから、達成されるまでは市況も紆余曲折が想定されるため、注意していただきたい。
英ポンド/円は歴史的な「ダマシ」を経て188円程度まで上昇!?
円安の余地は、ここからまだまだある!
英ポンド/円の月足をみると、中長期スパンにおけるターゲットが鮮明である。目先、高値更新しているから、先月(9月)の足型の意味合いをはっきりさせている。
先月(9月)は財務省・日銀による介入があったことに加え、対米ドルで英ポンドの暴落やフラッシュクラッシュがあったから、英ポンド/円も一時は148円台後半まで暴落した。しかし、その後は見事に反転し、9月末は161.60円で大引けしたから、歴史的な「ダマシ」のサインを点灯したとみる。
(出所:TradingView)
要するに、先月(9月)は一時、2021年7月以来の安値を更新したものの、結局は今年(2022年)3月の終値よりも上で大引けしたわけで、安値トライ自体が究極な「ダマシ」となり、また内部構造の強さをかえって証左したわけだ。
目先、英ポンド/円は高値を更新しているから、同波乱の値幅分(6月高値~9月安値≒20円)を上乗せすれば、188円程度への上値余地が計算され、仮にそのような見通しが正しければ、英ポンドの円に対する上昇、すなわち円安の余地は、まだまだこれからだと言える。
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英ポンド/円は、月足を見れば190円の大台を超える可能性も!
円安をリードする主役が、米ドルから英ポンドなどへ交代する!?
さらに月足チャートを観察すればわかるように、2016年安値と2020年安値で「ダブル・ボトム」を形成し、「ネックライン」と化した2018年2月の高値をすでにブレイクしているから、ネックラインから測ったダブル・ボトムのフォーメーションが示唆するターゲットは、190円の大台を超える。
(出所:TradingView)
前述の計算も合わせてみると、やはり英ポンド/円の上昇余地はまだまだ大きく、先月(9月)の歴史的な波乱で安値を拾ったトレーダーさん(何を隠そう、自分もその一人)がいたら、英ポンド/円のロング(買い)ポジションをいかに握っていくかが、これからの収益を大きく左右するだろう。
ちなみに、スワップポイント(スワップ金利)という単語が近年、死語となりつつあるようだが、英ポンド/円のロングポジションを持っている間は、たっぷりとスワップポイントによる金利収益を享受できる。スワップポイントを第一目的とする取引はまったくおすすめできないが、市場の内部構造に沿った形の取引でスワップポイントをもらえれば、それは握力(ポジションを保有すること)の維持を促進してくれる大きな要素であるから無視できない。
英ポンド/円は好例であるが、主要クロス円の多くは例外なく円安の余地を示唆している。言ってみれば、これまでの円安をリードしてきたのは米ドルであったが、これからは主役交代の可能性がある。そのわけは、また次回にて詳説したい。市況はいかに。
14:30執筆
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