日銀のYCC変更は想定外。長期金利の上昇を多少容認するもので、実質的な金融引き締め
先週金曜日(7月28日)に日銀金融政策決定会合が終わり、YCC(イールドカーブコントロール)に関しての変更がありました。
今回は特段変更がないと予想していましたので、想定外でした。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は、日銀の政策変更がなければ2円程度の円安、政策変更があれば5円程度の円高になりそう。IMFが「日銀はYCCをもう廃止すべきだ」というレポートを出した!(7月27日、今井雅人)
⇒米ドル/円、ユーロ/円などで、1円程度の下押しを買い。日銀がYCCの変動幅を拡大するとは、とても思えない! 基本は円売りで、日銀が変更なしなら、ある程度円安に(7月21日、今井雅人)
⇒米ドル/円での米ドル安が顕著なのは、ポジションの偏りによるもの! 米CPIの急低下で、米ドル安圧力は当面かかるが、日銀の政策変更観測は過剰反応で、中期では円安継続(7月14日、今井雅人)
前回はYCCの変更に否定的な意見ばかりだったのが、どうしてこうなったのか。今後のためにも色々探ってみたいと思います。
今回変更された内容について見てみます。
これまで、YCCでは長期金利(10年債利回り)を0%±0.5%の幅でコントロールするという仕組みでした。そして、この幅を超えそうになったら、無制限に国債を買って(あるいは売って)、変動幅を超えさせないようにするというオペレーションをしていました。
しかし、このやり方をすると、イールドカーブがゆがんだり、債券市場の流動性が低下するなどの副作用がありました。
それを受けて、今回変動幅は従来のものを維持するものの、この変動幅内に絶対に収めるというものではなく、多少超えても構わないというスタンスに変更しました。
そして、念のため、1%は超えさせないという方針を示しました。
これは、長期金利の上昇を多少容認するものですから、実質的な金融引き締めだと言えると思います。
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日経新聞の事前リークで急激な円高となり、決定後は乱高下から円安傾向に
この決定は、事前に日経新聞がリークしたので、発表前に急激な円高になりました。
このリークは大きな問題で、おそらく犯人捜しが今行われているのではないかと思いますが、それはさておき、実際に決定された後は、市場は乱高下しました。
ただ、海外市場に入ってくると、徐々に円安方向に向かい始め、結局、円最安値で週末を終えました。そして今週も円安傾向は続き、米ドル/円は今週(7月31日~)に入って143円台となっています。
(出所:TradingView)
日本の長期金利は上昇、日経平均は下落も、為替は円安のデカップリング。このまま円安継続の意見には疑問
正直申し上げて、今回の反応はどこかしっくりきません。
というのは、日銀の決定を受けて、日本の長期金利は0.6%を超えてきています。また、長期金利の上昇を嫌気して、日経平均も下落しています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
それにも関わらず、為替市場では円安。こういう株、債券、為替のデカップリング(切り離し)は最近見たことがありません。
ですから、このまま円安傾向が継続するという意見にはやや疑問を持っています。
米ドルに上昇圧力がかかってくる可能性は、まあまあある。ユーロ/米ドルは上手くやれば1.06ドル台まで下落も
一方で、米国はFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.25%の利上げ後、好調な経済指標もあり、長期金利が4%をしっかりと超えてきました。
(出所:TradingView)
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、今後利上げするかは経済指標などのデータ次第と言っていますが、マーケットは次の利上げを織込みに行っています。
米雇用統計、米CPI(消費者物価指数)などの結果次第ですが、現在の状況だけで考えると、米ドルに上昇圧力がかかってくる可能性は、まあまああると思っています。
その場合は、まだロングポジションがそれなりに残っているユーロ/米ドルの下落の可能性が結構あるのではないでしょうか。
上手くすれば1.06ドル台もあるのではないかと予想しています。
(出所:TradingView)
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米ドル/円は米ドル高圧力で145円を再びつけるかも。米雇用統計が弱くなければ、しばらく米ドル買い
米ドル/円に関しては、円安圧力がかかるかはよく分かりませんが、米ドル高圧力がかかって上昇する可能性はあると思っています。145円を再びつけることもあるかもしれません。
(出所:TradingView)
明日(8月3日)の7月米雇用統計の数字が予想を下回らなければ、しばらく米ドル買い方針でトレードをやっていくつもりです。
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