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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

もし米国が2%利下げしたら、米ドル/円は130円台前半
程度へ下落か。140円台まで戻したら売りのマーケット
に。金利面で魅力が低下しても米ドルを買う理由はある?

2023年12月17日(日)07:33公開 (2023年12月17日(日)07:33更新)
志摩力男

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さようなら“Higher For Longer”

 12月13日(水)に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果は驚きでした。これまでの金融引き締め路線から明確に転換したからです。

 事前にはまったく予想されていませんでした。FRB(米連邦準備制度理事会)ウォッチャーとして有名なWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)紙のニック・ティミラオス氏も直前に書いた記事は、サブタイトルに「政策金利を据え置く可能性が高く、投資家の早期切り下げ観測を後退させるだろう」と書いていました。ニックさんでさえ、今回の決定はサプライズだったといえます。

 直前に、米雇用統計と米CPIという、2つ超重要な指標発表があったのですが、いずれも事前予想より強いものでした。

 経済指標だけを見て判断するならば、金融緩和方向にシフトする必要性はまったくありませんでした。

・声明文がハト派方向に少し修正されました。

・ドットチャート(ドットプロット)が低下し、2024年末まで3回利下げ(4.5-4.75%)を予想。9月FOMCでは2回の利下げ(スタートが5.5-5.75%なので、2回利下げでも5.00-5.25%)でした。

・パウエル議長の者会見では、利下げの時期も議論したと明言(12月1日スペルマン大学における講演では利下げの議論は時期尚早と一蹴)。

 わずか2週間ほどで大きな変化です。この明確な政策シフトに金融市場は大きく揺れました。

12月FOMCで示されたドットチャート
12月FOMCで示されたドットチャート

(出所:FRB

 私を含め、多くのエコノミストは“Higher For Longer”(より高い金利がより長く続く)を信じていました。2024年末のFF金利(※)はおそらく5%…そう考えていました。

(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)

 それが利下げ路線に転じたので、まずはどのような経路でどの程度、米金利が下がるのか?その目測が必要です。

 CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFed Watchによると、その時の2024年末のFFレートは4.00-4.25%となっていました。つまり、5回の利下げです。

 SEP(経済予測サマリー)におけるLonger Runのレートは2.5%。これが中立金利とされています。アバウトな考えですが、両者の中間あたり、3.25%あたりぐらい、現在の5.25%から2%の利下げぐらいというのが、この先ある利下げ路線の着地点(ターミナルレート)かなと、ざっくりと想定しました。

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もし米国が2%利下げしたら、米ドル/円は130円台前半程度へ下落か

 では、2%利下げをしたとき、米ドル/円はどのあたりで取引されるのが適切でしょうか。140円では止まらず、おそらく130円台前半ぐらいまでオーバーランするのではないでしょうか。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(出所:TradingView

 パウエル議長の会見後に上記のように考えました。あまりにも突然のことなので、参考にできる予測等もなかったのですが、最終的に130円台前半まで下がるのであれば、140円台は戻りがあれば売りのマーケットになるでしょう。

 ちなみに、ゴールドマン・サックスは、これまで2024年は第3四半期に利下げ1回との予測でしたが、パウエル議長の会見を受けて予想を大幅修正、最初の利下げが2024年3月、その後は6月、7月と利下げし、そこからは四半期ごとに1回利下げ(おそらく、9月、12月)の5回利下げを予想しています。

 彼らは米ドル/円に強気でしたが、この米経済チームの利下げを前提に予想を変更し、2024年は140円に修正しています。

 米ドル/円マーケットには、昨年(2024年)ほどではないですが、相応に米ドルロング(買い)・円ショート(売り)ポジションが溜まっています。

 昨年(2022年)は介入で米ドル/円相場は止まり、ドルロングポジションの投げで151.94円⇒127.22円へと、25円程度の調整となりました。

 今年(2023年)は、米ドル/円ロングの規模は昨年(2022年)ほどないと思いますが、米金融政策の変更という大きなファンダメンタルズの変化があります。米ドル上昇トレンドに戻るには時間がある程度かかるでしょう。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(出所:TradingView

 マーケットは一気に織り込む傾向があるので、個人的には米ドル/円は昨年(2022年)同様、大きめのポジション調整があり、その後は米政策金利3.25%、長期金利はおそらく3.00-3.50%程度、日本の金利はゼロ%、JGB(日本国債)は1.0%を少し下回るところという数字を前提に、それでもキャリートレードをするのかどうか、考え直すことになりそうです。

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金利面での魅力は低下…。それでも米ドルを買う理由

 金利面では魅力は低下しますが、米ドルを買う理由はその他にもあります。

 2024年はAI開発が進む1年となるでしょう。Chat GPTの登場には驚かされましたが、今では使って当たり前の機能になっています。iPhoneが突然現れたように、すごい製品が生み出されるかもしれません。

 そして2024年は大統領選挙の年です。急にFRBが利下げ路線に転じたのは、インフレ率の低下スピードが予想以上に速かったからです。

 景気後退にならなくても、失業率が上昇しなくても、単にインフレ率の低下が続けば、利下げが正当化されるとウォラー理事は発言しました(11月28日)。

 インフレ率が低下しても金利をそのままにすれば、実質金利は上昇することになり、経済に無用な下向き圧力をかけることになります。大統領選挙の前に、急に経済が失速すれば、それは現職大統領にとっては不利なこととなります。

 以前にも動画などで解説しましたが、もしトランプ大統領再選ということになったら、2016年の時とは違い、米ドルは下落するでしょう。

2024年は米大統領選挙が行われる。もしトランプ氏が再選ということになれば、米ドルは下落するだろう (C) Chip Somodevilla/Getty Images News

2024年は米大統領選挙が行われる。もしトランプ氏が再選ということになれば、米ドルは下落するだろう (C) Chip Somodevilla/Getty Images News

 その理由は、減税や財政拡張余地が米国にはあまりないからです。そして、欧州や他の地域の米国に対する反発はかなり強まるので、世界は分裂し、あまり米ドル高要因には見えません。売り要因になるでしょう。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(※筆者提供・TradingView


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