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昨年はSVB銀行破綻で急落!3月米ドル/円暴落説を追う
先日オンラインでセミナーを行いましたが、最近よく3月に米ドル/円が急落するのではないか、もしくは株価等の金融市場が暴落するのではないかというご質問をいただきます。
個人的には、現時点でそのようなことが起こる可能性は低いのではないかと思います。
しかし、昨年(2023年)の今頃、SVB(シリコンバレー銀行)の破綻から、米地銀が3行破綻し、スイスの名門クレディスイスもUBSに吸収合併されました。
米ドル/円も138円前後の高値から130円割れへと急落しました。 その経緯を考えると、暴落説が気になるのも無理からぬことではあります。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は、上値が重くなっていきそう。米国の金利は、すでにピークを打っている!?大きな下げ相場と、リスクオフの円高に警戒!(2023年3月16日公開)
(出所:TradingView)
ただ、その時の株価はどうだったかと言うと、「金融危機=金融緩和」という連想からあまり下落せず、むしろ急騰のスタート地点に。ウォーレン・バフェット氏が日本を訪れ、その後の日本株本格上昇の起点にもなりました。
(出所:TradingView)
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3月米ドル/円暴落説を季節性の観点から検証
まず、3月のドル円の季節性を見てみます。「3月に米ドル/円は下落する傾向がある」という人もいますが、どうでしょうか。
(※筆者提供)
2000年以来の統計ですが、過去平均して米ドル/円レートは0.61%上昇しています。特に季節性があるようにも見えませんが、2009年から2015年まで7年連続して上昇し、2016年から2020年まで5年連続して下落しているように、一定期間特定の方向性が出る傾向はあるようです。
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3月暴落説を唱える人たちの「根拠」とは?
それでは、3月暴落説を唱える人たちの「根拠」は何でしょうか?
まったく根拠なく言っている訳では無いはずです。
(1)BTFP(Bank Term Funding Program、 バンク・ターム・ファンディング・プログラム)が3月11日(月)に中止されること。
SVB(シリコンバレー銀行)等の破綻を受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)が設立した緊急融資プログラムです。米国の預金取扱機関(銀行等)が、米国債、政府機関債、住宅ローン担保証券等を担保提供することで最長1年間極めて低い金利で融資をするプログラムですが、3月11日(月)に期限が来ます。このため、一部の地銀は株価が極めて低い水準まで売られています。
パウエル議長は昨年(2023年)の地銀危機について「まったく予期していなかった」と発言しています。
しかし、今はさすがにそのリスクが充分認識されています。BTFPを中止しても大きな危機は招かないという確信があるから中止するのではないでしょうか(また、それでも危機が起きるなら、米金融当局はまったくの無能ということになってしまいます)。
(2)ARMのロックアップ期間が3月12日に終了する。
今の株式市場はAI(人工知能)に対する期待が先導しています。Chat GPTやマイクロソフトのCopilotは、人の言葉をほぼ完全に認識し、それに対する答えもほぼ完璧に近いものが返ってきます。新しい時代の到来を感じさせます。
これが1990年代後半のドットコムバブルと比較する人も多くいます。似ている部分もありますが、あの頃は、まったく収益も売上すら見込めない企業まで買われましたが、今はマグニフィセント・セブン(※)に代表される、収益力のある、超巨大企業がブームの最先端にいます。少々のことでは経営は揺らぎません。
(※編集部注:「マグニフィセント・セブン」とは、GAFAM(アップル、マイクロソフト、アルファベット、メタ、アマゾン)に、テスラとエヌビディアを加えた7銘柄のこと)
しかし、一部の会社は、短期的に株価が急騰し過ぎているのではないかと懸念もされます。そのひとつがARMです。
ARMはソフトバンクが90%の株式を保有しています。市場に流通する株が極めて少ないので、ちょっとしたことで株価が乱高下します。そのロックアップ期間が3月12日(火)に終了します。
ソフトバンクの孫正義氏はARMの株をできるだけ長期間保有したいといっています。
ARMはソフトバンクが90%の株式を保有している。ソフトバンクの孫正義氏はできるだけ長期間保有したいと述べている (C)Tomohiro Ohsumi/Getty Images News
よってロックアップ期間が終了したからといって、すぐにARMの株を売ってしまうということはないはずです。孫さんのファンであるならば「孫さんがそんなことをするはずはない!」と固く信じているでしょうし、私もそう思います。
もし仮に、何らかの理由を付けてARM株を売ったりするなら、株価は急落し、それがソフトバンクグループの株価にも影響を与えるでしょう。
(出所:TradingView)
(3)3月19日に日銀が利上げし、3月20日にFOMCにて利下げされる。
2月29日(木)高田日銀審議委員は「2%の物価安定目標の実現が見通せる状況になってきた」と発言、次の日銀政策決定会合において金融政策の正常化が行われるのではないかという思惑が高まってきています。
しかし、G20後の記者会見において植田日銀総裁は「物価目標実現、今のところまだそこまでは至っていない」と発言しています。
最近の日本の経済統計は弱いものが続いていますが、日経平均は史上最高値を更新してきました。春闘における賃金上昇を確認することが金融政策正常化の条件としているので、その情報が完全に確認されるのは4月になりますが、3月でも十分な情報があるとは言えます。
3月の会合で日銀政策正常化が実現される可能性は「五分五分」でしょう。
しかし、内田日銀副総裁が2月8日(木)の講演で示した通り、仮に日本の金融政策が正常化に進んだとしても、金利の上昇ペースは極めて緩慢となるはずで、事実上ゼロ金利政策と変わらない状況がかなりの期間継続することになります。市場の認識がそこに至れば、円買いの動きが限定的になるでしょう。
(出所:TradingView)
3月20日(日本時間21日午前3時発表)のFOMC(米連邦公開市場委員会)において、米国が利下げに動くことはないでしょう。パウエル議長が12月のFOMC後の会見で、利下げに言及したことで、米利下げを模索する動きが起こり、昨年(2023年)12月にはドル円は140円近辺まで下落しました。
しかし、その後のFRB要人の発言を総合すると、今年(2024年)前半における利下げの可能性は低下しています。米国経済が極めて好調だからです。
3月に日銀が金融正常化することで円高・米ドル安、日経平均の下落、これは多少はあるとは思いますが、日本の金利上昇に限界があるので、円高や株安にも限界があるでしょう。
(出所:TradingView)
(4)米国の財政赤字が巨額過ぎて、何らかの危機が起きる。
これはもっと長期的な話です。
米国経済が好調なのは、米財政支出が巨額過ぎるからであり、いずれ金利上昇や財政支出を制限しなければならなくなり、米国経済及び米ドルは危機を迎えるという説です。
(※筆者提供)
コロナ期は経済がストップしたので、巨額財政支出は致し方ないところはありますが、インフレで苦しんでいるのにいまだにGDP比6%を超える財政支出を続けている理由はないと言えます。
ただ、ロシアによるウクライナ侵攻、中東ガザにおける紛争と、軍事支援を続けないといけないという背景はあります。
この財政支出を理由に米ドル暴落説を唱えるのは、古いタイプのマクロトレーダーが多いです。確かに、かつての常識であれば米ドルは下落していたでしょう。
しかし、テクノロジー面における米国の優位性は、揺らぎません。AIが先導する世界であり、コンピューティングパワーがもっともっと必要です。
計算力が技術革新の制約であり、計算力がもっとあれば、米国の生産性はもっと上昇するでしょう。
新しい世界が来ているので、単純に金融政策や貿易収支だけで相場を予想することが難しくなってきています。米国経済の好調は、米財政赤字だけが理由ではないでしょう。米IT企業の競争力が米ドルの力の源泉だと思います。
私自身は、今後も米国の優位性は揺らがないので、結果的に米ドルが強い状況は続くのではないかと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 週足)
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