メキシコペソ急落もクラシカルなリスクオフにはならず。思った以上に円は弱い!
先週(6月3日~)、あれ?と思ったのはメキシコペソが崩れたこと。
大統領選で初めての女性大統領となるシェインバウム氏が当選し、さらにインド株も急落したことでリスクオフ的な展開となりました。
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(出所:TradingView)
ニュージーランドドル/円や豪ドル豪ドル/円などクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も下げましたが、米ドル/円は結局レンジですね。
(出所:TradingView)
以前のように、米ドル/円やクロス円がどんと落ちるクラシカルなリスクオフにはなりませんね。
金曜日(6月7日)に発表された米雇用統計が強かったこともありますし、なにより「円が弱い!」という印象です。
9兆円の介入が入ったのだから、もう少し調整してもよさそうですが、結局157円ですから思っていた以上に円は弱い。
日銀、コンセンサスは「6月に減額、7月に利上げ」
今週、6月14日(金)は日銀会合(日銀金融政策決定会合)です。
ブルームバーグは「日銀、早ければ今月会合で国債購入減額を具体的に検討も」との記事を流しましたが、木曜日(6月6日)には植田総裁、中村審議委員がともに水を差すような発言をしています。
植田さんは、2%物価目標には「少し距離がある」と表現していましたね。
コンセンサスとしては、6月に国債の買い入れ額を減額、7月に利上げですね。
ただ、1~3月のGDPはマイナス成長でしたし、4月の鉱工業生産もマイナス0.1%に落ち込んでいました。4月の毎月勤労統計で給与は大きく伸びていたものの、実質賃金はまだマイナスです。
今、日銀が引き締めに動ける状況にあるとは思えません。
この状況で日銀が動けば、円安への配慮と受け止められかねません。それは日銀の使命ではありませんので、減額も利上げも難しいように思います。
そうですね。減額したところで、事前に予想されているだけに円高にはならないかもしれませんし
事前予想で、かなり今回の国債買入額の減額予想が広がっていますので、なにもしなければ円安が進んでしまうリスクがあります。
植田さんは前回の轍を踏まないよう、記者会見では慎重に言葉を選ばないといけないですね。
FOMC、注目は「3月からのドットの変化」
6月12日(水)には米CPI(消費者物価指数)発表、そしてFOMC(米連邦公開市場委員会)です。
今回の注目はドットチャート。FRB(米連邦準備制度理事会)の見通しは経済指標で変わりますが、年内の利下げ回数が1回になるのか、2回になるのか。
3月時点では3回でしたから、それがどこまで減っているのか、3月からの変化が注目ですね。もしも3回のままであればサプライズですが……。
まぁないでしょうね。
先週はECB(欧州中央銀行)とBOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])の会合も開かれ、ともに利下げに動きました。
欧州では、スイスが3月に利下げしたことで「ECBも近いうちに利下げするだろう」と予想できましたし、スウェーデンが5月に利下げしたことで、さらに確信が深まりました。
教科書的にはアメリカの先行指標となるのがカナダですから、カナダ中銀が利下げしたということは、FOMCの利下げも思っているより早いのかもしれません。
時代は変わるので、カナダを先行指標とする考え方が「古い教科書」となっている可能性もありますが……。
ゴールド、PBCの購入停止で急落。2040ドル程度まで下がれば買い場になりそう
コモディティ市場では、金曜日にゴールドが急落しました。
雇用統計のサプライズによる米金利高の影響もありますが、「PBC(中国人民銀行[中国の中央銀行])が5月にゴールドの購入を見送った」とのニュースが大きかったようです。
中国はこれまで1年半にわたり、外貨準備の金保有高を増やし続けてきました。それが金利高においてもゴールドが強かった大きな要因のひとつでした。
僕のまわりでも最近、金を買いたいという人が急に増えていたので、危ういなと思っていたところでした。
個人的には、現在ゴールドが史上最高値圏にあるのでいったん見送ったということに過ぎず、深刻な話ではないような気がしていますが、3月から急騰していただけに、利食いなどで調整が深くなるかもしれません。
3月からの急騰の起点である2040ドル程度まで下がれば、買い場になるかもしれませんね。
(出所:TradingView)
中長期的には上がるのでしょうが、年内はどのくらいまでを見ているんですか?
米国が利下げに踏み切れば、新たな上昇が始まるとの見方が多く、年内2500ドル~3000ドルといった予想はありますね。
(出所:TradingView)
スイスフランのロングを対ユーロで継続。SNB総裁がスイスフラン高に懸念を示したことを引き続き材料視
来週(6月17日~)から、エヌビディア株が10分割されます。
エヌビディア株の行方は米国株全体にも影響を及ぼしますから、「買いやすくなった」と買われるのか、「半分だけ利益確定しておこう」と売られるのかのバランスに注目ですね。
今週の戦略としては、引き続きスイスフランのロングでしょうか。
先週のコラムで話したように、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])のジョーダン総裁がスイスフラン安への懸念を示したこともあり、「Don't Fight SNB(SNBに逆らうな)」でいいと思います。
通貨ペアはユーロ/スイスフランか、スイスフラン/円ですが、今ならばこの水準で円ショートを作るよりは、ユーロ/スイスフランでしょうか。
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(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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