先週末の海外市場でドル円は、一時156.78円付近まで上値を切り下げる場面があった。ただ、衆院選の情勢調査で自民党の優勢が伝わる中で円売りが出やすく、取引終了間際には157.27円と日通し高値を更新した。ユーロドルは、1.1826ドルまで上昇した。
本日のオセアニア市場では、衆議院選挙の結果を受けて円安が進行。ドル円は157円後半まで上昇し、スイスフラン円は過去最高値、豪ドル円も1990年以来の高値を更新するなど、円売りが全面的に優勢となった。本日の東京時間のドル円も、衆議院選挙で自民党が圧勝した結果を受け、これまで市場を席巻してきた「高市トレード(株買い・円売り・債券売り)」が、改めて勢いを取り戻す可能性が高い。ただ、今後も高市政権が積極財政路線を堅持するのか、それとも選挙戦で掲げた「(2年間の)飲食料品に対する消費税ゼロ」を、勝利を機に延期という名の事実上の撤回に動くのか、政策スタンスの変化を丁寧に見極めていく局面となりそうだ。
衆議院選挙を前に、中道改革連合が今秋から食料品の消費税を恒久的に0%とする公約を掲げたのを皮切りに、野党各党が競うように飲食料品の消費税ゼロを打ち出した。これに押される形で、自民党も「飲食料品について2年間に限り消費税の対象から除外し、今後設置する『国民会議』で減税実現に向けた検討を加速する」との、聞こえの良い公約を用意した。このため市場では、衆議院選挙の結果がどう転んでも財政拡張路線にブレーキがかかることはなく、いずれ本邦国債売り・円売り相場が再開するとの見方が大勢を占めていた。
ただ、高市政権が本気で「検討を加速」し、政策を実装するのか、それとも昨年同様、「レジが対応できない」といった便利な理由を持ち出し、公約を静かに棚上げするのか、今後の政策運営を慎重に見極める局面となっている。株高がドル円の急落を抑制することにはなるだろうが、財源が不透明な財政拡大について一定の抑制となる方針を示し、債券売りが収まれば円売りの勢いもやや緩む可能性はありそうだ。
また、株と債券とは連動しない、円相場には単体に動意づける要因があることも忘れてはならない。選挙期間中の1月31日には、高市首相が「円安は悪いと言われがちだが、輸出産業にとっては大チャンス」「米国の関税があっても円安がバッファーになった」「外為特会はホクホク状態」と、円安の効用を並べ立てたうえで、「円高が良いのか円安が良いのか分からない。総理が口にすべきことではないが、為替が変動しても強い日本経済をつくりたい」と発言した。足元のインフレ高進には、少なくとも言葉の上では、ほとんど配慮が感じられない内容だった。このため、仮に国債売りが想定ほど進まなかったとしても、円安地合いが早々に転換するとの期待は持ちにくく、足元では「止める理由が見当たらない円安」を意識せざるを得ない状況が続きそうだ。
本邦の政治情勢とは別軸として、米国ではエプスタイン訴訟を巡り、共和党内部からもラトニック米商務長官の辞任を求める声が強まっている点に注目したい。商務長官が、これまで説明してきた以上に、エプスタイン氏とビジネス上および私的な関係を有していたことが明らかになりつつあるためだ。ニューヨーク・タイムズ紙がエプスタイン関連ファイルを分析したところ、ラトニック氏とエプスタイン氏は2005年の初対面以降、長年にわたり継続的に連絡を取り合っていたことが判明している。英国では同事件をきっかけに複数の政府高官がすでに職を追われたとされるが、トランプ政権においても同様の説明責任が果たされるのか、それとも例によって馬耳東風を貫くのか、市場は半ば冷笑的に見守っている。
これまでエプスタイン事件が相場に与えた影響は限定的だったものの、今後さらに詳細が明らかになるにつれ、トランプ政権の足元が再び揺らぎ、「米国離れ」が再加速する可能性も無視できない。少なくとも市場は、問題が沈静化する前提ではなく、「混乱しても不思議ではない」という程度の警戒感を静かに織り込み始めているように見える。
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