昨日の海外市場でドル円は、高市首相が財政拡張政策に前向きな発言をしたことで買いが先行し154.87円まで上げ幅を拡大した。ユーロドルは17日安値の1.1805ドルを下抜けて1.1782ドルまで下げ幅を広げた。1月米鉱工業生産が前月比+0.7%と昨年2月以来の伸び率を記録するなど、米国内経済の堅調さが示されたことがドル買いにつながったとの見方もあった。
本日の東京時間のドル円は、押し目を探る展開を想定する。昨日発足した第2次高市政権は、本日19日に副大臣および政務官の任命を予定しており、まずは政権基盤の整備が進む見通し。もっとも、20日に予定される首相の施政方針演説に加え、外相の外交演説、財務相の財政演説、経済財政政策担当相の経済演説といった政府4演説、さらにその後の予算案審議を控える中、政策運営の具体像を見極めるまでは不確実性が残る。一方で、首相が改めて「積極財政」路線を強調した点は市場にとって無視できない材料。財政拡張への期待が再燃し、株式市場の上昇、債券価格の下落(金利上昇)、円安進行といった「高市トレード」の再活性化につながる可能性がある。
市場の関心は、首相が掲げる「責任ある積極財政」の具体像と、2年間限定とされる飲食料品の消費税ゼロ政策の財源手当てをいかに示すかに集約されている。この論点に大きな変化はない。特に、債券売り・円売りへの警戒が払拭されない背景には、昨日あらためて示された予算編成方針において「約2年間の大改革」が強調された点がある。昨年の首相就任時にも、基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化目標を単年度から複数年ベースへ見直す方針が示された経緯があり、今回も自民党総裁任期にあたる2年間を事実上の財政拡張局面と位置付けるとの見方が強まりやすい。結果として、財政悪化懸念は当面くすぶり続ける可能性がある。24日から始まる代表質問や、その後の予算審議を通じて財政規律に対する市場の信認を確保できなければ、「最大野党」とも称される金融市場から厳しい評価を受けるリスクは否定できない。
為替市場においても、財政拡張と金融緩和期待が重なった局面で進行したアベノミクス期の約40円規模のドル高・円安の再現を懸念する声は根強い。政策の具体性と持続可能性が示されない限り、円安圧力は断続的に意識される展開が想定される。
一方、昨日公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、米連邦準備理事会(FRB)が米財務省の要請を受けて為替市場のレートチェックを実施していたことが明らかとなった。トランプ政権にとって株安・債券安・通貨安の「トリプル安」を招きかねない局面で、ドル高への直接的な懸念を前面に打ち出すことは難しい。実際、欧州通貨やオセアニア通貨との対比ではドル高の勢いに一服感もみられるが、アジア通貨に対しては依然としてドル高基調が維持されている。この点は、ドル高・円安の過度な進行を抑制する動きについて、一定の国際的理解が形成されている可能性を示唆する。もっとも、中長期的にみれば財政拡大路線のもとで円安バイアスがかかりやすい地合いにあることは否定できない。外貨準備や政策手段に限りがある中、本邦通貨当局が発言、レートチェック、実需フローの活用など手法を組み合わせながら円安の流れを緩和しようとする局面には引き続き警戒が必要だ。
円相場以外では、本日公表予定の豪州1月雇用統計に市場の関心が集まる。足もとの豪ドルは金融政策見通しに敏感に反応する地合いにあり、労働市場の強弱が追加利上げの可能性を左右する重要材料となる。ブロック豪準備銀行(RBA)総裁は議会証言で、「想定以上に強い労働需要と低水準の失業率が利上げ判断の根拠となった」と説明している。12月統計では雇用者数、失業率ともに市場予想を上回り、フルタイム雇用も大幅増加となるなど、内容は総じて良好であった。焦点は、この堅調さが年明け以降も維持されているかどうかにある。仮に今回も強い結果となれば、RBAの引き締めスタンス維持観測が改めて意識されやすい。
一方、前日にニュージーランド準備銀行(RBNZ)がハト派的な据え置きを示したことで、豪州とニュージーランドの政策スタンスの差が鮮明化しつつある。この方向性の相違が市場に定着すれば、豪ドル買い・NZドル売りのフローが強まり、豪ドル/NZドルの上昇圧力が高まる可能性がある。豪雇用統計は豪ドル単体のみならず、オセアニア通貨間の相対優位を測る試金石として注視したい。
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