昨日の海外市場でドル円は、一時160.03円まで上昇したが、「パキスタンがすべての交戦当事者に対し、全地域で2週間停戦するよう強く要請した」との報道が伝わると、全般ドル安に傾き159.51円付近まで下押しした。ユーロドルはECBの早期利上げ観測の高まりと、フィキシングに向けたユーロ買いにも支えられ1.1605ドルまで上昇した。
本日の為替市場は、日本時間早朝に米国がイランに対するインフラ攻撃を2週間延長したことで、原油価格の上値が抑えられ、これまで進んでいた有事による原油先物決済に伴うドル買いの巻き戻しが、短期的に入りやすくなりそうだ。
昨日のNY午後、「パキスタンが米国に対しイランとの合意期限を2週間延長するよう要請し、同時にイランにはホルムズ海峡の2週間開放を求めた」との報道が流れて以降、市場では期間限定ながら停戦期待が高まった。トランプ政権にとって、自発的な後退と見られかねない「弱腰のTACO化」よりも、第三国の要請に応じた形での延期の方が体裁を保てる。まさに渡りに船と言える展開だ。
そもそもの誤算は、ベネズエラのマドゥロ大統領拉致が電光石火で成功したことで、対イラン攻撃も短期決着に持ち込めると過信した点にある。出口戦略を描かぬまま踏み込んだ結果、原油価格の急騰、米国内のインフレ圧力、ミサイル在庫の枯渇、さらには政権支持率の急低下と、トランプ政権は完全に袋小路へと追い込まれた。現状、これらを打開する現実的な手段は早期停戦しかない。皮肉にも、停戦を切望しているのはイランではなく米国の側だろう。
ただし、この2週間の間に米国側がイランに歩み寄る停戦案を示さない限り、今後も対イラン戦争は長期化する可能性が高い。ここ数日のトランプ大統領の発言は明らかに過激化しており、ホルムズ海峡の「米国化」(通行に課金する構想)にまで言及している現状では、イランが和平案を受け入れる可能性は低いだろう。結果として、情勢の実質的な進展は乏しく、ドル買いセンチメントが急反転する局面も想定しにくい。
さらに注意すべきは、これまでの一連の報道に対するイラン側の公式見解がほとんど伝わっていない点だ。仮に2週間の攻撃停止が実現しても、その間にホルムズ海峡が確実に開放される保証はない。むしろ、2月末にオマーンの仲介で交渉を進めていた最中、翌日に攻撃を受け、多数の指導者や市民を失った経緯を踏まえれば、イランが米国を信用する余地は極めて小さい。開放期間中に掃海などが進められ、再攻撃の布石となるリスクすらある。加えて、米国が一時的に攻撃を停止しても、イスラエルの攻撃が継続する可能性も無視できない。
中東情勢以外では、本日はニュージーランドドルの動向にも注目が集まる。ニュージーランド準備銀行(RBNZ)の金融政策委員会(MPC)が政策金利を発表予定で、市場では2.25%での据え置きがコンセンサスだ。ただし、声明文のトーン次第ではNZドルが大きく振れる可能性がある。ブレマン総裁は中東紛争を受けた一時的なインフレ上昇の可能性に触れつつも、それを理由に拙速な利上げには動かない姿勢を示している。
NZドルは対豪ドルで昨日も2013年4月以来の安値に沈んだ。国内経済への不安から資本や人材の流出すら指摘される中、構造的な弱さが意識されている状況だ。仮にRBNZがタカ派姿勢を示さなければ、NZドルは一段の下押し圧力にさらされる展開も十分に想定される。
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