■中尾財務官の発言により、米ドル/円が急落!
米ドル/円がついに一時、75円台に突入した。
米ドル/円の戦後の変動相場制以降の最安値は、東日本大震災直後の3月17日につけた76.25円。ここ数日の米ドル/円は76円台でジリジリした動きとなっており、この76.25円が更新されるか、されないのかが1つの注目ポイントだった。
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そんな中、8月19日のNY市場で相場が急落したのは、日本の通貨当局者の発言をウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が伝えたことが原因のようだ。
これは財務省の中尾武彦財務官が「円を特定の水準に誘導するための持続的な為替介入を実施する計画はない」と語ったというもの。
このところ、米ドル/円相場を支えていたものの1つは“介入警戒感”。中尾財務官の発言により、これがなくなり、米ドル/円は一気に急落した。
日本時間の8月19日(金)23時ごろ、米ドル/円は76.3円台付近から75.95円まで急落。歴史的安値である76.25円を更新した。
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ただ、その後は政府・日銀が「介入へ向けて、海外当局との調整に入った」との報道があったことで急速に切り返し、結局この日のNY市場では76.5円付近で取引を終えている。
なお、中尾財務官が財務官に就任したのは約2週間前。就任直後の8月4日(木)に、政府・日銀は大規模な円売り介入を実施している(「政府日銀が注視するだけでなく介入実施! 介入は単独。米ドル/円相場は急上昇!」参照)。
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■今後の注目は「介入の有無」と「QE3の有無」
ザイFX!連載陣では、西原宏一さんが8月18日(木)のコラムで、スイス当局の動きにより、スイスフランが避難通貨として一歩後退したため、避難通貨としての注目が円に集まり、その結果、米ドル/円が76.25円の歴史的安値を割る可能性が高い、と述べていた(「No.1避難通貨はスイスフランから円へ。米ドル/円76.25円割れの可能性は高い!」参照)。
今回は介入に関する報道が交錯したことで、相場が乱高下したが、今後も「介入があるかどうか」が引き続き注目ポイントの1つ。
また、8月26日(金)にジャクソンホールでバーナンキFRB議長の講演が予定されているが、同議長がそこでQE3(追加量的緩和策第3弾)の実施を示唆するかどうかが市場では注目されている。
そのあたりで相場が大きく動く可能性もありそうだ。
(ザイFX!編集部・井口稔)
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