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田向宏行
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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ユーロ崩壊は過剰に織り込まれている?
ギリシャ破綻でユーロ切り返しのシナリオも

2011年09月16日(金)17:54公開 (2011年09月16日(金)17:54更新)
陳満咲杜

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 確かに、短期スパンにおけるオーバーシュートのために、ユーロは今週に入って反騰を見せてはいる。はたして、先週の急落で最悪の状況が織り込まれた可能性はないのだろうか?

 かなり難しい問題となるが、筆者の考えとしてはノーである

 株式市場とは違って、為替市場は典型的なゼロサムマーケットであり、その特徴の1つがバリュー(価値)を測れない、あるいは、バリューを反映しないということである。

 つまり、日本という国の価値を円のレートで測れないように、ユーロも為替レートで現在の状況を測れない

 したがって、たとえば、BNPパリバ銀行の株は、ROE(自己資本利益率)が13%にもなるから、これからユーロ圏の混乱が拡大し、いくらで買えば「割安」で「安全な投資」になるなどと計算できるが、ギリシャに関する懸念が現実となった後、ユーロをいくらのレートで買えば良いのかについてはまったく計算ができない

 だから、株の神様と呼ばれるバフェット氏でさえ、為替に「投資」しない方針を取るわけだ。

 ギリシャのユーロ離脱があったとして、ユーロ圏内の会社の株を安値で拾うことはできるが、ユーロの押し目買いができるかどうかはまったく不明だ。現時点のユーロのレートが「最悪」の状況を織り込んでいるかどうか、誰もよくわからない

 ただ、多くの専門家は、このような理屈で予測を展開していると聞いている。

■鈍いイメージの日銀が、珍しく良い仕事をした!

 ところで、現時点の市況に関して、次の2点にご注意いただきたいと思っている。

 1つ目は、市場のセンチメントがかなりユーロ売りに傾いているため、ユーロの戻りがあれば、出遅れたショート筋が仕掛けてくる公算が大きく、これが逆にユーロの切り返しをもたらす土台となり得る、ということだ。

 そして2つ目は、ゴールドマン・サックスやHSBCなどの一部の大手金融機関が、ユーロになお強気スタンスを示していることだ。その根拠としては、現在のマーケットがユーロ崩壊のシナリオを過剰に織り込んでいることが挙げられている。

 また、来週は9月20日(火)~21日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)が予定されており、「QE3(追加的緩和策第3弾)」の有無を巡る思惑が出やすくなると見込まれるため、足元で米ドルを急いで買う必要はなさそうだ

 その上、ドルインデックスで測るテクニカル的な理由もしっかりしている。詳細は筆者のブログに書いているので、よろしければ、ご覧いただきたい。

 なお、米ドル/円に関しては、安値圏での推移といった状況に大した変化は見られない。

米ドル/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足

 ただ、9月15日(木)の海外時間における日銀の「レートチェック」は見事だったと思う。

 今回の欧州金融機関に対するドル資金供給オペには日銀も参加しており、スイス当局と同様、EU(欧州連合)に「貸し」を作っているので、介入しやすい環境にあるとマーケットは認識している。

 そして、「実弾」を投入せずに円高阻止をできるに越したことはないから、このタイミングで「口先介入」をしないともったいないのである。

鈍いというイメージが付きまとう日銀にしては、良い仕事をしたと思っているが、その効果に関する検証と試練はまだまだ続く。

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