■最近の円安トレンドは「ホンモノ」になる可能性が高い!
足元の為替市場では、米ドル安と円安の基調が続いている。
通貨ペア別に見ると、ユーロ/米ドルと米ドル/円の値動きが目立っており、前者は年初来高値を更新し、後者は昨年7月以来の高値をトライしている状況だ。
また、米ドル/円の上昇に連れて、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も軒並み高騰しており、ユーロ/円は昨年8月以来の200日移動平均線のブレイクをトライしている。
なお、米ドル/円について言えば、2月安値の76.02円からほぼ一本調子の上昇となっているため、短期的には過熱感が出てきた。しかし、円安トレンドは今後も続く可能性が高い。
先週のコラムでも申し上げたが、そもそも、米ドル/円のプライマリーサイクルは円安への転換を示唆していた(「19カ月サイクルがユーロの切り返しを示唆。性急なユーロ売りは避けたほうがいい」を参照)。
そのような状況下で、日銀が追加の金融緩和を発表し、それが引き金となって、「絶妙」と言えるほどのタイミングで円安トレンドをスタートさせた。したがって、今回の円安は「ホンモノ」になる可能性が高い。
■4月末までに、米ドルは85円台に到達できる可能性も
この見方を検証するために、ファンダメンタルズとテクニカルの両面から簡潔に説明しよう。それぞれ、以下の如きである。
まずはファンダメンタルズの面からで、確かに、日銀の量的緩和拡大は米ドル/円のレンジ相場を打ち破るきっかけとなった。だが、円売りの進行を推進させた背景にあるものは、日米の2年国債の利回り差だろう。
日米2年債の利回り差の縮小が続いていたが、昨年9月末あたりに一服し、その後は拡大傾向にある。マーケットでは、日銀の2月14日(火)の決定を受け、利回り差拡大は続くという見方が広がりつつあり、そのため、投機筋が円のロングポジション(買い持ち)の解消を急いだとみている。
そして、再反落でもしないかぎり、米ドル/円は上値を追いやすいと考える。
(出所:米国FXCM)
次はテクニカルの視点からであるが、2008年8月高値を起点としたレジスタンスラインをブレイクしたことは見逃せない。これにより、大型の「下落ウェッジ」のフォーメーションを上放れたことになるため、極めて重要である。
マーケットでは、これをトレンド転換のシグナルととらえる傾向が強く、米ドル/円の上値余地拡大の土台となるだろう。
上のチャートは昨年10月末に制作したものだが、米ドル/円は想定よりも早めに底打ちしたと言える。
また、チャートのように、2008年8月高値の110.68円を起点にした「下落ウェッジ」を上放れたことから、エリオット波動論に基づく各序列のE波も、昨年10月末安値の75円台前半で達成されたと修正せざるを得なくなった。
だが、ターゲットの85円台はそのまま有効であり、ゆえに、短期スパンにおける過熱感が解消された後、米ドル/円は再び高値トライを続けると見ている。
早ければ今年前半、理想としては4月末までに、従来の上値ターゲットである85円台に到達できるかもしれない。
■ユーロの切り返しはまだ2ヵ月足らずで、始まったばかり
続いて、ユーロ/米ドルを見てみよう、このコラムでも指摘し続けてきたが、性急なユーロ売りは避けるべきであった(「『問題児』ユーロの反発が続くワケは?切り返し一服との性急な判断は避けたい」など参照)。
ユーロの切り返しは1月13日(金)のいわゆる「S&Pショック」から始まっているが、それからの騰勢はまだ2ヵ月足らずである。
下のチャートをご覧いただければ、ユーロ売りが性急であったことが、おわかりいただけるだろう。
(出所:米国FXCM)
2008年秋の「リーマン・ショック」以降のユーロ相場を見ると、急落を経て反転した局面では、1年程度の反騰が続いている。
これに基づいて考えると、今回、1月13日(金)に始まったばかりのユーロの切り返しが、今の時点で終了するというのは、あまりにも短すぎる。
■膨らんだユーロ・ショートの解消には時間がかかる
また、上記の見方に加えて、次の2点も見逃せない。
まずは、マーケットの内部構造である。下に示したのは、IMMにおける先物ポジションとユーロ/米ドルの関係であるが、これをご覧いただけば、2010年6月当時よりもユーロ・ショート(売り持ち)がはるかに多く、そのポジション解消には時間がかかるということが、容易に推測できるだろう。
2010年のときは、半年かけてやっと解消することができた。それに対して今回は、仮に全部解消しないとしても、2ヵ月足らずの期間ではあまりにも短すぎる。
ゆえに、ユーロ圏が景気後退入りするとの観測がくすぶっているにも関わらず、ユーロ/米ドルは続伸できたのだ。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)