こういった下値ターゲットの予測自体は問題ない。しっかりしたテクニカルアナリシスの根拠があれば、基本的に達成する可能性は高くなると思う。
マーケットは何でもありだから、先入観をもって相場に臨むと痛い目にあうことは百も承知しているが、米ドル/円の上値ターゲット(そのほとんどが85円以上)を維持しながら、78円台、あるいはそれ以下の「調整」メドを見込む予測には違和感がある。
だから、先週の当コラムでは、以下の2点を指摘しておいた。
(1)米ドル/円の上昇トレンドは継続されており、早晩85円台を打診するだろう
(2)米ドル/円の調整余地はそう深くなく、一時的に80円の節目を割れることがあり得るものの、79円台前半以下までの深押しはなさそうだ。
実際に現時点での米ドル/円の値動きは、何となく筆者の指摘どおりに動いているように見えるのではないか。
(出所:米国FXCM)
4月16日(月)に、米ドル/円は80.29円の安値をもって調整を完了したように見え、これから同レベルを下回ってこなければ、メインシナリオであるブルトレンド(上昇トレンド)の継続や高値更新を見込めるだろう。
では、筆者はなぜ米ドル/円が79円台前半までの深押しがなさそうと判断したのか。
■エリオット波動論で今の米ドル/円相場を考える
この判断自体がどんな意味合いを持つかを説明するには、エリオット波動論の視点でみないといけない。それには、まずエリオット波動論の基礎知識から紹介しないと、わかりにくいと思うので、ここで少々その基礎知識について触れてみよう。
エリオット波動論の原理では、メインとなる上昇変動が5つの変動波によって構成されるとみなし、それぞれの変動波が1、2、3、4、5あるいはI、II、III、IV、Vといった数字によって記される。
上昇変動の場合、上昇方向と同じである第1、3、5波を推進波と位置づけ、第2、4波を調整波と位置づける。
【エリオット波動に関する参考記事】
●【09年予想】宮田直彦さんに聞く(2) ~エリオット波動の5波にあるドル/円~
●宮田直彦氏に聞く(1) 為替相場は歴史的な大転換点を迎えている!
そして、大事なのは以下の3つの原則があることだ。これなしではエリオット波動論は成り立たない。
(1)調整2波は推進1波のボトムを下回らない。
(2)推進3波は普通もっとも力強い上昇波となるが、そうでなくても推進波のうち、最短波にはならない。
(3)調整4波は推進1波の領域に入らない。
こういった理論にはじめて触れる方にはやや理解し難いところもあると思うが、まずはこれを鵜呑みにして、この3原則をチャートと照らしてみていただきたい。
そうすると、筆者が言う79円台前半より深押しがなさそうな真意を少しおわかりいただけるのではないかと思う。
(出所:米国FXCM)
■“スペイン危機云々によるユーロ下落論”を信じるな!
この部分に関する検証は次回も続くので、今回はこのあたりにとどめるが、注意していただきたいのは、米ドル/円の切り返しにより、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場も総じて底堅く展開していることだ。
英ポンド/円のように、英ポンド/米ドルの上昇につられて激しくリバウンドをみせた通貨ペアもある。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
しかし、こういった見方は一側面を示したにすぎず、逆の言い方もできる。
つまり、米ドル/円と同様、クロス円通貨ペアの反落が調整波であるなら、このあとは高値を更新していくことだろう。
この場合、たとえばユーロ/円の上昇は、米ドル/円だけでなく、ユーロ/米ドルが上昇するか、底堅く推移することなしには実現不可能であることも明白だ。
だから、巷にあふれる“スペイン危機云々によるユーロ下落論”とは距離を置くべきだ。この件の検証も含め、あとはまた来週のお楽しみに!
(4月20日(金) 13時20分 執筆)
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