■日銀の量的緩和は円安効果をもたらさず
今週(9月17日~)は、日銀の政策決定にマーケットの注目が集まっていたが、事前の予想と大差がなく、量的緩和の増額で欧米に追随し、「QE(量的緩和政策)合戦」に日銀も参加した。いや、参加せざるを得なかったという結果だった。
しかし、米ドル/円の動きからみると、効果は極めて限定的だった。
9月19日(水)は日銀決定が発表された後、一時79.22円まで上昇したものの、同日は陰線引け。翌9月20日(木)には78.02円まで続落した。
日銀の決定は少なくとも円安効果をもたらしていないことは確かである。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
理屈では、今回日銀が決定した10兆円規模の増額の金額自体は少なくないが、無制限な欧米の量的緩和策に比べると見劣りしてしまうのも確かである。
要するに、「有限」と「無限」の差を考えると、円売りよりも米ドル売り、ユーロ売りにつながりやすいからだ。
紙幣というものは刷れば刷るほど価値が下がっていくから、長い目でみれば、無制限と宣言し、実行する米ドルのほうが、より大きな下落余地があると思う。
■OMTが実行されない以上、ユーロ/ドルは上昇の余地あり
ECB(欧州中央銀行)が9月6日(木)にリリースしたOMT(国債買い入れプログラム)計画も、無制限な国債購入といった内容だったが、同計画自体の実施はEU(欧州連合)加盟国から救援要請が出ない限り、スタートされない。
そして、今のところ一番危惧されるスペインでさえECBに救援を要請する意欲が強くないので、今のところOMTは紙面上の計画に留まっている。
となると、実弾を打ち出したFRB(米連邦準備制度理事会)の量的緩和が「本物」として米ドルの価値を押し下げていくだろう。
この意味でも、ユーロ/米ドルの上昇は今のレベルにとどまらず、一段と高値余地を拡大する公算が大きいのではないかと思う。
■米ドル安の加速までにはタイムラグがある?
しかし、米国の過去2回の量的緩和と同様、政策の実施が直ちに米ドルを押し下げるというよりも、タイムラグがあってから米ドル安を加速させる可能性がある。
したがって、短期スパンにおける米ドルの暴落が続くという意味合いではないことに注意していただきたい。
下のドルインデックスチャートでは、QE1とQE2の実施開始日を示しており、量的緩和策がもたらした米ドル安効果は、かなりタイムラグをもって効いてきていることが一目瞭然だ。
(出所:米国FXCM)
したがって、米ドル安の一段進行は、もしかしたら来年(2013年)まで響いてくる可能性もあるのではないかと思う。
ところで、ドルインデックスは…
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