■衆議院解散がいったん円安のクライマックスになる可能性も
もちろん、相場はすべて前例に基づいて動いているわけではない。前例に届かずに終わることもあれば、さらに記録を更新し、次の「前提」を作ることもあり得る。ただし、今回の「悪い円安」が行きすぎる場合に備えて、前述の算出値を一応頭に入れておいたほうが良さそうだ。
とはいえ、懸念も大きい。
何しろ、本コラムで指摘してきたように、そもそも2012年史上最安値から米ドル/円はほぼ一本調子で上昇しており、途中10円超の反落もなかった。したがって、足元の116円の大台打診自体が、その激しさにおいて、1995年安値から1998年高値までの上昇波をすでに超えていると言える。
【参考記事】
●約40%上昇! 史上最大の上昇周期にある米ドル/円はすでに目標達成感たっぷり(2014年9月19日、陳満咲杜)
なぜなら、前回は、1997年4月高値から同6月安値まで16円超の調整もあり、今回の上昇波と明らかに違っていた側面もあったからだ。この意味では、足元の水準はすでにかなりオーバーボートの状態にあり、単純に移動平均線との乖離という視点のみで測れない側面も大きい。
言ってみれば、今回は日銀追加緩和に衆議院解散といった円安材料が重なり、すでに行きすぎた円安トレンドが再加速しているところだが、その継続性には警戒心を持った方がよいとも思う。
すでに「鮮度」が落ちたアベノミクスのように、円安の「鮮度」もそろそろ落ちてくるタイミングに差し掛かっているので、円安トレンドが「解散クライマックス」をもっていったん頭打ちとなる可能性も大きいと言えよう。
目先、円安トレンドに順張りしかできないが、あまり欲張らずに、短期勝負に徹したほうが良さそうだ。相場というものは、全員が強気になったところで反転するもので、今回は違うだろうといった発想や慢心は禁物である。
■ドルインデックスは目先、高値更新の可能性大だが…
さらに、米ドル/円はドルインデックスとの連動性を強めているから、米ドル全体の動向も重要になってくるだろう。
ドルインデックスは、目先は高値更新の可能性が高いものの、日足におけるオシレーター系指標が示す「弱気ダイバージェンス」の制約もあり、高値余地がガンガン拡大していくとは思わない。
(出所:米国FXCM)
クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)に関しては、しばらく米ドル/円に追随、高値圏での推移に留まるだろう。
■ユーロ/円の上値は145円台後半~146円台程度か
ただし、ユーロ/円が2013年年末高値に接近しているように、ここから大幅な上値余地があるかと聞かれると、やはり難しいと答えざるを得ない。
ユーロ/円の上昇ターゲットを大幅に引き上げていくには、ユーロ/米ドルの底打ち、さらに大幅な反騰を前提条件とするだけに、目先、2013年高値の145円台後半、せいぜい146円台の大台前後にターゲットは据え置いたほうが無難だろう。
(出所:米国FXCM)
とはいえ、ユーロ/米ドルは前述のドルインデックスの見通しと逆相関の関係にあるから、ユーロ/米ドルは近々安値更新の余地があるものの、いったん底打ちのタイミングが近づいていると思う。
その時が、米ドル/円のトップアウトに伴ったものになるかどうかがユーロ/円の動向を測るポイントとなるが、このあたりの話はまた次回。市況はいかに。
(PM2:30執筆)
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