■ドルインデックスは高値更新、ユーロ/米ドルは安値更新
前回のコラムの指摘どおり、ドルインデックスは高値更新し、ユーロ/米ドルは安値更新した。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルは近々安値更新か!? 従来の「買われすぎ」「売られすぎ」にこだわるな!(2015年2月27日、陳満咲杜)

(出所:米国FXCM)

(出所:米国FXCM)
ユーロ/米ドルは1.1ドルの心理的節目を割り込んだことで、市場関係者には早晩パリティ(1.0ドル)割れを果たすのではといったコンセンサスができつつあると聞く。
ドイツにおけるマイナス金利国債の発行が、ECB(欧州中央銀行)の量的緩和を象徴する出来事として注目される中、昨日(3月5日)はドラギECB総裁の話に新鮮味がなくても、ユーロは下げた。
たびたび指摘してきたように、ユーロ安の硬直化が鮮明となっており、単純にユーロショートポジションに偏っているといった理由だけでは、なかなかユーロ安トレンドを修正できない。ユーロの安値更新は自然の成り行きである。
■このまま一気にパリティ達成するか否かは見方がわかれる
ところで、バリティまでは約1000pips(米ドル/円にたとえると、10円程度)の値幅だが、ここからパリティ到達を一気に達成できるかどうかは見方がわかれるところだ。
2014年年末高値から2カ月ちょっとで、すでに1500pips超の下落幅を達成したから、本格的スピード調整なしでさらに1000pipsの下落はムリと思われる一方、ユーロ下落のモメンタムが強いゆえに、この程度の値幅はたやすく達成できるとも思われがちだ。
2014年5月高値から一貫して継続してきたユーロのベア(下落)トレンドに、調整らしい調整がほとんどなかったことから考えて、筆者はこのまま1.0ドルの節目を打診するのは、やはりムリがあるのではないかと思う。
(出所:米国FXCM)
下値の節目としては、2003年9月安値1.0760ドルや同3月安値の1.0500ドルなどが挙げられ、また、そのあたりをいったんの下値目標とすることが現実的ではないかとみる。いずれにせよ、ユーロ安自体は規定路線で進行速度の差しかないことは明白である。
となると、今年(2015年)の為替市場の基調がユーロ安と定められた以上、ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)の存在感が一段と大きくなるだろう。
なぜなら、米ドル高の受け皿として、ユーロが通常より大きな役割を果たしているから、ユーロと米ドル以外の通貨を比較することで、マーケットの基調が一段と鮮明に見られるに違いないからだ。
■ユーロ/円は想定より下落モメンタムが弱い
この意味では、米ドル/円のこれからの動向を、米ドルサイドのみでなく、ユーロサイドから考えることは一層重要になってくるだろう。
米ドル/円は再度120円の大台を打診しており、ユーロ安が進んでいるにもかかわらず米ドル/円が高値圏での推移をキープしていること自体、1つのシグナルだと読み取れる。

(出所:米国FXCM)
これは他ならぬ、ユーロ/円が想定より「強かった」ことが理由だ。ユーロ/円は反落波が継続されているが、ユーロ/米ドルの安値更新と対照的に、ユーロ/円はなお132円台(現執筆時点)を維持しているから、想定より下落モメンタムが弱いと言える。
(出所:米国FXCM)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
ユーロ/米ドルのレートと米ドル/円のレートを掛け算するとユーロ/円のレートを得られるから、ユーロ/円の「下げの鈍さ」から円サイドの状況がうかがえる。
ユーロ安が規定路線である以上、ユーロ/円の反落も当然の成り行きであるが、ユーロ/米ドルのスピードについていけなくなってきたら、要注意だ。
■ユーロ/円の早期安値更新の有無が重要なヒントとなる
言うまでもないが、ユーロ/米ドルの下落トレンドがしっかり維持される中で、ユーロ安・円高のモメンタムが継続して高まらない場合、それは米ドル/円の「大いなる保ち合い」の終焉、すなわち早期トレンドへの復帰を意味するほかあるまい。
ユーロ/円の早期安値更新の有無が、目先の相場を計る重要なヒントとなってこよう。
言い換えれば、ユーロ/円がつけた2015年年初来安値(130.74円)が近々更新された場合、米ドル/円は「大いなる保ち合い」を継続するか、場合によっては一段深押ししていく局面も想定されるだろう。
反面、下げ渋り、なかなか安値更新に至らず、場合によっては再度反騰してくる場合、米ドル/円のブル(上昇)トレンド復帰を想定する必要に迫られ、2014年高値を更新していくことも覚悟すべきだろう。この場合、早期(2015年前半)に124~125円の大台打診が視野に入ってくる。
本日(3月6日)の米雇用統計の発表が大きな変動をもたらすきっかけになり得るから、緊張感をもって相場に臨みたい。
当然のように、ユーロ安のトレンドがもっとも読みやすく、また規定路線であるから、仮に今晩(3月6日)の米雇用統計で芳しくない結果が出たとしても、ユーロ/米ドルのリバウンドは限定的で、米ドル/円の反落が大きくなると推測されやすいから、ユーロ/円がさらなる下落を進める公算は大きいだろう。
反面、米雇用統計が好調であれば、ユーロ/米ドルの一段安が想定されやすいが、このとき、米ドル/円がどれだけ上放れできるかはユーロ/円の値動きで測れる。したがって、今晩(3月6日)はユーロ/円の動向が一段と注目されよう。
■そのほかの通貨もユーロクロスの方がトレンドが把握できる
そのほかの通貨も同じ方式で、ユーロクロスで見たほうが、よりトレンドを把握できると思う。
ユーロ/英ポンドやユーロ/豪ドルのチャートに照らしてみれば、目先、ユーロ/米ドルのみ2015年年初来安値を更新したわけが理解できるし、また、ユーロ安トレンドの「深さ」に感心するだろう。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 日足)
2014年5月から始まった米ドルのメイントレンドが、一貫して明白かつ継続的に進んで来られたのは、もっとも大きなシェアを占めるユーロの役割がきわめて明白であったからだ。ゆえに、ユーロクロスを含め、ユーロの動向から目を離せない。市況はいかに。
(PM2:30執筆)
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