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固定相場制(ペッグ制)が招いた悲劇!?
香港ドルなどの取扱い停止はなぜ増えた?

2015年04月06日(月)14:33公開 (2015年04月06日(月)14:33更新)
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■香港ドルやシンガポールドルの取扱い停止が相次ぐ!?

 2015年1月下旬のスイスショック以降、一部マイナー通貨が絡んだペアについて、FX会社各社から、取扱い停止の案内が相次いで出されています。ざっと挙げると以下のとおり。

取扱い停止通貨ペア一覧

香港ドルやシンガポールドル、ノルウェークローネ、スウェーデンクローナと米ドルや円との通貨ペアが、取扱い停止の対象となっていますね。

外為どっとコム[外貨ネクストネオ]では、香港ドル/円の1通貨ペアについて新規注文を停止、YJFX![C-NEX]では、香港ドル/円と米ドル/香港ドルの2通貨ペアが取扱い停止に。ついでに、YJFX![C-NEX]では、4月4日(土)から、NZドル/円とNZドル/米ドルが新たに取扱い通貨ペアに追加される予定です。

FXCMジャパン証券では、香港ドル/円に加え、シンガポールドルやノルウェークローネなどの通貨ペア、全5通貨ペアが4月10日(金)をもって取扱い停止となります。なお、FXCMジャパン証券の元親会社である米FXCMでは、このほかにもグループ全体として、チェコヘルナ(CZK)やポーランドズロチ(PLN)、イスラエルシュケル(ILS)など、複数のマイナー通貨が絡む全13通貨ペアの取扱い停止を発表しています。

スイスフラン絡みの通貨ペアについては、原則固定スプレッドの適用外や取扱いが一時休止にされているケースも見られると、以前当コーナーでもお伝えしたとおりですが、それ以外の通貨ペアでも取扱い停止が相次いでいるなんて、いったいどういうことなのでしょうか?

 実は、これら取扱い停止となったシンガポールドルや香港ドルとスイスフランには、通貨管理制度を巡って、「ある共通点」があるのです。さっそく詳しく見ていきましょう。

 以下は、『通貨経済学入門【第2版】』(宿輪 純一著、日本経済新聞出版社)や日本貿易振興機構(ジェトロ)ウェブサイト、各種金融機関レポートなどを参考にさせていただき、執筆しています。

■共通点は通貨管理制度? どんな通貨管理制度があるの?

 「ある共通点」というのは、内容は各国事情によって異なるものの、大きく見ると、「固定相場制(ペッグ制)」、あるいは「管理変動相場制(管理フロート制)」という当局の為替介入を前提とする通貨管理制度がとられているという点です。

 ん? 「固定相場制(ペッグ制)」? 「管理変動相場制(管理フロート制)」? なんだか小難しい話になってきましたので、1つずつ整理しながら話を進めていきたいと思います。

 現在世界には、大きく分けて、マーケットの自由度が高い順に、「自由変動相場制(フロート制)」、「管理変動相場制(管理フロート制)」、「固定相場制(ペッグ制)」の3種類の通貨管理制度があります。

「フロート」は直訳すると「浮く」、「ペッグ」は「釘(くぎ)」という意味。もともとの意味を確認すると、なんとなく、それぞれどんな制度なのかが想像できるかもしれませんね。

 各制度の概要は、以下のとおりです。

 「自由変動相場制(フロート制)」は、私たちが普段見ている米ドル/円やユーロ/円といった為替相場を想像していただければそれで良いのでOK。上がったり下がったり、需給関係によって刻一刻と自由に変化していきます。ですが、「管理変動相場制(管理フロート制)」や「固定相場制(ペッグ制)」については、なかなかピンと来ませんね…。

 先ほど紹介した『通貨経済学入門【第2版】』(宿輪 純一著、日本経済新聞出版社)によると、IMFが2014年に世界191カ国・地域の通貨制度を調べたところ、自由変動相場制(フロート制)は、「日米欧など先進国を中心に65カ国地域」「世界での比率は34%にとどまる」そうです。

 固定相場制(ペッグ制)は、「香港など25カ国・地域」で、管理変動相場制(管理フロート制)は、「36カ国」となっているそう。世界的な規模でみると、意外と固定相場制(ペッグ制)や管理変動相場制(管理フロート制)を採用している国や地域が多いということがわかります。

■「固定相場制」や「管理変動相場制」にはいろんな手法が!

 具体例に入る前に、「管理変動相場制(管理フロート制)」や「固定相場制(ペッグ制)」について、もう少し掘り下げておきましょう。「管理変動相場制(管理フロート制)」や「固定相場制(ペッグ制)」には、そうした管理制度を実現するための、手法(手法という言葉が正しいかどうか不明ですが、便宜上ここでは手法として分類)がいくつか存在します。

「管理変動相場制(管理フロート制)」自体、ちょっと緩めの固定相場制なんじゃないの? と思える制度ですので、明確に分類することが難しいのですが、以下では、「管理変動相場制(管理フロート制)」や「固定相場制(ペッグ制)」の手法として有名なものをピックアップしました。あわせてその通貨管理制度を採用している国の通貨名も記載しています。

 100%以下の分類が正解! と言い切れないところが心苦しいのですが、あくまで参考程度にご覧いただければと思います。

■固定相場制(ペッグ)制って?

 まずは、「固定相場制(ペッグ制)」から見ていきましょう。「固定相場制(ペッグ制)」を見るうえでポイントとなるのは、「為替レートがどのくらい動くのか」という点と、「ペッグ先の通貨は何なのか」という点

 もっともオーソドックスな「固定相場制(ペッグ制)」は、単一の通貨に対して為替レートをほぼ固定する「単一通貨のペッグ制」。基軸通貨やそれに準ずる強い通貨に対して、ペッグされます。

 ペッグ先の通貨として挙がるのは、米ドルやユーロ。「ドルペッグ」や「ユーロペッグ」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

 2015年現在、この制度を採用しているのは、デンマーククローネ(ユーロペッグ)など。あとで詳しく記載しますが、スイスショックを引き起こしたスイスフランも、2015年1月までは一時期、ユーロペッグを採用していました。

■日本も昔は1米ドル=360円でペッグされていた

 もともと「固定相場制(ペッグ制)」は、経済力の小さな国が自国の主な貿易相手国とのやりとりを為替レートをペッグすることで円滑に進め、経済を安定させるために用いることが多い制度。日本でもブレトンウッズ体制(※)の下、第二次世界大戦後の1949年~1973年までの間は、「ドルペッグ制)」が採用されていました。

(※「ブレトンウッズ体制」とは、第二次世界大戦後、世界経済を安定化させるために米ブレトンウッズで開かれた会議で確立した国際通貨体制のこと。ここでIMF(国際通貨基金)などの設立が取り決められるとともに、金1オンス=35米ドルと定め、米ドルを世界の基軸通貨として、他の国の通貨との間で「固定相場制(ドルペッグ)」をとることが決められた。途中、米ドルの切り下げなどの変更が行われたが、ドルペッグ自体は、1973年まで続いた)

 長く続いた「1米ドル=360円」という時代を記憶されている方も、いらっしゃるのではないでしょうか? 日本の場合は、1973年に「自由変動相場制(フロート制)」へ移行してからは、2015年現在に至るまで、何度か日銀による一時的な介入はあったものの、以来ずっと「自由変動相場制(フロート制)」が採用されています。

【参考記事】
76.25円=ドル円の史上最安値はウソ!?(2)日本でハイパーインフレが起きた理由

■香港ドルの通貨管理制度は最強って本当!?

 また、もっとも強力な通貨管理制度と言われる「カレンシーボード制」も「固定相場制(ペッグ制)」の1つです。

 これは、単一の通貨(米ドルなどの強い通貨)にペッグした上で、さらにペッグした通貨の外貨準備高にあわせて自国通貨の発行量を調整するというもの。

 こうすることで、万が一、投機筋に自国通貨が売り叩かれるようなことがあっても、それに完全に対抗できるだけの外貨準備高が常に蓄えられているため、理論上、投機的な動きに翻弄されることなく、為替レートを安定的に維持することができると言われています(※)

 過去にはアイルランドなどで採用されていましたが、現在は、香港ドルなどで採用されているのが有名。香港では、米ドルにペッグされています。

(※ただし、過去にはアルゼンチンのように、カレンシボード制を採用していながら、ドルペッグ制が崩壊した例もあります)

 以下の米ドル/香港ドル過去14年分のチャートを見てみると、香港ドルは米ドルにペッグされているのは一目瞭然。あきらかに人為的に管理された値動きであることがおわかりいただけます。

米ドル/香港ドルチャート 月足(クリックで拡大)

(出所:CQG)

 過去14年間を振り返っても、おおむね変動幅は、1%以内。期間によっては0.3%前後で推移している状況です。だいたい7.7香港ドル後半から7.8香港ドル台前半にスッポリとおさまっていますね。

 ちなみに、同じ2001年~2015年にかけての米ドル/円の動きを見ると、上は2002年につけた135円台、下は2011年につけた75.60円あたりで、14年間の変動率をざっと計算すると、40%以上…。比べると、米ドル/香港ドルの値動きが、いかに小さいのかがよくわかります。

 香港金融管理局(香港の中央銀行に相当する機関)は、香港ドルの対米ドルでの値動きに、一定の許容変動幅を設けており、為替レートはおおむねその範囲内で推移している状況なのです。

 これまで、許容変動幅の範囲を超えそうになると、香港金融管理局は、自国の通貨管理制度を維持するため、ものすごい勢いで介入してきました。最近だと2014年の夏にも、大規模な米ドル買い・香港ドル売り介入が行われています。

 「カレンシーボード制」は、先ほど紹介した「単一通貨のペッグ制」に加え、自国通貨の発行量を外貨準備高に連動させることで、相場をより強力に管理することができる手法と言えますね。

■中国やシンガポールで採用されている管理変動相場制

 「固定相場制(ペッグ制)」の代表例を確認したところで、次に、「管理変動相場制(管理フロート制)」について見ていきましょう。

 「管理変動相場制(管理フロート制)」は、「固定相場制(ペッグ制)」と「自由変動相場制(フロート制)」の間に位置する制度で、当局による一定の規制の範囲内であれば、ある程度、自由に為替レートが変動するものです。

 代表的なものだと、「通貨バスケット制(バスケットペッグ制)」と呼ばれるものがあります。これは、複数の国の通貨の為替レートを貿易量を元に加重平均し、仮想レートを算出したうえで、その仮想レートに対して、自国通貨をペッグさせるというもの。

 完全なペッグではなく、一定の許容変動幅が設けられていることが多いようです。2015年現在、シンガポールや中国で採用されています。

 しかし、この手法は、複数の国の通貨が入れられた「通貨バスケット」の各通貨の比率が非公開となっているケースが多く、先ほど紹介した「単一通貨のペッグ制」や「カレンシーボード制」に比べると、やや不透明感が漂うのが難点とされています。

 ただ、そうは言っても、やはり通貨バスケット内の通貨比率は、米ドルが一番高いだろうと言われているのが実情らしい…。ちょっと米ドル/シンガポールドルのチャートを見てみましょう。

米ドル/シンガポールドル 月足

(CQG)

 最近は、少し米ドルに対してシンガポールドルが下落していますが、シンガポールでは、通貨バスケットに対して、緩やかなシンガポールドル高を許容するとの方針を示しており、対米ドルでも長期で見ると、大きくシンガポールドル高が進んでいるのがわかります。

■米ドル/円の動きとそっくりな対円チャート!?

 そして、対円の値動きについては、米ドル/円もシンガポールドル/円も似たような動きになるというのは、以前、ザイスポFX!のコーナーでお伝えしたとおり。

米ドル/円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足

シンガポールドル/円 週足

 

 ついでに、香港ドル/円チャートも見てみると、こちらも似たような動きをしていることがわかります。

香港ドル/円 週足

 

 むしろ、米ドル/円と動きが似ているという点では、シンガポールドル/円よりも香港ドル/円の方が似ているような感じがしませんか?

 最近の動きをよ~く見てみると、シンガポールドル/円と香港ドル/円の動きは、少し違ってきています。香港ドル/円は、依然強い右肩上がりを維持している感じですが、シンガポールドル/円は、やや上値が重たい雰囲気…。

 シンガポールドルは、「通貨バスケット制(バスケットペッグ制)」を採用していますので、シンガポールドルに対して相場を管理する通貨は米ドルがメインとしても米ドルだけではないはず。通貨バスケットの中にはユーロもある程度以上、入っていると考えられます。

 したがって、ここ最近のユーロ下落の影響を受けて、シンガポールドルは対円でも下落基調になった可能性が考えられそうです。

ユーロVS世界の通貨 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 週足

■香港ドル/円の方が、より米ドル/円の動きと似ている!?

 一方、「カレンシーボード制」でドルペッグを採用している香港ドルでは、ユーロの状況はまったく関係ありません。だから、シンガポールドル/円よりも、香港ドル/円の方が、より米ドル/円の動きと似ているのではないでしょうか。

米ドル/円、シンガポールドル/円・香港ドル/円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足

 このように、通貨管理制度を知っておくと、各通貨の方向性を把握しやすく、トレードにも活かせそうですよ。

■バンド制やクローリングペッグ制と呼ばれる手法

 このほか、「管理変動相場制(管理フロート制)」に関連して紹介しておきたいのが、「バンド制」と「クローリングペッグ制」という通貨の管理手法。

 中国やシンガポールでも、為替レートに一定の許容変動幅を設けているという点では、一種の「バンド制」が採用されているとみることもできそうですので、「管理変動相場制(管理フロート制)」の手法の1つ、という位置づけなのかもしれませんが…。こういう手法もあるのか、ということでご認識いただければと思います。

 ちなみに、「クローリングペッグ制」については、かつてブラジルやコロンビアなどで採用されていた手法だそうですよ。

■通貨管理制度は変化したり、ミックスされたりしている

 ということで、ご紹介したとおり、さまざまな通貨管理制度がありますが、各国でずうーっと同じ制度が採用され続けるというワケではなく、その時々の経済事情に応じて、変化するのが通常です。

 たとえば、中国などは、その時々の事情に応じて、「固定相場制(ペッグ制)」と「管理変動相場制(管理フロート制)」を入れ替えながら通貨を管理しています。

 2008年のリーマンショック以降は、実質的に「固定相場制(ペッグ制)」状態でしたが、2010年に再び「管理変動相場制(管理フロート制)」へ移行され、2015年現在も同様の制度がとられていますよ。

米ドル/中国人民元 月足チャート

(CQG)

 2008年からの数年間は、ほぼ横一線のチャートが描かれているのがわかりますね…。

 このほか、さまざまな手法を組み合わせて通貨を管理しているケースもあったり、謳っている制度と実際上の制度には、若干のギャップがあるんじゃないの? という状況もしばしば…。

 また、「自由変動相場制(フロート制)」が採用されている国でも、何かあれば当局による為替介入が実施されるワケで、完全に放置するというワケではありません。

 そういう意味で、「この国の通貨は、この通貨管理制度」と、すべての国について完全に分類するのは、ちょっと難しいのかなぁというのが、正直な感想です…。

■ユーロ/スイスフランは1.2フラン水準でペッグしていた

 さて、「完全に分類するのは難しい」とは言いつつ、ここまで世界の通貨管理体制についてざっとお伝えし、概要は押さえていただけたかと思いますので、次に進みたいと思います。

 では、いったいなぜ、「固定相場制(ペッグ制)」、あるいは「管理変動相場制(管理フロート制)」の通貨、シンガポールドルや香港ドルについて、FXCMジャパン証券外為どっとコム[外貨ネクストネオ]YJFX![C-NEX]は、取扱いを停止したのでしょうか?

 理由は、2015年1月に起きたスイスショックを振り返ることで明らかになりそうです。

 スイスフランの場合は、2011年9月に、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])が「ユーロペッグ制(ユーロとの為替レートを固定する制度)」を導入。その内容は、スイスフランの対ユーロでの下限レートを1.2フラン水準までに食い止めるというものでした。

【参考記事】
為替介入で大暴落したスイスフラン! 大損失を被った個人トレーダーも!?

 これは、上限レートに制限はなく、下限レートに対してのみ行われた限定的なペッグでしたが、SNBは、ユーロ/スイスフランが1.2フラン水準に近づくと、無制限に為替介入(ユーロ買い・スイスフラン売り)するゾ! と宣言。その甲斐あって、実際、2011年9月以降、ユーロ/スイスフランは、おおむね安定して1.2フラン水準より上で推移していました。

ユーロ/スイスフラン 月足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 月足

 ところが、2014年後半にかけては、かねてからのユーロ圏全体の信用不安に加え、ECB(欧州中央銀行)をはじめ欧州各国による金融緩和やロシア・ウクライナ情勢への懸念などから、リスク回避先通貨としてスイスフランの需要が高まり、スイスフランが買われやすい状況に…。

 さらに、ECBが半ば容認するような恰好で、マーケット全体でユーロ安が進む中、ユーロ/スイスフランも、少しずつ1.2フラン水準に近づいていました。

 当時は、ユーロ/スイスフランが1.2フラン水準に近づいている…。SNBは、またユーロ買い・スイスフラン売りの為替介入を行うのか!? と、その動向が注目されていましたね。

【参考記事】
スイス中銀の防衛ライン1.2フランに超接近! ユーロ/スイスフランはなぜ下落している?
【警戒】スイス中銀の防衛ラインに接近! ユーロ/スイスフランを取引できる口座は?

■突然の防衛ライン撤廃で、大大大大大混乱に…!

 そして迎えた2015年1月15日(木)、SNBは突然、1.2フランの防衛ライン撤廃を宣言。これを受けて、わずか数十分の間にユーロ/スイスフランは、1.2フラン付近から0.82フラン付近まで約3800pipsも暴落しました。

【参考記事】
ユーロ/スイスフランが約3800pips大暴落! スイス中銀が防衛ラインの撤廃を発表!

ユーロ/スイスフラン 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 日足

 1.2フランの防衛ライン撤廃の理由をSNBは、「スイスフランの割高感は全体としては小さくなった」からとしていますが、実際のところは、これ以上ユーロ買い・スイスフラン売りの介入を続けるのは、困難だったのでは? との声も聞かれます…。ちなみに、SNBは、この時、中銀預金金利をマイナス0.25%からマイナス0.75%に引き下げることも発表しました。

 本来、需給関係によって自由に決まる為替レートを為替介入で強引に管理する「固定相場制(ペッグ制)」には、メリットもあれば、それ相応のリスクもあるということなのかもしれません…。

 ユーロ/スイスフランが暴落した際の状況は、ザイFX!でも、これまでにもいくつも記事を公開したとおり。その瞬間、インターバンクではプライスが消え、結果、トレーダーは大量のロスカットに見舞われ、FX会社では未収金が発生し、破綻するFX会社まで出るという大混乱になりました。

【参考記事】
為替介入で大暴落したスイスフラン! 大損失を被った個人トレーダーも!?
プライスが消えた…。現役インターバンクディーラーが語ったスイスショックの瞬間

■ペッグ制が外れると大きな為替変動が! 危ない通貨は?

 つまり、SNBが行った無制限介入のように、過度な為替介入を実施することで無理やりペッグされた通貨は、金融当局の政策が突如変更され、そのペッグが外されると、短時間のうちに、とてつもなく大きな為替変動を引き起こしてしまう可能性があるということが、スイスショックを経て、改めて浮き彫りになったワケです。

 これは、めちゃくちゃ大きなリスクですよね…? スイスフランと同じような通貨管理制度が採用されている通貨に関して、FX会社が警戒するのもうなずけます。

取扱い停止通貨ペア一覧・再掲載

 米FXCM自体、すでに融資が行われ、倒産の危機は免れたものの、スイスショックによる顧客の未回収金は、2億2500万ドル(1米ドル=120円で換算すると270億円相当)と発表しており、これ以上、目に見えて想定できるリスクを抱えた通貨を取扱い通貨ペアのラインナップに並べておくことができなかったのではないかと想像できます…。

 そして、元親会社の意向を受けてか、FXCMジャパン証券も5通貨ペアの取扱いを停止することとなりました。

 ただ、FXCMジャパン証券が取扱いを停止することにした5通貨ペアのうち、ノルウェークローネなどについては、「固定相場制(ペッグ制)」でも「管理変動相場制(管理フロート制)」でもなく、「自由変動相場制(フロート制)」ですので、ペッグが外れた場合を想定しての取扱い停止ではなく、何か異なった事情があると思われます。

■外為どっとコムも香港ドルのペッグ廃止を意識

外為どっとコム[外貨ネクストネオ]は、スイスショックの余波が残る中、「かねてより対米ドルペッグ制廃止の可能性がささやかれて」いる香港ドルについて、もし廃止の決定がなされた場合、「マーケットでの著しい流動性低下に伴い当社取引レートをお客様へ安定的に提供することが困難となる見通しである」として、投資家保護の観点から、香港ドル/円の新規注文を停止したとのこと。

 まとめると、やはり、ペッグ制が外れた時のリスクを回避するために、香港ドルの取扱いを停止したということがウェブサイトに書かれています。

外為どっとコムのウェブサイト

YJFX![C-NEX]については、香港ドル絡みの2通貨ペアの取扱い停止について、「香港ドルの流動性が著しく乏しいため、投資家保護の観点から」と発表しており、香港ドルが「固定相場制(ペッグ制)」の一種である「カレンシーボード制」であるという点には触れていませんが、このタイミングで…。というところを考えると、同様のリスクを意識して通貨ペアの取扱い停止に踏み切ったのではないかと想像できます。

■固定相場制や管理変動相場制の通貨のトレード

 なんだか、ただただ怖い印象が残る「固定相場制(ペッグ制)」や「管理変動相場制(管理フロート制)」の通貨ですが、ただ怖い制度、というワケではありません。

 実際、暴落したユーロ/スイスフランについても、SNBが1.2フランの防衛ラインを死守すると宣言して以降は、「防衛ラインに近づくと為替介入が行われる」ということを前提に、1.2フラン近辺でユーロ/スイスフランを買うという戦略で利益を上げることができた時期もありました。

 また、「管理変動相場制(管理フロート制)」の「バンド制」が導入されている通貨であれば、そのバンド内でトレードし、利益を狙うことも可能ではあります。

 さまざまな分析手法はあるものの、「自由変動相場制(フロート制)」においては、為替レートの先行きを読むのが難しいのに対して、「管理変動相場制(管理フロート制)」や「固定相場制(ペッグ制)」が採用されている通貨については、ある程度、「こうなったらこうなるだろう」ということを予想してトレードに臨むことができるのも事実です。

 ただし、そうした通貨のトレードをする際は、スイスショックの際、SNBが突如、ユーロペッグを外したことで、大混乱に陥ったように、何か起きると、ほぼ間違いなく大きな混乱に巻き込まれるという点を覚悟して、ポジションを保有するということが前提になりそう…。

 何より、マイナー通貨をトレードする際には、その通貨がどんな通貨管理体制を採用しているのかをきちんと把握したうえで、ポジションを持つことをおすすめしたいと思います。

 ノーリスクの為替トレードは存在しませんが、どんな通貨ペアでどんなスタイルのトレードをするにしても、できる限りの情報を集め、リスクを認識したうえでトレードに臨み、願わくばコンスタントに利益を得られるトレーダーになっていきたいですね。

(ザイFX!編集部・向井友代)

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