■ギリシャ国民は緊縮策に「ノー」
ギリシャ国民投票は驚きの結果になった。
2015年7月5日(日)に、ギリシャの緊縮財政策の是非を問う国民投票が実施され、「反対」が61.31%となり、「賛成」の38.69%を大きく上回った。
【参考記事】
●土曜日の会合でギリシャ支援延長ならず! ギリシャ破綻なら、ユーロ相場はどう動く?
●ギリシャが資本規制導入、銀行は休業!週明けの為替はユーロ全面安+円全面高!
これは、ギリシャ国民が、欧州委員会とECB(欧州中央銀行)、IMF(国際通貨基金)からなる国際債権団が示していた、緊縮財政策に「ノー」を突きつけた格好だ。これで、ギリシャのユーロ圏離脱の可能性が一気に高まった。
国民投票前の世論調査などでは、「反対」と「賛成」が拮抗しているとも伝えられていた。また、市場では、いろいろあっても最終的には「賛成」になるとの見方が優勢だったようだ。そのため、この結果はかなりのサプライズとなり、週明けの為替市場では、ユーロが急落した。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 1時間足)
ギリシャのチプラス首相は「民主主義が勝利した」と勝利宣言し、国民投票の結果を受けて、民意を盾に、今後の国際債権団との支援協議に臨むとしている。
7月7日(火)には、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領の呼びかけにより、ユーロ圏首脳会議が開催されるが、支援に応じる可能性は低いというのが市場のコンセンサスとなっており、ギリシャの置かれている状況は引き続き厳しい。
■ECBからの資金供給が停止される可能性も
そして、今回のギリシャ国民投票の結果を受けて注目したいのが、ECBによるELA(ギリシャ向け緊急流動性支援)が継続するのかという点だ。
ギリシャは6月30日(火)に、IMF(国際通貨基金)への債務返済をすることができず、債務不履行(デフォルト)状態になっているが、さらに、7月20日(月)には、ECB保有の国債の償還を控えている。
【参考記事】
●ギリシャが資本規制導入、銀行は休業!週明けの為替はユーロ全面安+円全面高!
ECBは、先の6月27日(土)のユーロ圏財務相会合で支援協議が決裂したことを受けて、6月28日(日)に、ELAの増額見送りを決定していたが、国債償還の支払いをギリシャができないということになると、ELAそのものが停止される可能性がある。
ギリシャの銀行はELAによる資金供給によって、資金繰りを支えてもらっている。仮に、それが停止されると、銀行の資金が枯渇して、破綻という最悪のシナリオが一気に現実味を増すということになるのだ。
チプラス首相は、銀行からの預金引き出し制限などの資本規制をできるだけ早く終わらせる意向を示してはいるが、その道のりはあまりにも険しそうだ。
■ユーロ全面安だが、下落幅は限定的
ここからは、ギリシャ国民投票の結果を受けた為替相場の動きを見ていこう。
ユーロ/米ドルは、先週末(6月26日)は、1.11ドル台前半で取引を終えていたが、週末のギリシャ国民投票の結果を受けて、週明けの為替市場では、大きく窓を開け、一時、1.0970ドル台まで急落した。ただ、その後は反発に転じている。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 30分足)
ユーロ/円も大きな下窓を開け、一時、133.86円台まで、先週末の終値、136円台前半から、2円強下落したものの、その後は、135円の大台を回復し、窓を埋めつつある格好となっている。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 30分足)
このように、主要通貨に対してユーロは下落し、ユーロ全面安となったが、国民投票の結果がサプライズで、ギリシャのユーロ圏離脱の可能性がさらに高まったわりには、ユーロの下落幅は限定的なものに留まったという印象だ。
ただ、7月20日(月)のECBの国債償還を控える中、楽観視できるような状況でもなさそうなので、今後の支援協議の行方を見守りながら、ギリシャのユーロ離脱の可能性を含め、さまざまなパターンを想定しながらトレードする必要がありそうだ。資金管理はしっかりしておきたい。
また、月曜朝は日本時間午前7時ぐらいから取引が開始されるFX会社が多いが、中には日本時間午前3時(夏時間:午前4時)から取引できるFX会社もある。今回のように週末に大イベントがあったときは、このようなFX会社の口座も役に立つだろう。
【参考記事】
●月曜日の窓埋めトレードを狙ってひと儲け! 午前3時からトレードすればニ度オイシイ…!?
(ザイFX!編集部・庄司正高)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)