■米ドル高トレンド定着ならず、その原因は?
米ドル高トレンドが定着したかと思いきや、米ドル全体の上昇モメンタムが低下し、昨日(11月12日)はドルインデックスが下落してきた。

(出所:CQG)
米ドルロング筋の苛立ちを刺激する市況になっていると言ってもおかしくなかろう。
何しろ、金融政策の相違に基づくユーロ売りといった「鉄板トレード」が1.07ドルの節目に拒まれたようにみえるからだ。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
昨日(11月12日)、ドイツなど主要国の株価指数は軒並み1%を超えて下落、NYダウは1.4%安で約1カ月半ぶりの下落幅を記録した。

(出所:CQG)

(出所:CQG)
これは原油先物相場をはじめ、金、銅など商品相場の大波乱がエネルギー関連大手企業業績への懸念を強め、株価指数を押し下げた側面が指摘できるだろう。また、FRB(米連邦準備制度理事会)幹部のハト派発言が相次ぐ中、株式相場が改めて2015年年内利上げの可能性に反応したとも解釈される。

(出所:CQG)
となると、目下の米ドルの伸び悩みは自然の成り行きかと思われる。何しろ、利上げ観測が株売りをもたらし、株安に伴うリスクオフがユーロ買い・円買いにつながるといった構造は、いつか来た道でもある。
■米ドル高の行方を相場のシグナルから推測
ドルインデックスについては8月相場の大混乱の前例もあるが、果たして今回の米ドル高も短命に終わるのだろうか。
相場のことを相場に聞くなら、あれこれ考えるより、相場自体のシグナルを観察した方がよほど効果的であろう。
結論を先に言うと、現在、相場が発したシグナルを見る限り、今回の米ドル高は「ホンモノ」の可能性が高まっており、3月高値を再打診するまで、試練を受けながらも、8月のような大反落は回避できるのではと思う。
換言すれば、これから商品相場の反乱や株安局面が引き続き想定されるが、これらの試練を乗り越えてこそ、ホンモノの米ドル高と言えるので、ドルインデックスのシグナルを丹念に点検しておきたい。
3月高値からドルインデックスは頭打ちとなり、反落して、大型保ち合いを形成した。

(出所:CQG)
この保ち合いのフォーメーションはチャート上に表示されているとおり、シンメトリカル・トライアングルと見なす場合、8月24日(月)の週の週足が「邪魔」になってくる。何が邪魔かというと、やはり、その長い「ヒゲ」、つまり週足の実体部分を除いた値幅の部分だ。これがトライアングルの「枠」からはみだしているのである。
■8月24日の週足=フォールス・ブレイクアウト
当然のように、8月24日(月)の週以降の8~9週間の値動きもその一部に入るから、シンメトリカル・トライアングルの規定自体、事後的である。とはいえ、事後的でもよいから、同トライアングルの成立やその上放れが米ドル高になる見込みを証左しているなら、検証が遅すぎることはない。
より具体的に見ると、邪魔になっている8月24日(月)の週の週足自体がプライスアクション(PA)で言うと、「フォールス・ブレイクアウト」(詳細は拙作『FXプライスアクション 成功の真実』をご参照)のシグナルに当たり、その分、特別な存在になっていた。

(出所:CQG)
フォールスとはダマシのこと。ブレイクアウトがダマシであったというシグナルの名に照らすと、要するに「重要な水準をいったんブレイクしたものの、結局その後、続かず、かえって逆方向への値動きが招かれた」という意味合いだ。当然のように、重要な水準とは参照されやすい過去の高値・安値を指す。
ドルインデックスの場合、もっとも参照され、また、重要な意味を持つのが6月安値であろう。8月24日(月)の安値は、同安値をいったん割り込んだものの、当週の終値は高く引けたので、その下放れがダマシであったことが示唆されていた。
さらに、事後的になるが、トライアングル内に収まったことで、フォーメーションの継続のみでなく、その後の上放れを暗示していたと言える。
■「ダマシ」ほど重要なシグナルはない
もちろん、こういった見方は、足元の値動きから考えてすでに後の祭りに見えるが、ここで強調したいのは、トライアングルの上放れがもたらした米ドル高がホンモノの可能性が高いということであり、出遅れたかどうかは別問題である。
PAの視点から見れば、8月24日(月)の週の週足がいったん「ダマシ」のサインを点灯していたからこそ、大型保ち合いの上放れがホンモノである見込みが高く、また、上値トライのモメンタムも維持できるだろうと思われるのだ。
フォールスとは「ダマシ」のことであるが、このように、重要な高値・安値水準に対する一時の切り込みのみでなく、フォーメーションに対するダマシ的なブレイクも後にシグナルとして重宝される。
ダマシほど重要なシグナルはない、と言われるから、今回の米ドル高構造の裏づけとして重視したい。
■ドルインデックスは3月高値打診の可能性、米ドル/円は…
となると、足元で米ドル高は再度頭打ちになっているように見え、また、株式や商品市場の動向で再度、米ドルは売られる可能性もあるが、構造的に米ドルはブル(上昇)トレンドを維持する公算が高い。相場があらゆるファンダメンタルズを織り込む形で先行しているなら、少なくとも3月高値の再打診が有力視されるだろう。
ただし、金融政策の相違から見ると、ユーロがもっとも売られやすく、また、米ドル高の受け皿としての役割を果たしていく公算が大きいから、ユーロ安がユーロ/円相場を通じて、米ドル/円の頭を押さえ込む可能性も無視できない。
ユーロ/米ドルが早晩3月安値の1.0462ドルをトライしていくなら、ユーロ/円は最大126円の節目(4月安値前後)打診も想定されるから、米ドル/円の高値更新は、逆に難しいかと思われる。

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この辺の検証、また次回に。
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