■米国が9年半ぶりに利上げを実施!
みなさん、こんにちは。
日本時間12月17日(木)未明に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、予想どおり、0.25%の利上げが決定され、FF金利のターゲットは0.25-0.50%に引き上げられました。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 各国政策金利の推移)
FOMC後に公表された声明では、FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレンFRB議長が今後の利上げが段階的かつ小幅になると示唆。
この声明が多くの投資家に好感され、12月17日(木)の東京市場では、本稿執筆時点で日経平均は340円高、米ドル/円は、一時、122.65円まで反発しています。

(出所:株マップ.com)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
今年(2015年)最後のビッグイベントである、FOMCでの利上げが無事達成されたことで、株式相場が反発。呼応して米ドル上昇という流れであるわけですが、その上昇幅は小幅なものに…。
■FOMCより、ECB理事会のほうがインパクトを与えた
これは、12月3日(木)のECB(欧州中央銀行)理事会を受けての相場の逆流がまだ根底にあるからだと思われます。
【参考記事】
●米利上げは100%織り込んだ! 注目は…!? ドル/円120円割れは日銀にとって好都合?(12月15日、西原宏一&松崎美子)
ECB理事会で決定された追加緩和が想定以下であったため、それ以降、流れが反転しており、「株安、ユーロ高、米ドル安、円高、資源国通貨高」という相場展開が続いていました。
それが、今回のFOMCの結果を受け、リスクオン相場に戻りつつあるのですが、ユーロ/米ドルの下落も1.08ドル台前半までと限定的。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 1時間足)
原油も依然軟調な展開で、12月16日(水)の原油相場は、米原油在庫がこの時期としては1930年以来の高水準に増加したことをきっかけに大幅下落。

(出所:CQG)
米ドル/円は122円台ミドルまで戻した程度で上昇幅は小幅…。

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イエレンFRB議長は慎重に言葉を選び、9年半ぶりの米利上げが、株や新興国通貨の下落に結びつかないようにしたことは高く評価されているのですが、FOMCが決定したのは緩和ではなく、利上げであるため、株の継続的な上昇には直接つながりません。
一方、今回の利上げ開始は、マーケットが十分織り込んでいたため、米ドルの急騰につながるわけではありません。
結果、ECB理事会以降のユーロ/米ドル中心のポジション調整が、年末まで続く公算が高いのではないでしょうか?
■2015年はユーロ/米ドルの下落がメインテーマ
今年(2015年)の為替市場を振り返ってみると、主役は何と言ってもユーロ/米ドル。
QE(量的緩和策)を開始したECBと、9年半ぶりの利上げが予測されていたFRBという欧米2大中央銀行の金融政策の逆行性に注目が集まり、ユーロ/米ドルの下落がメインテーマでした。
【参考記事】
●欧米2大中銀の金融政策が逆行する中、ユーロ/米ドルはパリティ割れも視野に!?(11月26日、西原宏一)
ただ、今月(12月)発表されたECBの追加緩和は、マーケットが想定したようなハト派的なものとはならず…。
それもあって、ユーロ/米ドルの下落はマーケットが想定していたような、パリティ(1ユーロ=1米ドル)割れといった相場展開にはなりませんでした。
ユーロ/米ドルは依然として、15年来のサポートを割り込めず、調整局面が続いています。
【参考記事】
●12月雇用統計の翌営業日に高値をつけて反落…昨年と今年のドル/円は超似ている(12月10日、西原宏一)

(出所:CQG)
結果、欧州と米国の中央銀行の金融政策が逆行するという珍しい相場環境の中においても、それほど米ドルは強くなかったというのが今年(2015年)の相場展開。
このユーロに対する米ドル高の流れが緩慢になったことが、米ドル/円の行方にも影響します。
■2016年の米ドル/円は反落に警戒!
2015年の米ドル/円は「128円に向けての米ドル高」というのがマーケットのコンセンサスでした。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
対円でも米ドル高の流れは変わらないものの、今年(2015年)の主役はユーロであり、ユーロ/円の下落の影響で、米ドル/円の上昇余地はそれほど大きくないというのが多くのマーケットの予測でした。
実際の米ドル/円の高値は125円台止まり…。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
つまり、米国景気の底堅さに呼応した米金利の上昇による米ドル高は、マーケットの想定ほど強くないということなのです。
見方を変えれば、FRBの利上げ開始に時間がかかりすぎて、マーケットは米国の利上げをすでに織り込んでしまったとも言えます。
金融政策の逆行性が際立っているユーロ/米ドルですら、米ドル高のスピードは緩慢。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
そうなると、追加緩和期待が後退している日銀のスタンスから考えれば、米ドル/円は上昇ではなく、反落するのではないかという意見も増えてきました。
■日米当局はこれ以上の米ドル高・円安を望んでいない
その米ドル/円反落シナリオの背景ですが、まず本邦当局の米ドル/円に対する見方の変化があります。
今年(2015年)、米ドル/円が125円に上昇した局面では「黒田ライン」という言葉も登場したように、125円以上の円安は、日本政府が望んでいないのでないかという見方です。
加えて、2011年につけた75円から米ドル/円はすでに50円弱急騰しているため、これ以上の円安・米ドル高は米政府も望んでいないのではないかという思惑です。
昨年(2014年)の米ドル/円は、10月15日に105.17円でボトムアウトし、12月の米雇用統計後、121.85円の高値に到達した後、調整に入っています。
米ドル/円は、今年(2015年)も10月15日(木)に118.06円でボトムアウトし、昨年(2014年)同様、米雇用統計後に123.48円に到達した後、反落しています。
【参考記事】
●12月雇用統計の翌営業日に高値をつけて反落…昨年と今年のドル/円は超似ている(12月10日、西原宏一)

(出所:CQG)
振り返ってみれば、昨年12月の米雇用統計後に米ドル/円は一時、121.85円まで到達していますので、今年(2015年)の米ドル/円は、マーケットが想定していたほど、米ドル高が進んでいないことがわかります。
現状のまま今年(2015年)を終了すると、2012年から連続してきた米ドル/円の上昇トレンドが徐々に失速してくることになります。
■120円を割り込めば、円高へ動きそう!
そして、米ドル/円のサポートは昨年(2014年)10月からサポートされているライン。
このラインが8月24日(月)のチャイナショック時の116.15円、そして10月15日の118.06円と米ドル/円の下値を支えています。

(出所:CQG)
このサポートラインが本稿執筆時点で、120.00円レベル。
FOMCの開催前も、米ドル/円は原油安や株安で下落しましたが、それも120.33円までで、このラインがサポートとして働いています。
2015年年末に向けて、仮に米ドル/円が、この120.00円を割り込んでくれば、年末年始はまず円高への修正が起きる可能性が高まります。
米金利の上昇もあり、2016年も米ドル高予想がコンセンサスとなりつつあります。
2016年4月ごろに日銀の追加緩和という予測もあり、仮に日銀がQQE3(量的質的緩和第3弾)を決定すれば、流れを変えることはできるのでしょう。
しかし、現状のままですと、他通貨では緩慢ながら、米ドル高の流れは続きそうですが、当局が125円以上の円安を歓迎しないことに加え、2011年の75円からすでに50円弱急騰し、調整相場入りする可能性も高いことから、2016年は米ドル/円の思わぬ反落に警戒です。
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