■擬似ヘリマネは米国の同意を得られず?
本日から8月。1週目なのでイベントが多いですね。
先週(7月25日~)の振り返りから始めると、FOMC(米連邦公開市場委員会)は思ったよりもタカ派だったという声が多い。
そして、大注目だった日銀。結局、ETF買い入れ枠の増額のみに終わって円高となりました。
【参考記事】
●日銀追加緩和決定も主な政策はETF買入れ増額のみ。米ドル/円は発表前から乱高下
「もっと積極的な政策を打ちたかったが、アメリカの合意を得られなかった」とのウワサが出ています。
あれだけヘリコプターマネー(ヘリマネ)への期待を高めていたわけですから、このウワサの信ぴょう性は高いかなと思います。
4月の日銀もそうでしたが、期待を高めてしまうと、失望も大きい。あれだけヘリマネの話が出たからには、何らかの筋書きがあったのでしょうし…。
【参考記事】
●ドル/円のボラティリティがリーマン以来の高水準! 日銀会合後の乱高下に要注意(7月28日、西原宏一)
ただ、3.3兆円だったETF買い入れ枠は年6兆円に。日本株市場だけを考えれば、インパクトは大きいですよね。日銀が6兆円を買っていくなら、日本株は下げにくそう。
(出所:株マップ)
それに、7月29日(金)の円高も東京時間はたしかに日銀への失望だったのでしょうけど、102円割れとなったのはニューヨーク時間。
日銀ではなく、米GDPが予想より大幅に悪い数字になった影響が大きいのでは…と思います。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 各国GDP成長率の推移)
■日銀会合終了で市場のフォーカスは「米ドル安」へ
日銀会合が終わり、米ドル安の流れが鮮明になってきましたね。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
今年(2016年)2月に米ドル高の是正をめざした上海合意があったと思われ、米ドル安が進みましたが、これまで調整されてきたのは対円のみ。
【参考記事】
●安倍首相が米国に「介入しない」と宣言!? 上海合意で、米ドル/円は100円も視野に!(4月7日、西原宏一)
他通貨に関してはBrexit(英国のEU離脱)騒動などでなかなか鮮明化しませんでした。
今回の日銀会合でも擬似ヘリマネ的な政策が出れば米ドル/円は急騰するリスクがあった。
ところが日銀はETF増額のみ。ヘッジファンド勢は次のテーマとして、米ドル安へと照準を絞りやすくなってきています。
ドルインデックスを見てもFOMCを境に急落。
(出所:CQG)
オシレーター・ダイバージェンスも出ていました。今はまだ上昇トレンドラインにサポートされていますが、割ってくると米ドル安がさらに鮮明になるのかも。
米ドルと逆相関の関係にある金も上がっていますし、米ドル安、コモディティ高に向かっているのかもしれません。
(出所:CQG)
アメリカの経済指標はまだら模様だったのが、徐々に数字が悪くなっている。
9月利上げはムリでしょう。年初には「年4回利上げ」と言われていたのに、徐々に回数が減り、利上げ時期も後ズレ。
12月の利上げすら難しいのかもしれない。今週(8月1日~)はユーロ/米ドルの反騰に注目でしょうか。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
■豪ドル、英ポンドは今週、ともに利下げへ
ドルストレートの通貨ペアでの米ドル売りだと、鉄鉱石が上がっているので、豪ドル/米ドルのロングもいいのかなと思います。
(出所:CQG)
ただ、今週、8月2日(火)にRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])の会合があり、政策金利の引き下げが予想されています。
豪政策金利は8月2日(火)13時30分の発表
(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 各国政策金利の推移)
豪ドルを買うなら、RBAの利下げで落ちた場面がいいのかもしれません。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 1時間足)
豪ドルもいいですが、やはり対ユーロ。
日本と同じくECB(欧州中央銀行)も通貨安政策の選択肢が限られてきているし、ユーロ/米ドルはチャートがボトムアウトを示しつつあります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
米ドル/円はというと、まだアベノミクス円安の50%押しである100.60円より上にいますし、8月2日(火)には経済対策の発表も控えています。
【参考記事】
●ドル/円は105円決壊で100.60円へ下落中! 英ポンド/円は1カ月以内に30%乱高下!?(6月16日、西原宏一)
ETF6兆円のインパクトで日経平均は下げにくいのなら、米ドル/円は上がらずとも、大きく下げにくいのかなとも思います。
ドイツ銀行ショックのようなことでもあれば話は別ですが…。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
米ドル安の流れのなか、英ポンドの買い戻しもありそうな気配。
ただ今週、8月4日(木)はMPC(イングランド銀行金融政策委員会)。7月は政策金利据え置きでしたが、今回は利下げの確率が100%近い。
「信頼できないボーインフレンド」と揶揄されるBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])のカーニー総裁ですが、さすがに今回は利下げするのでしょう。
英政策金利は8月4日(木)20時の発表
(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 各国政策金利の推移)
そこまで織り込まれているなら政策金利発表で多少落ちたとしても、あわせて発表される四半期インフレレポートや記者会見でよほどの発言や見通しの悪化がなければ、大きく売られることはなさそうですね。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
■ユーロ/米ドルを中心にドル売り戦略
8月5日(金)には米雇用統計も控えています。NFP(非農業部門雇用者数)の予想は18万人の増加。
米雇用統計は8月5日(金)21時30分の発表
(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 米国主要経済指標の推移)
これより悪ければ米ドル安が進むのでしょうし、いい数字で米ドルが買われれば、売り場と考えてもよさそうですね。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 4時間足)
今週(8月1日~)は米ドル安の鮮明化に期待した米ドル売り。ユーロ/米ドルのロングを継続です。円については2日(火)の経済対策次第でしょう。
経済対策へのサプライズ思惑は高くありませんが、今回の日銀金融政策決定会合の声明文を読むと、9月の追加緩和への期待も残されています。
今年(2016年)後半の米ドル/円もボラティリティの高い相場展開となるかもしれませんね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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