■上昇スピード速すぎで、日本の公的機関は“買い遅れ涙目”
11月21日(月)早朝、米ドル/円は111円にタッチしました。111円にはバリアオプションが観測されていたので、市場の薄い早朝、111円をつけに行く動きが出るのではと思われましたが、そのとおりになりました。
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11月9日(水)には101.19円の安値をつけたのに、2週間弱で10円近く上がったことになりますね。これだけ早いと買えていない人も多そう。
日本の公的機関などもまったく買えておらず、頭を抱えているようです。11月18日(金)の深夜には、一時109.80円まで下げる場面がありましたが、あっという間に110円台後半へと戻した。下がれば買いたい人は多いですね。
個人投資家のポジションを見ても、まだ売りが優勢。値頃感でショートした個人のストップを巻き込んで上昇しています。
■次のターゲットはアベノミクスの半値戻し
前回のコラムでお伝えした2016年7月高値107.50円のターゲットも、アベノミクス高値とブレグジット安値で引いたフィボナッチの38.2%=109円のターゲットも達成。次のターゲットは、5月末の高値である111.45円付近です。
伊勢志摩サミットや衆参同時解散説が流れて円安が進んだ時期でしたが、111円台ミドルが重かった印象があります。その次はフィボナッチの半値戻し=112円台ミドル。この近辺では一度手仕舞ってもいいかなと思います。
【参考記事】
●トランポノミクスが「株高・円安」を促進!? ドル/円は押し目買い継続、次は109円へ!(11月14日、西原宏一&大橋ひろこ)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
トランプ大統領の政策への不透明感から、まだまだ円高リスクが残っているとする向きも多いようですが……。
大勢が円安で一致してしまうと、かえって上がりにくい。皮肉めいた言い方になってしまいますが、円高派がいてくれた方が上がりやすいですよね。
もうひとつ、ここに来て新たな円安材料となっているのは、日本銀行が2016年9月の会合で発表したイールドカーブ・コントロール。
【参考記事】
●今週は日銀会合とFOMCの結果がすべて。リークが多い日銀会合は3点セットに注目(9月20日、西原宏一&大橋ひろこ)
■日銀の「無制限の国債購入」に欧米勢はビックリ!
先週(11月14日~)、日銀は「指値オペ」を初めて実施しましたよね。
指値オペというと伝わりづらいですが、ウォール・ストリート・ジャーナルのヘッドラインは「Buy Unlimited JGBs at Fixed Rates」。
バイ・アンリミテッド、つまり、「無制限の国債購入」ということですから、欧米勢にとっては相当センセーショナル。米金利が急騰しているところに日本の金融緩和ですから、米ドル/円は急騰するわけです。
(出所:CQG)
9月に日銀がイールドカーブ・コントロールやオーバーシュート型コミットメントを発表したときは「ゼロ金利誘導はテーパリングでは!?」と日銀の手詰まり感から円高を予想する向きが多かったですよね。
テーパリングだなんてとんでもない、結果は猛烈な追加緩和だったわけです。
メルマガ「FXトレード戦略指令!」やこのコラムではテーパリング説をずっと否定してきましたが、相場の動きもテーパリング説を否定している印象。
米金利上昇と、日銀のアンリミテッドな国債購入により、米ドル/円の方向性がいちばんわかりやすくなっています。
【参考記事】
●日銀会合への市場の評価は真っ二つ! 米ドル/円はこのまま反発しそうな感じも…(9月26日、西原宏一&大橋ひろこ)
●日銀決定は実質ヘリマネとの見方ジワリ。異様に底堅いドル/円の100円台は買いか(10月3日、西原宏一&大橋ひろこ)
■欧米勢が休日となる週後半が買い場か
ただ、来週(11月28日~)にはOPEC(石油輸出国機構)総会が控えています。OPEC総会が終わるのは11月30日(水)。その前、25日(金)には閣僚級会議も開かれます。
減産をまとめるのは難しそうで、原油の下落が米国株の悪材料となるようだと、いったん米ドル高が一服することもありそう。
今の相場は「アメリカ買い」。本来なら米金利上昇は米国株にとってマイナスなのですが、NYダウは4営業日連続で最高値を更新するなど力強い。
原油急落などを背景とした株安には要注意ですが、原油関連のヘッドラインなどで下げたところは買い場とみています。
(出所:CQG)
今週(11月21日~)のイベントは24日(木)早朝に11月開催分のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録発表がある程度。大きなイベントは来週のOPEC総会とイタリア国民投票ですね。
ただ、24日(木)はサンクスギビングデー(感謝祭)で祝日。25日(金)も短縮取引となるため、週後半からは欧米勢がドカッと抜ける。米ドル買いポジションの手仕舞いが出て、いったん下げる可能性もありそう。
前述のとおり、買い遅れている投資家も多いため、深い調整にはならないかもしれませんが、米ドル/円の落ちたところは拾っていきたいですね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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