■金融緩和の限界を感じさせる政策に市場は失望
日銀が金融緩和したのに、なぜ、円高・株安が進んだのか。
これについては今一つハッキリしないところがあるが、「マイナス金利導入」が文字どおり、ネガティブな金融緩和手段(※)と受け取られた面はありそうだ。
マイナス金利は銀行の業績にはマイナス要素となるため、銀行株が暴落。これが主導する形で株式市場全体が下落し、リスクオフの流れとなって、円高が進んだという面がまずあっただろう。
(※「マイナス金利」の英訳は「negative interest rates」)
(出所:Blooberg)
また、過去2回の実施時に円安・株高の効果を十分に上げてきた「量的緩和」をさらに拡大させるという手段もあったはずなのに、日銀はそちらを実施せず、通常の経済状態では行わないようなマイナス金利という別の政策を打ち出してきた。このことが、量的緩和の限界、金融緩和の限界を感じさせ、市場の失望を呼んだ面もあったと思える。
そして、マイナス金利導入後にリスクオフの流れが拡大していくと、「マイナス金利」という言い方は「マイナス」という言葉が入っているのでそもそも印象が悪い、といった声まで聞かれるようになったのだった。
■米ドル/円は22円超、日経平均は3000円超の下落!
また、「金融緩和なら通貨安になるのが定石」という見方から、マイナス金利導入後に米ドル/円買い、日本株買いに動いた筋の投げが出たということもあったかもしれない。
実際、「3日天下」ではあったが、マイナス金利導入直後は円安・株高が進んだわけだし、「金融緩和なら通貨安になるのが定石」という見方が強ければ、その後の反落局面で押し目買いに動いた向きもありそうだ。
しかし、定石と思い込んでいたとおりの動きにならず、押し目買いしても、押し目買いしてもまだ下がるということが続いているうちに、ついに耐えきれなくなって投げ売りが殺到したのかもしれない。
結局、2016年前半の米ドル/円は下落基調が続き、Brexit(英国のEU離脱)決定に揺れた6月24日(金)には99円台前半の安値をつけるに至っている。1月29日(金)の高値121円台後半から見れば、22円超もの大きな下落だった。
(出所:Blooberg)
また、日経平均は2月1日(月)に1万7905円の高値をつけているが、その後は下落→レンジ相場と推移し、やはり、Brexit決定に揺れた6月24日(金)には1万4864円の安値をつけている。こちらは高値から3000円超もの下落となったのだった。
(出所:Blooberg)
■4月日銀会合では追加緩和見送りで市場は失望…
こうして、2016年年初から「マイナス金利導入」という超サプライズをぶちかました黒田総裁率いる日銀だったが、その後、市場が追加緩和を期待していた4月の日銀会合では追加緩和を見送った。
なぜ、4月の日銀会合で追加緩和期待が高まっていたのか。
それはブルームバーグ(Bloomberg)の日高正裕記者が執筆した「日銀が金融機関への貸し出しにマイナス金利検討」という記事(以下、「日高記事」と呼ぶ)によるものだった。
この日高記事が配信されたのが、日銀会合を1週間後に控えた4月22日(金)というタイミングだったこともあって、市場の追加緩和期待の高まりとともに為替相場では円安が進んだというわけだ。
ところが、日銀会合では追加緩和が見送りとなり市場は混乱。失望による株安、円全面高となってしまった。
【参考記事】
●日銀追加緩和見送りで円全面高に! ドル/円は一時、108円台後半まで急落!
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 5分足)
(出所:Blooberg)
■市場混乱の原因!? 日高記者の記事とはいったい…
結局、市場関係者は日高記事に振り回されることになったわけだが、この記事には不審に思える点がいくつもあった。
これについては、以下のとおり、ザイFX!の当コーナーにて4回シリーズで取り上げた。
【参考記事】
●市場を大騒ぎさせたブルームバーグ・日高正裕記者の記事。その謎に迫る!
●反黒田派!? 日高正裕記者の記事は日銀がリークしたものだったのか?
●ブルームバーグ・日高正裕記者の記事に出てくる(日銀)関係者って誰よ?
●BOJ Officials Saidの謎:ブルームバーグの英文タイトルはあとから改変されていた!?
以下は、このシリーズ記事でテーマとした4つの謎だ。
★謎1:日高記者の記事は日銀がリークしたものだったのか?
★謎2:(日銀)関係者って誰よ?
★謎3:日高記者の英文記事はあとから改変されている!?
★謎4:日銀は貸し出しへのマイナス金利適用を検討していなかったのか?
なお、こちらの記事は、ザイFX!の記事としては珍しく、要約版や英語版も公開している。サクッと読みたい人や英語の方が得意という人はぜひ、こちらをご覧ください。
【参考記事】
●「BOJ Officials Said」の謎:ブルームバーグ記事の英文タイトルはあとから改変されていた!?(要約版)
●The Mystery of "BOJ Officials Said"Was the English Title of the Article by Bloomberg Altered Afterwards?(abridged edition)
このように、日経新聞のフライング記事や日高記事といった…
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