(「 ザイFX!で2016年を振り返ろう!(3)日銀マイナス金利導入! ヘリマネ騒動も…」からつづく)
ここまで、Brexit(英国のEU離脱)、トランプ氏当選と強烈なリスクオン相場、そして、日銀のマイナス金利導入と、今年(2016年)の3大サプライズを紹介してきた。
「ずいぶんいろいろあったなぁ~」なんて思われた人がいるかもしれないが、今年は、それ以外にも金融市場を賑わせた材料がいろいろあった。
ザイFX!で2016年を振り返ろう【相場編】のラストとなる今回は、3大サプライズ以外に金融市場を動かした材料を紹介したい。
中国経済危うし!? 中国人民元が暴落!
はじめに紹介するのは、中国人民元の暴落だ。
対米ドルでの中国人民元は2014年ごろから売られ始めており、2015年8月にはチャイナ・ショックなどと呼ばれる暴落局面もあった。
そして、2016年1月早々には、対米ドルを中心に急激な中国人民元安が進んだ。その後、中国人民元にはいったん買い戻しが入ったものの、2016年後半にかけて、再び大きく売られたのだ。
(出所:Bloomberg)
このように、2016年は前半と後半で中国人民元が大きく売られる場面があったわけだ。ではいったい、中国人民元が急落した原因は何だったのだろうか。
このポイントとなりそうなものに、「中国株暴落」と「トランプ氏当選」がある。
導入初日にサーキットブレーカー発動
はじめに2016年年明けに起こった「中国株暴落」について取り上げよう。
これは、2016年から中国株市場に導入されたサーキットブレーカー制度(※)がカギを握っていたようだ。
(※「サーキットブレーカー」とは取引所などで、価格が一定の変動率に達したら、取引を休止する制度)
この中国株暴落は、1月4日(月)の取引初日から中国の株価指数であるCSI300指数が大幅下落したことに始まる。
中国の株価指数といえば、上海総合指数が有名。CSI300指数は聞き慣れない名前だが、中国株式市場においてサーキットブレーカー発動の基準になっていたのが、このCSI300指数だったのだ。
(出所:Bloomberg)
このころ、中国では経済指標の悪化を受けて、中国経済の減速懸念が高まっていた。それを受けて株価が下落、CSI300指数の下落率が7%という基準値に達すると、サーキットブレーカー(※)が発動、株式と先物の取引が停止されてしまったのだ。
このサーキットブレーカー、その後もたびたび発動され、結局、導入からわずか4営業日でサーキットブレーカー制度そのものを停止させるという、普通では考えられないような事態となった。
一説には、サーキットブレーカーが発動してしまうと、もう株を売ることができないという恐怖にかられ、我先にと株を売る動きになったことが、結局、サーキットブレーカー発動を招いてしまい、悪循環に陥ってしまったとも言われる。株の暴落を防ぐ手段であるはずのサーキットブレーカー制度導入が逆効果となってしまったのだ。
実際、サーキットブレーカー制度が停止されてからしばらくすると、中国株暴落は沈静化していった。
陳満咲杜氏はコラムの中で、「中国株が大発会からいきなりの暴落とは、さすがに筆者にとってもサプライズであり、中国株市場の脆弱性を象徴した出来事だった」との見方を示していた。
【参考記事】
●恐怖心を煽ったサーキットブレーカー! 中国株下落は序の口、為替は円高トレンドに(1月8日、陳満咲杜)
●ソロスも警告するリーマンショック再来はあるのか? その鍵を握るのは米国株…!?(1月12日、西原宏一&松崎美子)
●ソロスも警告! リーマンショックが再来!? 株安・円高の行方占う2つのポイントとは?(1月14日、西原宏一)
こうした中国経済への懸念を背景とした中国株急落につれる格好で、中国人民元も対米ドル、対円で下落したというわけだ。
中国からの資金流出が中国人民元急落の原因?
そして、今年後半にも中国人民元は下落し、2015年8月のチャイナショック時や、先ほど紹介した2016年1月の中国株暴落時の安値を更新した。
【参考記事】
●田代尚機氏に聞く中国経済(1) 上海株の暴落は中国経済減速が原因ではない!
これは、米大統領選挙でトランプ氏が当選したあと、米長期金利の急上昇により米ドル高が進んだことで「ある程度」は説明がつく。
【参考記事】
●ザイFX!で2016年を振り返ろう!(2) トランプ氏当選でまさかのリスクオン到来!
でも、以下のチャートをご覧いただくと、中国人民元の対米ドルでの下落がとくに顕著となったのは、米大統領選挙の少し前、2016年10月下旬のこと…。
ということは、米大統領選挙前の中国人民元の下落については、トランプ氏の当選後の動きとはいっしょにすることはできない。ここで、いったい何があったのだろうか?
(出所:Bloomberg)
2016年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ期待で、市場は米ドル高が進みやすい状況にあるとか、10月1日(土)付で行われた中国人民元のSDR(特別引出権)構成通貨入りが影響しているなどといった、「それらしい」理由はあった。
でも、それよりも、根本的な原因は「中国からの資金流出」ではないかと言われているようだ。
中国では経済が減速し、株価も戻りが弱い状況が続いていて、こうなると、中国国内で事業をしたり、資産運用するよりも、国外に資金を出した方が儲かるのでは?ということで、企業や投資家などのお金が中国国外へ流出し始める。
(出所:Bloomberg)
資金流出は、そのまま通貨安要因となるので、中国人民元は下落…。その結果、さらに資金流出が加速し、中国人民元はさらに下落するという悪循環に陥ってしまっているようなのだ。
※中国国家外為管理局(SAFE)発表データよりザイFX!が作成
以下の【参考記事】では、中国人民元安が進んだ原因について、いろいろな角度から検証している。詳しい内容はこちらをご覧ください。
【参考記事】
●実はチャイナショック時以上にひたひたと進んでいる中国人民元安。その理由は?
また、以下のコンテンツでは中国人民元/円を取引できるFX会社とそのスペックをまとめている。こちらもご参考に。
【参考コンテンツ】
●FX会社おすすめ比較:中国人民元が取引できるFX会社はここだ!
OPECが原油減産合意! 原油相場は急上昇!
続いて紹介するのは原油相場。原油価格は2014年半ばから下落トレンドを継続させていたが、2016年入りしてからは下落基調を強め一時、26ドル台まで急落した。
(出所:Bloomberg)
しかし、OPEC(石油輸出国機構)による原油増産凍結といった思惑もあって、原油相場は反発。
その後、Brexit(英国のEU離脱)によるリスクオフの動きもあっていったん下落したものの、9月に開催されたOPEC臨時総会では原油減産で暫定合意し、11月30日(水)にウィーンで開催されたOPEC総会で正式合意されたことで反発。
その後、OPEC加盟国とロシアなどの非加盟国との原油減産合意もあって、原油相場は上昇基調を強めたというわけだ。
【参考記事】
●「米ドル高の弊害」へ言及があれば一気にセンチメント逆転か。「その時」を警戒せよ!(12月1日、今井雅人)
以下はWTI原油価格の週足チャートだが、テクニカル的にも底打ちを示すとされる、ダブルボトムを形成すると反発し一時、50ドルの大台を回復。
この時点で、2016年2月の安値から約2倍も上昇している。
(出所:Bloomberg)
その後、いったん40ドルを割り込む場面こそあったものの底堅さを示すと反発。やや広いレンジで上下しながらも、54ドル台まで上昇したというわけだ。
【参考記事】
●住友商事・高井裕之氏に聞く原油相場(2) 原油価格は40ドル-60ドルのレンジ相場へ
なお、このようによく動いた原油はCFDで比較的手軽に取引することができる。以下の記事では、GMOクリック証券のCFD売買代金ランキングで原油が9月、10月と総合首位を取ったことなどを紹介している。
【参考記事】
●11月は恐怖の絶頂だった!? 株も為替も大きく動いている今こそCFDに大チャンス!?
どの会社でどんなCFD銘柄を取り扱っているのか? それについては、以下のCFD比較コンテンツをご覧ください。
【参考コンテンツ】
●NYダウや金にも直接投資できるCFD取引会社を徹底比較!
シン・ゴジラ上陸で、米ドル/円は167円へ上昇も
そして最後に紹介するのが、今年大ヒットを記録した映画、「シン・ゴジラ」だ。
今年大ヒットした映画『シン・ゴジラ』。劇中には、シン・ゴジラ上陸で「株安・円安・債券安」というセリフが出てくる (C)2016 TOHO CO.,LTD.
「えっ! 相場と関係ないじゃん」と思われた人がいるかもしれない。
確かに、今年の為替相場の動きとは直接関係ないが、実は、このシン・ゴジラの映画の中に「株安、円安、債券安だ!」というセリフがあったのだ。
それを聞きつけたザイFX!編集部は、「シン・ゴジラがもしも本当に襲来したら日本経済、円相場や日経平均はどうなるのか?」をテーマに、専門家への取材を敢行。
テーマがテーマなだけに、取材OKの専門家なんて……と思っていたところ、快く引き受けてくれたのが、ニッセイ基礎研究所の上野剛志さんだった。
上野さんが試算した、シン・ゴジラが日本に上陸した場合の日本経済の被害総額は、な、な、なんと60兆円にもなるという。
上野さんの試算では、シン・ゴジラ上陸による日本経済への被害総額は60兆円にもなるそうだ (C)2016 TOHO CO.,LTD.
さらに、これを受けて米ドル/円は「167円」まで上昇するというから、こちらも衝撃的だ。
(出所:Bloomberg)
でも、なぜシン・ゴジラが日本に上陸しても「有事の円高」にはならないのだろうか? 詳しくは、以下の【参考記事】をご覧ください。
【参考記事】
●被害総額・約60兆円! もしもシン・ゴジラが本当に襲来したら、日本経済はどうなる!?
●1ドル=167円! ゴジラ上陸なら円安襲来!? でも、なぜ「有事の円高」にならないのか?
最後は今年大ヒットした映画、「シン・ゴジラ」で締めたが、4回シリーズでお届けしてきた、ザイFX!で2016年を振り返ろう【相場編】では、2016年に相場を大きく動かしたトピックをお伝えしてきた。
2017年は1月20日(金)にトランプ氏の米大統領就任式を控え、いきなり波乱の相場になる可能性もありそう。2017年はどんな相場が待っているのだろうか?
次回からは、ザイFX!で2016年を振り返ろう【業界編】がスタート! 2016年に登場したFX会社の新サービスなど、話題満載でお届けするのでこちらもお見逃しなく!
(「ザイFX!で2016年を振り返ろう!(5)FX業界編:深キョン降臨とFX株の爆上げ!」へつづく)
(ザイFX!編集部・庄司正高&井口稔)
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