■「ヘリコプターベン」来日でヘリマネ期待が独り歩き
このように、日経新聞のフライング記事や日高記事といった日銀の公式発表ではない材料で相場が動いたわけだが、今年(2016年)は日銀絡みだけれど、日銀が公式発表したわけではないことで、もうひとつ大きな話題があった。
それが日銀による「ヘリコプターマネー(以下「ヘリマネ」)」(※)実施観測だ。
(※「ヘリコプターマネー」とは、中央銀行や政府が大量の貨幣を供給する政策のこと)
このヘリマネ実施観測、FRB(米連邦準備制度理事会)前議長のバーナンキ氏が7月に来日し、黒田総裁と会談したことで、にわかに高まった。
7月に来日したバーナンキFRB前議長。黒田日銀総裁と会談したことで「ヘリコプターマネー」実施観測が高まった (C)Bloomberg/Getty Images
バーナンキ氏は安倍首相とも会談し、その場には浅川財務官、菅官房長官、そして、浜田内閣官房参与も同席していたようで、これが「ヘリマネ」への市場の期待をさらに高めることになったようだ。
【参考記事】
●「ヘリコプターベン」来襲で株高・円安! 「ヘリマネ政策」前提の期待先行相場続く(7月14日、今井雅人)
■ヘリマネ期待で円安も、雲散霧消…
では、日本政府と日銀によるヘリマネ実施観測が高まる中、米ドル/円や日経平均はどのような動きをしたのだろうか?
米ドル/円は、バーナンキ氏の来日と同時に上昇を開始し、100円台半ばから一時、107円台まで暴騰。そして、日経平均も1万5000円近辺から1万7000円付近まで急騰した。
【参考記事】
●参院選後のアノマリー崩れ円安・株高に! バーナンキ来日でヘリコプターマネー予測も(7月12日、西原宏一&大橋ひろこ)
●ヘリコプターマネーの憶測でアベノミクスに反撃の兆し? ドル/円は107円が焦点!(7月14日、西原宏一)
●ハイパーインフレもたらすヘリマネの恐怖。もしかしたら「悪い円安」がすでに進行中!?(7月22日、陳満咲杜)
(出所:Bloomberg)
(出所:株マップ.com)
もっとも、これだけ市場を騒がせた「ヘリマネ」観測だったが、日銀は7月の日銀会合で追加緩和は実施したものの、主な政策はETF買い入れ増額のみという、市場の期待とは裏腹にショボい内容に。
【参考記事】
●日銀追加緩和決定も主な政策はETF買入れ増額のみ。米ドル/円は発表前から乱高下
「勝手に市場が盛り上がっていただけなのにショボいとは何ごとだ!」と日銀に怒られてしまいそうだが、本格的なヘリマネを実施するということは、輪転機で紙幣を大量に刷って市中にバラ撒くということだから、現代の先進国で実施するというのが、そもそも無理筋の話なのだ…。
なぜ、あそこまでヘリマネ期待が盛り上がったのか、ナゾとも言える。
とはいえ、ヘリマネの定義は明瞭ではなく、比較的軽めの政策をもヘリマネと呼んでしまうこともあるようで、次項で紹介する9月に実施された日銀の政策を「ヘリマネに近い」と評する声もあるようだ。
【参考記事】
●日銀決定はテーパリングへの道? それともヘリマネ? 米ドル/円は底固め後、反発へ(9月29日、西原宏一)
■「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」とは?
時が進んで、9月21日(水)の日銀会合前には、「マイナス金利の深掘り」がウワサされていた。しかし、これは行われず、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入などが発表された。
この「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」だが、その具体的な手段として、「長短金利操作のための新型オペレーション」が導入されている。
これは、日本銀行が指定する利回りによる国債買い入れ(指値オペ)、そして、現在は1年となっている固定金利の資金供給オペレーションを行うことができる期間を10年に延長するというもの。
詳しくは以下の【参考記事】をご覧いただきたいが、10年物国債利回り(長期金利)が現状と同じ0%程度で推移するよう、長期国債の買い入れを行うことも示された。
【参考記事】
●マイナス金利の深堀りはなく相場乱高下! 日銀は金融政策の何を変更したのか?(9月21日)
これは金融緩和なのか? 金融引き締めなのか? 日銀は何を意図しているのか? 長期金利の人為的操作など可能なのかどうか? この「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という新しい政策を市場はどのように受け止め、どう解釈すればいいのか、なかなか定まらず、相場の動きもしばらくはハッキリしなかった。
【参考記事】
●日銀決定はテーパリングへの道? それともヘリマネ? 米ドル/円は底固め後、反発へ(9月29日、西原宏一)
このように、市場のウワサも含めて、今年(2016年)は日銀絡みで…
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