今日から、毎週火曜日に本コラムを執筆することになりました、バカラ村です。
よろしくお願いいたします。
■悪い雇用統計でも6月の米利上げは確実
6月2日(金)に、5月米雇用統計の発表がありました。
失業率は市場予想が4.4%だったところ、結果は4.3%となり、この点は良かったのですが、他は悪い内容となりました。
非農業部門雇用者数は予想値が+18.2万人だったところ、結果は+13.8万人。4月分は+21.1万人だったのが、+17.4万人に下方修正されました。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 米国主要経済指標の推移)
また、平均時給は前年比+2.5%に鈍化しました。
これらを受けて、米ドル/円は110.32円まで下がりました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
6月13~14日にはFOMC(米連邦公開市場委員会)があり、金融政策が発表されます。今回の雇用統計がFOMCでの利上げの可能性を左右するわけですが、市場の利上げ織り込み度を示すCME(シカゴ商品取引所)のFEDウォッチでは、利上げ確率は雇用統計後も95.8%となっており、雇用統計の影響はなく、ほぼ確実に利上げされそうです。
ただ、9月以降の利上げの可能性は低下しています。
【参考記事】
●今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の雇用統計が悪くてもさほど売られないかも(6月2日、陳満咲杜)
●6月FOMC利上げでも米ドル高は限定的? では、ドル/円上昇のカギを握るものとは…!?(5月29日、西原宏一&大橋ひろこ)
■日経平均との相関性は外れた状態、円売り仕掛けにくい
米ドル/円は110.20~112.20円のもみ合いが続いており(※)、日経平均は2万円台にしっかり乗せてきているため、相関性が外れた状態となっています。
(※編集部注:本記事の原稿寄稿後、米ドル/円は6月6日(火)の東京時間にレンジの下限を割り込み、109円台ヘ下落した)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
(出所:Bloomberg)
これは、英国のテロや中東の地政学リスクもありますが、今週、6月8日(木)に重要イベントがあり、リスクを取りにくい状態のため、米ドル/円が上昇できないままでいるということだと思います。
また、トランプ大統領が貿易赤字調査を指示しており、今月(6月)末にそれが報告されることとなっています。
調査結果前ということで、貿易不均衡問題から円売りを仕掛けにくく、この点も米ドル/円の上昇を抑えている理由となります。
以下は米ドル/円の日足チャートです。
(出所:サクソバンク証券)
200日移動平均線が110.30円、直近レンジ下限が110.20円にあるので、サポートされていますが、5月17日(水)の陰線や21日移動平均線が上値を抑えており、110円割れを試しそうな展開が続いています(※)。
(※編集部注:本記事の原稿寄稿後、米ドル/円は6月6日(火)の東京時間に下落し、110円を割り込んだ)
■期待で買われたユーロはECB理事会後に調整!?
6月8日(木)は、重要イベントが3つ重なる日になります。
【参考記事】
●英国・欧州・米国のビッグイベント集中! 6月8日は何が起こるかわからない……!?(6月5日、西原宏一&大橋ひろこ)
●しっくりこないユーロ高…原因はどこに? 注目イベント重なる来週は大荒れに警戒!(6月1日、今井雅人)
まず、日本時間20時45分に、ECB(欧州中央銀行)理事会の金融政策発表。同21時30分からは、ドラギ総裁の会見があります。
ドイツのメルケル首相やバイトマン連銀総裁は出口戦略へ前向きな発言をしていますが、反対に、ドラギ総裁はハト派な発言を繰り返しています。
市場では出口戦略への期待も高まっており、フランス大統領選が終わってから、ユーロは強い状態が続いています。
もし、フォワードガイダンスが変更されると、ユーロはさらに上昇することになると思います。ただ、直近のHICP(消費者物価指数)などの経済指標に弱めの数字が出ていることもあり、今回のECB理事会ではフォワードガイダンスの変更を議論し、今後の変更の可能性を促す発言に留めるのではないかと思います。
とすれば、ユーロ/米ドルはここまで期待で買われていたので、いったん調整する動きが想定されます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
もし、8日(木)に向かってユーロ/米ドルが上昇を続け、ドラギ総裁の会見でフォワードガイダンスの変更がまだ先になるようであれば、売りを考えてもいいのではないかと思います。
以下はユーロ/米ドルの日足です。
(出典:サクソバンク証券)
5月30日(火)の安値や21日移動平均線が1.1100ドル付近にあり、まずはここがターゲットとなりそうです。
さらに、1.1000ドル付近には、フランス大統領選後の5月8日(月)につけた高値1.1023ドルもあり、サポート水準となります。
■重要イベント目白押し、米ドルやユーロはセル・ザ・ファクト?
8日(木)の日本時間23時からは、コミー前FBI(連邦捜査局)長官の議会証言があります。
ここでもし、トランプ大統領が何らかの圧力をかけていたということが出てくると、リスク回避の動きとなり、米ドル/円は下落することになります。
何が出てくるかわからない状況ですが、ただ、決定的な内容が出てこない限り、そのあともイベントがあるので、一過性の動きで終わると思います。
さらに、英国の下院総選挙もあり、日本時間翌9日(金)の午前中には大勢が判明します。
世論調査では、保守党と労働党の差がほとんどないという調査結果も出ており、もしそうであれば、大勢が判明するのは午後になってからになります。
また、11日(日)にはフランスの議会選挙があります。
そして、14日(水)はFOMCで、0.25%の利上げが確実視されています。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 各国政策金利の推移)
利上げは確実視されているのですが、最近の米ドルは弱く、これはトランプ大統領のロシアゲート疑惑も影響しています。
コミー前FBI長官の議会証言とECB理事会が終われば、14日(水)のFOMCに向けて、米ドルが買われることも考えられます。
本稿執筆時点で、米ドル/円は110.50円付近を推移していますが(※)、14日(水)に向けて上昇していくようであれば、米利上げ後に材料出尽くしで下がると考えています。
(※編集部注:本記事の原稿寄稿後、米ドル/円は下落し、本記事公開時点では109円台後半で推移している)
(出所:Bloomberg)
ユーロ/米ドルも8日(木)のECB理事会に向けて上昇しているようであれば、こちらも材料出尽くしで調整すると考えています。
(出所:Bloomberg)
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