■ドラギ総裁はハト派でも買われたユーロ
今年(2017年)後半のテーマとなりそうなユーロですが、先週のECB(欧州中央銀行)理事会は思ったよりハト派でしたね。
【参考記事】
●引き締めに向かう主要国中銀が「密約」? ECB理事会でのテーパリングの行方は…!?(7月17日、西原宏一&大橋ひろこ)
私もそうだったように「落ちたところは拾いたい」という意欲が強く、ハト派だったのにユーロは上昇へ。対米ドルでは1.16ドルを超えてきました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
買われるのがユーロなら売られるのは円、それに米ドルになるのかも。今年(2017年)後半は米ドル安の行方にも注目したいと思います。
CME(シカゴマーカンタイル取引所)のFedウォッチで米ドルの利上げ織り込み度を確認すると今年(2017年)12月でも40%台。1年後の来年(2018年)6月でも50%を超えていません。
米国のインフレ指標が弱いことが背景でしょう。市場の関心はバランスシートの圧縮。バランスシートの圧縮の着手は2017年内にも、との見方が大勢ですが、年内の利上げは難しいのかもしれませんね。
円も金融緩和の継続で売られやすく、少なくとも買われることはないでしょうから、米ドル安・円安の同時進行で結局、米ドル/円はレンジなのかもしれません。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
■今週の焦点は28日の米4-6月期GDP
先週(7月17日~)はスパイサー米報道官の辞任もあり、米ドル/円が下落しましたね。気がつけば金(ゴールド)も堅調に上がってきています。
(出所:Bloomberg)
金の上昇は特別な材料があったというよりは、米ドル安の裏返しだと思います。
今の米ドル/円は米金利連動。米金利があまり上がらないとなると、米ドル/円が大きく上昇するのは難しいかもしれませんね。
(出所:Bloomberg)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
その米金利に影響を与えそうなのが、28日(金)21時30分に発表される米国の4-6月期GDP・速報値です。
ひろこ 前回の速報値は0.7%(前期比年率、以下同)。確報値で1.4%に修正されましたが、大雪の影響とはいえ非常に悪い数字です。
米4-6月期GDP・速報値は7月28日(金)21時30分の発表
(詳しくはこちら → 各国GDP成長率の推移)
今回の予想は2.5%ですが、よくも悪くもブレる可能性がある。悪い方向にブレると、米ドル/円はもう一弾の下落もあるので要注意です。
今週(7月24日~)は26日(水)深夜にFOMC(米連邦公開市場委員会)から金融政策の発表もありますが、政策の変更予定はなく、市場が注目するのは米GDPでしょう。
■豪ドル/米ドルは節目を1年ぶりにブレイク
先週(7月17日~)は豪ドルの上昇が目立ちましたね。
豪ドル/米ドルは過去1年超、ずっと頭を抑えられてきた0.7835ドルの節目を抜けて上昇が加速。すでにメルマガ「FXトレード戦略指令!」でお伝えしたようにロングでエントリーしています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 月足)
先週(7月17日~)、21日(金)にはRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])の副総裁のデベル氏が利上げに慎重な発言をしたことで売られましたが、押しは浅く非常に底堅かった。
RBAが利上げに動き出せば上昇余地は大きい。かつては日本から高金利目当ての投資信託マネーが流れ豪ドル高を演出した記憶があります。その再現があるかどうか、長期的に注目したいですね。
豪ドルと相関性の高い鉄鉱石価格も堅調、中国の4-6月期GDPも市場予想を上回り、環境は良好ですね。
(出所:Bloomberg)
それに豪ドル/円の週足チャートは逆三尊(※)を形成しそうなチャートになっています。
(※編集部注:「逆三尊」とはチャートのパターンの1つで、大底を示す典型的な形とされている。「ヘッド&ショルダーズ・ボトム」とも呼ばれる。また、「逆三尊」の逆で、天井を示す典型的な形が「三尊」(ヘッド&ショルダーズ))
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 週足)
クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)については、7月28日(金)の米4-6月期GDP・速報値の結果を見てから判断したい。
下ブレするようだと、米ドル/円に引っ張られてクロス円全般、下に行く可能性があります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
■突発的な北朝鮮リスクに警戒を
北朝鮮のミサイル問題も気になりますね。
トランプ政権は北朝鮮への渡航を禁止すると発表しました。北朝鮮に滞在するアメリカ人への退避勧告を出すのではとのウワサも……。
4月には大きなテーマとなった北朝鮮問題ですが、結局トランプ政権は目立ったアクションを起こしませんでした。
今はマーケットの注目が薄くなっているため、何かあったときのインパクトは大きい。8月に向けて気をつけたいポイントのひとつですね。
【参考記事】
●3つの円高要因が揃い、下落したドル/円。ドル安鮮明にした「110/2 . 3/1270」とは?(4月17日、西原宏一&大橋ひろこ)
●セル・イン・メイで暴落イメージの5月だが、なぜ、今年は上昇を警戒すべきなのか?(5月1日、西原宏一&大橋ひろこ)
8月は円高になりやすいアノマリーもありますからね。110円割れもあるかもしれない。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
今週(7月24日~)はトランプ米大統領の長男やクシュナー米大統領上級顧問、マナフォート選挙対策本部長の証言も控えていますが、わざわざ証言台に立つということは準備を万端に整えているのでしょう。
コミー前FBI(米連邦捜査局)長官のときと同様、無風で通過する可能性のほうが高いと見ています。
■「シントラショック」とユーロ
米ドル/円のレンジが続くとすると今週(7月24日~)はユーロ/円、それに豪ドルの上昇に注目でしょうか。
そうですね。米ドル/円、クロス円は米4-6月期GDP・速報値次第ですが、6月27日(火)の「シントラショック」(ドラギ総裁がポルトガルのシントラで開かれたECBフォーラムで行なったスピーチ)以降、ユーロは新たな局面に入っています。
【参考記事】
●日本がゼロ金利固定の間に欧州や米国は金利正常化へ! ユーロに優位性あり!(7月20日、西原宏一)
ユーロ/米ドル、ユーロ/英ポンドは引き続き押し目買い、0.7835ドルの節目を抜けた豪ドル/米ドルも押し目買いでいいでしょう。
(構成/ミドルマン・高城泰)
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は登録後10日間無料解約可能なので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)