■株式市場は堅調なのに、為替市場に動きなし…
株式市場は堅調な展開が続いており、日経平均は連日で高値を更新しています。
(出所:Bloomberg)
これに対して、為替市場は動きがなく、先週(10月9日~)の米ドル/円のレンジ幅は1.15円ほどしかありませんでした。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
10月22日(日)の衆院選は、世論調査で与党が優勢という報道が流れていることもあり、これが日経平均の買いにつながっています。
また、トランプ政権の税制改革に対する期待や、次期FRB(米連邦準備制度理事会)議長はハト派寄りのパウエル現FRB理事が有力候補だということもあり、米国株も含めて株式市場は強気が続いています。
(出所:Bloomberg)
■米ドル/円は日経平均より米金利との相関高い
米ドル/円も、株式と同じように上昇してもいいと思うのですが、オプションが影響していたことや、米長期金利が2.40%台のレジスタンスから調整していること、IMM(国際通貨先物市場)における投機筋のポジションが10万枚の円売り越しに偏ってきていることもあり、米ドル/円は上がることができず、112円台を中心とした推移が続いています。
(出所:Bloomberg)
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
本来、米ドル/円と日経平均の相関性は高いのですが、直近1週間は-0.9の相関係数となっており、これは逆相関性が強い状態を示しています。
この状態がいつまでも続くとは思えませんが、今の米ドル/円は米長期金利との相関性が高い状態となっています。
【参考記事】
●北朝鮮建国記念日が相場の転換点だった! 日本株は約21年ぶり高値。米ドル/円は?(10月12日、西原宏一)
●衝撃的な米雇用者数減少はイレギュラー。ドル/円の上値重いが、基本方針変わらず(10月12日、今井雅人)
●ひどい米雇用統計結果でも米ドルは予想どおり上昇! でも続かなかった理由とは?(10月13日、陳満咲杜)
■来年の利上げ回数は次期FRB議長次第に
10月11日(水)に公表された9月FOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録では、低インフレが長く続く可能性を多くのメンバーが懸念していることが明らかになりました。
利上げ予想確率を見ると、12月の利上げはほぼ行われる状況ですが、来年(2018年)に関してはFOMCメンバーの金利予想中央値からは3回の利上げが示唆されている一方、市場の織り込みは1回にとどまっています。
(出所:FRB)
この2018年の利上げ回数に関しては、まもなく決まるであろう、次期FRB議長次第となりそうです。
【参考記事】
●日経平均は21年ぶり高値でも円安進まず。次期FRB議長をめぐる3つのシナリオとは?(10月16日、西原宏一&大橋ひろこ)
次期FRB議長が決まるまで、来年(2018年)の利上げ回数を予想することは難しく、市場参加者も動きにくい展開のようです。
これも、米ドル/円やユーロ/米ドルなどのもみ合いにつながっているのではないでしょうか。
■ここからは地政学リスクが高まる展開に!?
10月18日(水)から、中国共産党大会が始まります。
このタイミングで、北朝鮮によるミサイル発射などの地政学リスクが高まります。
また、11月5日(日)~7日(火)にトランプ大統領が訪日することが決まったため、そのタイミングも地政学リスクが高まります。
米ドル/円は10月22日(日)の衆院選の結果によっては上昇する可能性もありますが、すでに与党優勢との報道が流れていることから、上昇が続くのは難しいのではないでしょうか。
どちらかというと、地政学リスクが高まり続けること、投機筋のポジションが円売りに偏っていることから、米ドル/円の上値は重いと考えています。
今週(10月16日~)に関しては、110.80円~112.80円のレンジ推移ではないかと考えています。
週明け(10月23日)に関しては衆院選次第となりますが、上昇したとしても、上値は114円で抑えられるのではないかと考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
■ユーロ/米ドルは上がりづらく、下がりにくい
ユーロ/米ドルは前回のコラムで1.1650ドル~1.1850ドルのもみ合いをイメージしていましたが、ユーロ/円がもみ合いを一時的に上に抜けたことに連れて、ユーロ/米ドルも1.1879ドルまで上がりました。
【参考記事】
●市場は次のテーマ待ち。でも、米ドル/円が中長期的に上昇すると考える理由とは?(10月10日、バカラ村)
ユーロのIMMにおける投機筋のポジションを見ると、米ドルに対して9.8万枚の買い越しと偏っています。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
過去の推移からは、まだユーロ買いの余力はあるものの、新しい材料が出ないと買い上げていくのは難しいのではないかと考えています。
ただ、10月26日(木)のECB(欧州中央銀行)理事会でテーパリング(※)に関する議論が開始される予定のため、ユーロが底堅くなること、さらに、米ドル/円の変化日だった10月6日(金)に、ユーロ/米ドルは1.1669ドルを直近安値に上昇してきていることから、下がるにしても何か材料がないと下がりにくいように思います。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
【参考記事】
●米ドル/円にはまだ下値トライの可能性あり。英ポンド/円チャートに出た上昇サインとは?(9月12日、バカラ村)
ユーロ/米ドルは、今週(10月16日~)もまだ動きを期待しづらく、1.1680ドル~1.1880ドルのレンジ内で推移するのではないかと考えています、
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足)
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