■日経平均が大崩れしない限りドル/円はここから上昇するはず
しかし、歴史に照らしてみればわかるように、米ドル/円と日経平均の相関性が、このまま低下していくことはあり得ない。日経平均が大きく崩れない限り、米ドル/円はここから上昇モメンタムを強め、日経平均のパフォーマンスを追っていくのも自明の理だ。
(出所:Bloomberg)
■あの時、日経平均は2倍以上になったのに円安進行はわずか
2002~2007年、日本の景気は回復期にあった。日経平均は下げ一服から切り返し、2006年4月には1万7000円を超えていた。このうち、経済成長率が2%を超える年もあったから、一時は景気回復の勢いが鮮明であったが、円はどちらかというと強かった。
2003年の安値から2007年の高値まで、日経平均は2倍以上になったのに対して、円安は同じ期間にわずか2%程度進んだだけだった。
この時期の米ドル/円と日経平均の関係や関連性は示唆に富んでおり、また、これからの市況にヒントをくれると思う。
日銀は2006年7月、日経平均がいったんピークアウトしたあと、ようやく5年ぶりの利上げを決定したから、日銀の「出遅れ」が為替市場に大きな影響を及ぼした。日米金利差は拡大しており、円安の期待が大きかったが、日本の景気回復がもたらした資本の日本流入や株式投資のニーズは逆に円の需要を高め、結果的に円安を押さえこんだわけだ。
要するに、日本の景気回復基調が鮮明になってくると、海外資本はまず日本株投資を選び、「日米金利差に基づく円売り」という選択肢は二の次になる。さらに、日本株投資に伴った円の需要も円安効果を削り、結果的に米ドル/円と日経平均の関連性を薄めることになる。
足元の状況は、まさに前回の相場の焼き直しなので、特に「異常」とはいえない。
■米ドル/円と日経平均の相関性が高まった理由とは?
2007年のサブプライム危機以降、日経平均と米ドル/円の関連性が高かったのは、日本経済成長のモメンタムが再度低下してきたことが背景にあった。要するに、金利水準が企業の儲けを左右する主要材料になった以上、米ドル/円と日経平均の相関性が高まってきたわけだ。
10年も続いてきたので、我々が慣れてしまったという部分も大きいが、高い相関性が「正常」であることというロジック自体が正しいとは言い切れない。
この意味では、足元の相関性の低下は、むしろ、これからの日本経済成長を暗示するような動きで、歓迎されるべきかと思う。
アベノミクスを打ち出して以来、日銀の「量的・質的緩和」に加え、米国の利上げ周期入りが確実に日米金利差を拡大させてきたが、投資家たちにとって、経済成長を「賭ける」なら、円売りより株買いの方が断然得なので、株のパフォーマンスが米ドル/円をだいぶ上回っているのも当然の結果とみなされる。
この意味では、ここから米ドル/円は日経平均のパフォーマンスを追っていくと思われるが、日経平均の優位性はなお保たれ、またそうでなければよろしくない側面も大きいのではないだろうか。
■あまりにも遅れている米ドル/円はまず115.50円をめざす
前述のように、かつての高い相関性に戻っていくには、日本の経済成長率の低下か日銀の出口政策開始など、ファンダメンタルズ上の大きな変化が引き金となるはずだ。
現時点では、そのどちらもよろしくないことだから、日経平均には優位性を保っていただきたい。とはいえ、米ドル/円はあまりにも遅れているから、まず3月高値の115.50円、その後、2017年年初来高値の118円台への戻りが当然の成り行きとみる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
■ユーロ/米ドルは近々1.13ドル割れも必至
最後に、今回の米ドル高は円よりユーロのほうが受け皿になる公算が大きいから、今からユーロ/米ドル売りを仕掛けても遅くはないと記しておきたい。
近々、ユーロ/米ドルは1.15ドルどころか、1.13ドル割れも必至だと思う。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
市況はいかに。
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